子供を産んで変わったことと、思い出す呪い

この子が大人になるまで生きていたいなと思うようになった。昔は、楽しいから死にたくないなだったけど、今は、この子を残して死にたくないなって思いがすごく強い。
同時に、この子が私より先にいなくなってしまったらと考えると、胸が押しつぶされるように苦しくて悲しい。
母が、親より先に死ぬのは一番の親不孝と言っていたけれど、こういう事なのかなと思う。

妊娠を期に、兄弟は?とよく聞かれるようになった。妊娠する前、両親は決して子供のことを口にしなかった。周りは無責任なので、今日天気いいねくらいの感覚で、子供は?と聞いてきた。
妊娠したら、3人を育てた母は、兄弟はいい、たくさんいていい、と口にするようになった。けれど私は、絶対に兄弟を作りたくないと思う。陣痛がきつかったからでも、子育てが辛いからでもない。

私はいま、家族と概ね良好な関係を築けている。家族旅行にも行ったし、母とはディズニーランドに行ったり、旦那に内緒でホテルビュッフェに行ったりもしている。
特に喧嘩することもないし、話は尽きないし、両親が先に死ぬ事がなければ、結婚なんてしていなかっただろうなと思う。
けれど私にはどうしても引きずっている過去の記憶がある。兄弟間で比べられていたことだ。
母曰く、良いところを沢山褒めてきたのにそれは受け入れず嫌なことばかり覚えているらしいが、褒められた記憶がないのでしようがない。
母はとにかく色々な人と比べたがった。私が悲しめば、もっと不幸な人がいると言ったし、兄は私の気持ちをわかっていた、姉は優しく気がつく努力家だった、上二人は育てやすかった、あなたが生まれて子育ては大変だと思ったと口癖のように言った。
子育てに関しても、こちらはすべて初めてのことでてんやわんやで疲れているところに、でもいとこの○○ちゃんの赤ん坊の頃はもっと酷かった、どこそこの赤ちゃんは病院通いで本当に大変だと、寝不足で愚痴る私に何度も繰返した。

私は両親の愛を過剰に欲するきらいがある。誕生日や父母の日は欠かさず贈り物をし、何かしてもらえば媚びへつらって感謝してしまう。なにかしてもらう事に異常に萎縮してしまい、その分金銭で返そうとしてしまう。それは、いつも誰かと比べられ下に下に置かれてきたせいだと思う。

私は自分の歪さや、自信のなさや、他人から愛されるはずがないという認識が嫌いだ。

昔、あなたはあなたの事が好きな人の頭の中を理解できないから一生不幸のままだと言われたが、その通りのまま今も生きている。

他人に対しても失礼だと分かっているが、分かっていても重箱の隅をつつくように(ほら、私の事なんか好きじゃない、私が一番じゃない)と、探し出して気落ちする。

こんな人間にしたくないから、私は次を考えない。反面教師にすればいいと言われるが、幼少期から比べられ続けてきた呪いは、きっと無意識でこの子と兄弟を比べてしまう。他人と比べられてもキツかったが、兄弟間で比べられるのは何より嫌だった。

20歳過ぎるまで続いていた不和とは折り合いをつけてきて、今普通に過ごす分には問題のない仲の良い家族だ。両親の介護も、同居こそできないが近くに住んで何かあれば手を貸してやりたいと思う。
けれど、私の中にがっしりと根を張るコンプレックスは、一生消えないんだなと改めて思った。この子をこんな風にはしたくないなと、日々思うばかりだ。

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