あいづちが苦手なひとのためのおすすめのあいづち十選

 「あいづち」打ってますか?

 あいづちというのはもちろん、会話で相手に「聞いてますよ」的な感じでやるあれですね。あれです。みなさん、うまくあいづち打てているでしょうか。

 わたしはできていません。

 わたしは会話にあいづちを打つのがとても苦手です。パッと出てこないんですよね。なんかいつも「あー」って言ってしまいます。「あー」と「んー」を2:1で使い分けてる感じです。

 なんかね。パッと出てこないんですよ。

 いいあいづちが。

 もっとこう、会話をふくらませたり盛り上げたりするあいづちが打てればいいんですけど、わたしはなんか、そういう小粋なトークが苦手です。小粋なトークとは無縁の人生を歩んできたので仕方ありません。

 わたしは長い文章をしゃべるとき、頭の中で文章を書いてそれを読みあげるようなしゃべり方をします。そうしないとしゃべれないんですよ。人としゃべってる時間より文章の読み書きをする時間のほうが圧倒的に長いので、もう文章>会話みたいになっていくんです。

 文章を書くのとしゃべるのだと、圧倒的に前者のほうが脳のメモリ食わないです。人と一対一でしゃべってるときは、もうタブをいっぱい開いたグーグルクロームみたいになってます。

 あいづちを打とうとしてもラグが出ますね。会話の間ってありますよね。相手がしゃべって、別のセンテンスに移るタイミング。わたしはだいたいそこからちょっと遅れてあいづちを打ってしまうので、口を開きかけた相手とよくバッティングします。波動拳と波動拳がぶつかって打ち消しあうみたいになります。

 みんななんであんな複雑なことができるんですかね? 会話のタイミングを正確につかみながら、適切にあいづちを打っていくの、自分から見ると超人技ですね。

 何十人か相手にしゃべるほうが楽ですね。あいづち打たなくていいし。

 そこでふと思いつきました。

 あらかじめ「小粋なあいづち」を文章化しておけば、しゃべってるときにそれを頭の中でロードすればいいから楽じゃないかと。あらかじめ強い手札を持ってる状態で会話すればいいと。

 そんなわけで、以下、わたしの考えてみたイケてる「あいづち」を書きます。

 これらを覚えればあいづちが苦手な人もイケてる会話が可能です。

 もう美容師みたいに話せますよ。



イケてるあいづち①「ついに」

 例:「こないだ食洗器買ったんですよ」「ついに」

 解説:あいづちとしての機能を完全に果たしながら、さも相手の発現内容が起こるべくして起こったかのように言うことで、会話の緊張感を高めるあいづちです。あまり会話では使わない言葉なので、相手を一瞬バグらせて時間を稼ぐことができます。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る。


イケてるあいづち②「殺人鬼とかに多いよね」

 例:「わたし、思ってることはっきり言っちゃうじゃないですか」「殺人鬼とかに多いよね」

 解説:相手が何らかの性格を自分語りしてきたときって、コメントをどうしていいか迷いますよね。そういうときはコレ。殺人鬼になぞらえることで、相手の「特別なワタシ」的な自意識を満足させつつ、自分を印象付けるための軽いジャブを入れていくことができます。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る。


イケてるあいづち③「そう言われましても」

 例:「わたし赤が好きなんですよ」「そう言われましても」

 解説:ビジネスライクに軽く当惑の意を示すことで、相手との心理的な距離感を広げるあいづちです。相手がふところに潜り込むための会話をしてくるインファイターだった場合、これで距離を稼ぎ、自分の苦手なレンジを回避することができます。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る。


イケてるあいづち④「アメリカ的な考えではそうかもしれないですけど」

 例:「あんたそろそろ働きなさいよ」「アメリカ的な考えではそうかもしれないけど」

 解説:相手との意見の相違が避けられないタイミングは必ずあります。そういう時、この「アメリカではそう」を利用して、このグローバル社会における「文化の差」を盾にとり、さも意見の相違が文化の差であるかのように流すあいづちです。

 たとえ相手がアメリカがまったく関係なくても問題ありません。

 このあいづちの目的は「本題を文化差のような扱いにくい土俵にのせてかわす」ことにあるので、そのファーストプライミングです。相手が当惑しているスキに、相手の意見がどんなに日本的な島国根性に根付いたものであるかという攻撃を開始し、有利な布陣をしましょう。相手がインテリなほど有効です。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る


 イケてるあいづち⑤「ピザ食いたくなってきた」

 例:「キミ、この報告書はなんだ。フォーマットが全然ちがうじゃないか」「ピザ食いたくなってきた」

 解説:生理的欲求、それは誰にでもあるもの。ましてや食欲、ピザが食べたいという欲望はどんなタイミングでも突然沸いてきます。

 このまま会話を続けると絶対ロクなことにならない。そんなときはこのあいづちで「こいつはオレと話すよりもピザを優先している」と相手に印象付けましょう。相手に対して「貴様はアンチョビ・ピザ以下だ」と暗に示すことで、相手に精神的なダメージを負わせます。そのあと本当にピザを食いに行ってしまえば「こいつは自分の思い通りになる相手じゃない」と印象付け、むしろ一目置かれる可能性すらあります。

 注意点:相手が高確率で怒る


 イケてるあいづち⑥「出たよ」


 例:「五分だけわたしの話を聞いてほしいんですが」「出たよ」

 解説:会話においても「攻防の分岐点」があります。たとえば営業マンの「必殺のせりふ」のようなやつです。

 たとえば上の例に挙げたものは、最初に小さく断りづらいお願いをして、相手に受け入れさせて主導権を握るという有名なコントロール・テクニックです。サイコパスが良くやるやつです。いわばドアに足を突っ込んでドアを閉めさせないようにするようなもの。

 そんなありがちな小技に「出たよ」とうんざりしたような調子で言うのがこのあいづち。相手が言ったありきたりな発言やありがちな言い回しにこれを発動することで「お前の手口は見え透いてる」と逆手にとってやりましょう。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る


 イケてるあいづち⑦「ワーオ」

 例:「ここに置いてあった小銭知らない?」「ワーオ」

 解説:一見するとただのアメリカ西海岸風の感嘆詞ですが、状況によってはこれほど強力なものもありません。ワーオという言葉自体は意味的に無内容ですが、無内容なだけに、相手は勝手にそこに何らかのニュアンスを見出します。これは人間の思考のクセなのです。

 上記の例で言えば、小銭のありかを訊いたのにワーオと言われたことに対して、相手は「おいおい、おれを疑ってんのか?」というニュアンスを感じるかもしれないし「そんな小銭を気にするなんてな」というあざけりを感じるかもしれないし「なんか無くしたのか? 大変だな」という同情を感じるかもしれません。

 そう、このあいづちは「鏡」なのです。

 このあいづちを使うことで、相手は「思い描いているあなたの姿」をワーオという短い音から読み取ります。相手が敵意に満ちているほどワーオは敵対的に聞こえることでしょう。とくにひけめやコンプレックスの強い相手であれば、まるで何もかも見通しているかのような「ワーオ」に心に刺さった棘がうずくことでしょう。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る


 イケてるあいづち⑧「そういう時期かもね」

 例:「部屋をかたづけたら」「そういう時期かもね」

 解説:だいたいのシチュエーションで有効な「流し」のあいづち、とくに相手に相談事を持ち掛けられたときや、強制力のない推奨をされたときにこのセリフを吐いておけば、相手はなんとなく相互理解が得られたかのように感じて大納得します。あなたの好感度もうなぎのぼり。

 でもそこはそれ「時期」ですからね。別の時期がきたら当然片づけはしないのです。「時期じゃなかったからさ」とスナフキンのような生き方をアピールしましょう。相手はいい加減なやつだなと思いつつも、どこか憎めないでしょう。たぶんね。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る。


 さて八つご紹介しましたが、つぎが「二強」です。


 イケてるあいづち⑨「うっ」

 例:「カレーライス食いに行かない?」「うっ」

 解説:オーバーリアクション、というと激しいものが一般的ですが、一方でこのあいづちは、まるで急所を突かれたような短いうめき声をあげるだけです。しかしこの「陰」のあいづちはそれがむしろオーバーリアクションとして機能します。

 相手が会話の途中で「うっ」と言ったらどうでしょうか? ふつうは「こいつどうかしたか?」と思うでしょう。相手は思わず素に戻ってこちらの様子を注視します。その状況で、次の発現はクリティカルなものになります。

 たとえば上の例なら「それだ。カレー食いに行こう」と続ければ、相手は「なんともなかった安心感」と「同意を得られた喜び」で一気にもっていかれます。タイミングが難しい必殺技ですが、決まれば効果絶大。よっぽどその席でカーストが低くない限りはカレーライスで決まりです。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る。


 イケてるあいづち⑩「ディズニーランドかよ」

 例:「げえっ、腐乱死体だ!」「ディズニーランドかよ」

 解説:上の「うっ」は陰の技でしたが、こちらは陽の技です。

 一時期「宝石箱や」というグルメレポートが流行りましたが、ああいった比喩というのはわりといい加減なので、何にでも比喩として当てはまりそうな単語さえ見つければ、非常に便利です。そこでディズニーランド。

 長蛇の列や人込みを見たら「ディズニーランドかよ」高い服を見たら「ディズニーランドかよ」おもしろいものを見たら「ディズニーランドかよ」ほらなんとなく当てはまる気がするでしょう。ちょっとリアクションとしてずれてても「変なやつ」と思ってくれるだけで済みます。あんがい失点になりません。

 注意点:会話の流れによっては相手が怒る




 いかがでしたでしょうか。

 これで会話が苦手なあなたもうまくトークできます。

 たぶんできると思う。できるんじゃないかな。

 以下、一応注意点を書いておきます。

 もしこの記事にある「あいづち」を使って、望ましくない結果になった場合、つまり、うまくいかなかったり、人間関係が崩壊したなど。会社をクビになった。離婚した。人生がだめになった。取り返しのつかないことになった。病気になった。新種の梅毒になった。死んだ。などには、筆者は責任を負いかねます。負えるかそんなもん。おねがいします。お願いしましたよ。


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コメント3件

ワーオ、素晴らしい記事に出会ってしまいました。実践的事例が多くて、まるでディズニーランドみたいですね。殺人鬼とかに多いけど、たくさんの凶器(コミュニケーション手段)を内ポケットに忍ばせておくという意味で、とても有用な記事だと思います。ただ一つだけ気になる点がありました。アメリカ的な考えの下では、「ピザ食いたくなってきた」は自然な文脈で使えるでしょうけど、日本では「寿司食いたくなってきた」の方がいいんじゃないでしょうか? どうかご検討ください。
今日はディズニーランドかよ!を実践してみますw
声出して笑いました。
げえ!腐乱死体だ!ってセリフ、ゾンビ映画でも遭遇できるかどうか、割と際どいセリフでもあるのに一回スルーしそうになりました。お願いされました。使ってみます。
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