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舞台にいたあなたと私の話

衝撃的なニュースが飛び込んできた。いてもたってもいられず、ラーメンズをきっかけに知り合った友人に約半年ぶりに突然LINEをするくらいには動揺した。

https://kentarokobayashi.net/message/2020/12/01/3776/

ラーメンズは私の青春の1ページだ。

初めて彼らを知ったのは大学に入ったばかりの2009年春だったように記憶している。彼らは何年ぶりかの本公演「tower」を引っ提げ全国を回っていて、私は当時好きで日参していた二次創作のHP(当時はpixivなどもあったのかなかったのかという時代で、ネットでの二次創作は基本的に個人HPを運営して公開する人が多かったのだ。古き良きインターネット老人会…)で彼らの存在を知った。その方は筋金入りのファンだったようで、日記には公演を観に行った感想やコントの考察、過去のあんな作品こんな作品がとても面白い、彼らの舞台にかける情熱の素晴らしさなどを毎日毎日懇々と綴っていた。普段こんなに素敵な作品を作る方が好きで好きでと書かれるのなら私も見てみようかなと軽い気持ちでニコニコ動画を開いたら、そこには沼があった。端的に言うと、それまでハマっていた作品そっちのけでどハマりした。ファンの間で俗に言う「あの時期」である。とにかく今まで見てきたお笑いとは違うのだ。演劇についての知識はないが、演劇とも違うような気がする。2人が真っ黒、ある時は真っ白な舞台で小道具もなしに縦横無尽に動き回って、2人だけの世界を作り出していた。私の乏しい表現力で彼らの世界を上手くつづれないのが非常にもどかしいのだが、これでもか、これでもかと繰り広げられる彼らの世界に没頭した。さらに当時主流だったmixiのコミュニティの存在もラーメンズに没頭する私を後押しした。全国のファンがあの作品が面白い、この公演にはこんな考察があると思う、ちょっとここには書けないような内容、等々。大学で知り合った友人の1人にもラーメンズを布教したところ見事にハマってくれ、毎日語り合い、ファンサイトを立ち上げるまでに至った。時間が中途半端にある大学生とはこんなものである。

こんなにも大好きなのに、他の芸人さん達とは違って彼らはTVに出ることはほとんどない。よって、彼らを身近に感じるには舞台に赴くしかない。吹奏楽部だったので小規模ながらコンクールや演奏会で舞台に立ったことはあっても自分から何かを観に行くというアクションを起こしたことはなかったのだが、公演の発表が出た時は本当に嬉しくて嬉しくて飛び上がったし、なけなしのバイト代をはたいて1も2もなくとびついた。先述した友人がチケットを取ってくれたので、滋賀からはるばる在来線で行ったのは今はなき新神戸オリエンタル劇場、観たのはpotsunenシリーズの「THE SPOT」だった。

ざわざわした徳沢青弦さんによる音楽の中、すーっと舞台の真ん中まで歩いてきて、客席に背を向けて立っている賢太郎さんを目にした瞬間、心臓がぎゅっとなって叫びだしそうになったのを今も覚えている。

観たのはこの公演。今はほぼ全部無料で観られる、すごい時代だ。広告収益は全額寄付されるとのことなので気軽に一度見てみてほしい。

その後も隣町のTSUTAYAに完売地下劇場のDVDがレンタルされているのを見つけてはせっせと借りて若き日の賢太郎さんの舞台に対する思いを見て身を切られるような気持ちになり、バナナマンとおぎやはぎと一緒にコントをした「君の席」を見ては彼らももしかしたらバラエティで司会をする世界があったのかなあと思いをはせ、やはり実際に賢太郎さんを見たいとKKP(賢太郎さんによる演劇作品)とpotsunenを毎年交互に観て追いかけ、公演が載っている演劇ぶっく(今は「えんぶ」になったらしい。知らなかった)を購入して読み、ホームページもおかげさまで人が来てくれるようになり、ホームページを切り口に交流の場はニコ生の配信に姿を変えた。大げさな言い方かもしれないが、今日の私はラーメンズがなければ存在していない。ラーメンズをきっかけに友人もできたし、何なら今も仲良くしてくれている友人の半分くらいはラーメンズやニコ生経由で知り合った。舞台は関東に引っ越してチケット争奪戦に敗れ続けたことを機に遠ざかってしまったまま数年が経ったものの、いつか来ると思い込んでいたラーメンズの本公演はどうにかして行きたい、いつか2人のスケジュールと気持ちが整ったその時には、舞台で生の2人の世界に没頭したい…と思っていた。

正直、賢太郎さんが表舞台から身を引きつつあるな、というのは去年あたりから感じていたところではある。毎年NHKで放送されていた小林賢太郎テレビも去年の開始から10年の節目に終了、4年に1度の公演だった「うるう」も以前はDVD化しないという話があったように記憶していたが今年DVD化された。少しずつ彼が身辺整理をしているような気がして、東京パラリンピックの閉会式演出が彼にとって一つの大きな節目になるのかなとぼんやり考えていた部分もあったのだが、思っていた以上に早く、この時世のせいもあるがあっけない幕引きのように感じられてならない。


今回の件を受けた相方、片桐仁さんのコメントも読んだ、というか片桐さんのコメントから読んだ。

シンプルな文章。シンプルだけど、相方への優しさと絶対的な信頼を感じるコメントだなと思った。30年近く前に出会って、長く2人だけの世界を作り、演じてきた片桐さんだからこそのコメントだと思う。

小林賢太郎さん、長い間本当にお疲れ様でした。12年前にあなたを知り、田舎のいっぱしの冴えない大学生は月並みな言い方になりますがあなたに何度も救われ、元気づけられ、今の私を作る大きな要素となっています。もう少し子どもが大きくなったら一緒にPotsunenのハンドマイムあたりから観てみようと思います。ゆっくりコンテナで作品を作りながら、何かの形でお名前や作品を拝見することができる日を待っています。本当にありがとうございました。


最後に。

さっき少しURLを貼ったが、私のおすすめをいくつか紹介して終わりにしたい。

ラーメンズのお勧めはこれ。

さくっと分かりやすくて、誰でも見やすいもの…というとこれかなぁと思った。怖いものが大丈夫!演劇っぽいものも平気!という方にはぜひこちらを。


Potsunenシリーズはこれ。

本当にド定番なんだけどでも好き。生でも見たけど衝撃的だった。個人的に「Drop」の頃の賢太郎さんが格好良くて可愛らしくて大好きなんですけど分かる方はいらっしゃいますか。


KKPはぜひこちらを。

大学生の頃、いろいろ辛いとよくこれを観ていた。YouTubeにはないけど「ロールシャッハ」も大好き、初めて生で観たKKP。

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