くもり空にハイビームを
風の強いくもりの日は、そのどっち付かずさによってハイテンションもローテンションもふわふわと頭の上に浮く。
毎度おなじみかのように「史上最強の」と紹介される台風への信頼が私には全く無く、みんなが水や電池を蓄えているのに、のうのうと朝からパスタを食べた。
帰宅してからどんどん無限に広がる不安にさいなまれ、ごまかすために夜中から映画を見たけれど、映画の中身がそこまで良くなかったのもあって、すっきり寝付けずだらだらと薄い睡眠をし、結局11時に起きた。
ネットニュースは盛り上がっていて、電車も止まっていって、ひとつも外を見ていないのに、やばいぞ…と焦る。
実際関東は本当に大変そうだけど、夕方にやっと外を見たら、私の住む街は何ともなくてほっとした分、昨日からさっきまでの心の慌しさに対してあきれてしまった。
自分な安全な限りで「ちょっとヤバいこと」をするのは好きなので、台風のなか先輩と近くの居酒屋に飲みにいった。こんな騒がれている中で飲みに行くのは、台風で学校がお休みの日に友達と遊ぶみたいな背徳感があった。
積もり積もった話があったはずなのになんにもでてこなかった。とはいえ、その先輩といると無限に話のネタが出て来るので、たわいもない話を次から次へとつむいだ。少し久しぶりにしっかり飲んだのでしっかり酔った。
全ての人生が嘘で、例えばVRだったらどうしようという話とかをした。こういう話は好きだけど考え出したらその日1日は脳裏から離れなくなるのでちょっと眠れなくなる(そして案の定眠りにくいのでnoteを書いている)。
きっと世界が終わるときも、わかりやすくどでかくヤバイ何かがいきなりドカンとくるのではなく、
もうそろそろ終わるんだろうと思わせるようなことが次々と起こり、そんな世界のほころびを横目で見ながら、どうせ今日までは大丈夫だ!とごまかして、たまにごまかしきれなくなって狂っちゃって、そんなことしている間に、日が沈むようにすんなり終わってしまうんだと思う。
いや、今もゆるやかに終わりに近づいているのかもしれない。何なら、もう終わっちゃってるのかもしれない。
終わりを意識してしまったら、台風に負けないように食料を買い溜めたり窓にテープを貼ったりなんてできない。前向きに生きれない。
ちゃんと前に進むには、少しでも遠くを見なきゃいけないよって、教習所でも言われたし。けれど前が暗かったらどうしようもないし。
そんな時は自分の手で、より遠くまで届くような強い光で前を照らさないといけないね。
さすがにまだまだ終われないなと思って、雨風が入らないようにきっちりと窓を閉めた。
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