論文「ココアバターのチョコレート多型転移におけるファットブルームとの関係性」の要点をまとめてみました!
こんにちは!ママノインターンの野澤です。チョコレートが溶けやすい季節になってきましたね。
突然ですがみなさん、チョコレートの袋を開けて「いざ食べる!」という瞬間、何だか表面が白くなっていた。そんな経験はないでしょうか? このように白くなってしまうことを「ブルーム」といいます。
チョコの表面に白い花が咲くなんて聞こえはいいですが、ブルームができたチョコレートは風味やくちどけが悪くなり、チョコレート特有の艶もなくなるので、見た目も損なわれてしまいます。
せっかく買ったチョコレート、美味しい状態で楽しみたいですよね。今回紹介する研究は、「ブルームはなぜできてしまうのか?」を明らかにするために行われました。
「Relation of Fat Bloom in Chocolate Polymorphic Transition of Cocoa Butter」
J.Bricknell , R.W.Hartel
実験方法
材料
無水乳脂肪(AMF)
融点の違う乳脂肪
・高
・中
・低
2種のココアバター
・中融点ココアバター(融点26.9℃)
・高融点ココアバター(融点29.0℃)
噴霧乾燥した非晶質糖
(市販のチョコレートは結晶性スクロース(砂糖)のせいでX線分析には使用できないので、非晶質糖も用いる)
チョコレートは、ふるいにかけたココアパウダー、砂糖(非晶質または結晶質)、溶かしたココアバター、追油(乳脂肪)を混合し、さらに乳化剤としてレシチンを加えたものを使用している。
多形転移(結晶がβⅤ型からβⅥ型になること)と、視覚的にブルームが現れているか(白さの指標)を測定
メモ)IV=4 V=5 VI=6です。チョコレートは1〜6型まで変化すると言われています。
結果
結晶がβⅤ型からβⅥ型に転移するのと、ブルームができる流れが一致していない。→βⅥ型多形を多量に含むチョコレートも、視覚的にまだブルームが起きていないように見える。
市販のチョコレート(結晶スクロースを用いたチョコレート)で同じようにブルームを測定した場合、非晶質糖を用いたチョコレートと結果が異なる。
以上より、ココアバターのβⅥ型の形成は、視覚的なブルーム形成の「原因」でなく、結果のうちの一つであることが分かりました。この研究の研究者は実験結果より、砂糖の微細構造がブルームの形成に影響を及ぼしていると考えています。
他にも多くの研究からブルームの原因が提案されていますが、ブルーム形成のメカニズムやブルームの始まりに影響する因子は不明瞭なままなので、ブルーム形成に必要な各ステップを完全に理解するためにさらなる研究が求められています。
チョコレートはココアバターが溶けてしまったり、水分が蒸発して砂糖が表面で固まったりするのを防ぐため、直射日光、湿気が高い場所を避けることが重要です。
保存袋に入れ15℃~20℃程度で保管すると、他の匂いの吸着や乾燥も防いでくれるため、良いとされています。より確実な方法を確立するため、ブルームに関する研究の続報を待ちましょう…!
また、ショコラティエ、パティシエ、チョコレート製造や研究に携るみなさんの考えや意見を、ツイッターやフェイスブックなどで教えていただけると嬉しいです!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?