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Google Champiom Symposium in Tokyo, March 26th_28th in 2024

※ iPad の VoiceOver 機能で聴いて頂けると写真の説明など、視覚障害の方にも分かりやすい様に工夫しています。お試しください。

日本中から、そして遠くはシンガポールからも Champion が集う中、発表の機会を頂きました。
テクノロジーを適切に活用することで、救われる子どもたちが確実にいる、そのことを ICT を活用して、子どもたちの未来のために教育活動をしている方にお伝えしてきました。
発表に使用したスライドに、少し情報を加えて共有します。
全盲、弱視の子どもたち、もっともっと外に羽ばたいてほしい!!

挿入写真の説明。大人ができること - Universal Design for Children's Learning that Adults Can do -
発表タイトルです。
挿入写真の説明。好奇心を妨げない
大人ができること、ズバリ「↑」でしょう!

大人が子どもたちにできること。それは子どもの好奇心が動き出すことを妨げないことです。好奇心を深めるに足りる環境を整えていくことです。

挿入写真の説明。テクノロジーで救われる子どもたちはいる
教員にとって、その一つのツールが「ICT」授業活用

子どもたちに利があるならば、Quality of Life 改善・向上の一つとして「ICT」生活・授業活用を取り入れていくことが大切だと考えています。

挿入写真の説明。山陽電車「滝の茶屋駅」を3Dスキャニングして3D印刷した模型を触察している様子の写真
「滝の茶屋駅」を3Dスキャニングして3D印刷

上写真は全盲の生徒が、山陽電車「滝の茶屋駅」を3Dスキャニングして3D印刷した1/100モデルを触察している様子。触察の動画に関心のある方はDM下さい。

挿入写真の説明。「駅舎3Dプロジェクト」晴れた日の「滝の茶屋駅」3Dスキャニング風景写真
山陽電気鉄道 様と、神戸芸術工科大学 准教授 金箱淳一 氏 の全面協力で実現

私の夢であった「駅舎3Dプロジェクト」は、山陽電気鉄道様と神戸芸術工科大学 准教授 金箱淳一 氏の全面協力で成し得たものです。感謝しかありません。

挿入写真の説明。点字学習者にとって「一粒」とは、何を表すのだろうか?
文字情報の受容は、基本6点点字の「約7.5×5mm」サイズ一文字から

点字学習者の情報受容は、6点で表される点字一文字(サイコロの6の目のイメージ)、縦横「約7.5×5mm」で表される一音で示されます。点字は一文字につき一音を示す文字になります。

挿入写真の説明。墨字(点字に対して印刷文字の事)の英語教科書一冊分が百科事典5-6冊分になる実際の写真
英語の教科書1冊は、ブリタニカ百科事典5-6冊(アルファベットだから少ない)
技術1冊の教科書であれば、10冊分になる(漢字も全てひらがなに置き換えた文字数となる為)

点字学習者の教科書は膨大な「体積」になる。その意味は上の写真をご覧頂ければ理解できるはずです。通常、中学1年生の英語の教科書は1cmもない厚さです。しかし、点字教科書になると、約5cmの厚さの教科書5-6冊分にもなります。これは、英語だからこの冊数ですが、国語や技術の様に漢字で表記される教科書になると、冊数は倍増します。理由は、漢字表記を全てひらがな表記で、点字で表していく必要があるからです。
その理由は先に述べた通り、点字は一文字につき一音を表す文字だからです。
「それなら電子化してデジタル教科書の読み上げで全て解決するのでは」と考えられるでしょうが、そう簡単なものではないのです。というのは、点字学習者にとって、点字は触察で文字情報を認識し、触覚込みで文意を理解していくプロセスがあるからです。これは学術的に根拠を探したわけではありませんが、私が接した十数人の点字学習者に質問して得た感想です。また、文章の読み上げを聴くだけでは、長文文章を吟味して理解することは困難だと考えられます。
結論は、持ち運びには電子書籍の利用をし、腰を据えて学ぶ際には紙を使う、この二段構えで環境を整えることです。
ここで、文明の利器を紹介すると、Braille Memo という持ち運び可能な点字表示器があります。memory card にテキストデータを保存して、点字として文字を読める端末です。ただし相当高価です。一台35-45万円します。

挿入写真の説明。好奇心が子どもたちの未来を創る
「X」や「Instagram」などで情報(生成 AI)は知っていて、使いたいと思っている

これは視覚障害のある、ないに関わらず、子どもたちは好奇心の塊です。なんでも触って、試したいのです。しかし、視覚障害がある子どもたちは、SNSなどでフワッとした情報を得たとしても、その情報に正確にリーチし活用するに至ることが難しいのです。産業医の 三宅 琢 氏の講演で学んだ言葉が忘れられません。「視覚障害の方は情報アクセス障害でもあるのです」と。

挿入写真の説明。発信する。写真には大皿に艶やかで美味しそうな和菓子が山盛りになっている。和菓子は栗饅頭に見える。
実際に英語でプロンプトを入れ、画像生成、音楽生成(全盲、弱視生徒)

当時の勤務校の中学部生徒(中学3年生)の保護者、学校長、英語科主任の許可を得て、生成 AI を活用した英語の授業をしました。
「ALTに日本のことを紹介しよう」をテーマに英作文をし、その英語を元にして画像と音楽を生成し、ALTにプレゼン発表をしました。上写真は和菓子「おはぎ」を生成したものです。これはどう見ても栗饅頭です。ここで生徒たちは学びました。生成 AI を正確に動かすには、入力する命令文「プロンプト」が大切なのだということをです。要は生成 AI が理解しやすい命令を下す(プロンプトを作成する)には、自分の日本語力を向上させていく必要があるということです。

挿入写真の説明。プログラミング学習において「対比で学ぶ」とは、何を意味するのだろうか。
Scratch の様なブロックプログラミングは読み上げない(全盲生徒には不可能)

新学習指導要領に移行して数年が経ちました。小学校でもプログラミング教育が始まり、盛んに行われている学校も増えていると聞いています。
手軽に始められる教材として、画面上で操作が完結する Scratch などが代表として活用されているようです。Scratch はブロックブログラミングという手法を用いられていて、図形に命令の役割を持たせ、組み合わせることで命令文、プログラミングができるようになっています。教師が児童生徒に対して簡単な例を示して見せると、児童生徒たちが創意工夫して、友達と見せ合い競い合い、どんどん学びを深化させていく、大変楽しい学習です。
しかし、視覚障害の中でも全盲の児童生徒にとって、ブロックプログラミング教材を扱って学ぶことはできないのです。理由はブロックを「読み上げない」ためです。また、操作の理屈を理解したとしても、ブロックをドラッグ&ドロップしてブロックを組み上げることはできません。そして最も大きなハードルは、教師の例示を見て真似る、見たことを元に発展させる、このプロセスができないのです。
「ではコードで学べば良いじゃないか」という声が出るかもしれません。これは現実味のない代替案です。というのはコードは英語表記です。プログラミングに使用される英語を読み上げさせて、それを正確に聞き取り、数値や記号などの違いを瞬時に判断して理解し、コード表記の全体像を把握することは小学生や中高生には不可能です。偉才、異才、鬼才、奇才と呼ばれる人には可能かもしれませんが…

挿入写真の説明。物理的なチェーン型ブロックを組み合わせて命令を作り動くロボット教材と、同じ形状のロボットでmicro:bitを組み込んでリモコン操作する教材の対比写真
チェーン形式の「具体物」で動きを学び、micro:bit でリモコン操作

それでは全盲の児童生徒が学ぶ教材として選択した一つが上の写真です。
左側の写真で示しているロボットには命令のために3つのチェーン型ブロックがあります。命令の内容は、直進、左15度、右15度(度数は変更可能)という3種類です。このブロックを組み合わせて胴体の中に通して繋げることで、ロボットは命令通りに動きます。
右側の写真に示しているロボットは胴体部分に micro:bit が組み込まれていて、バンド調整をしたもう一台の micro:bit を利用してリモコン操作ができます。プログラミングデータはメーカーからダウンロードして活用しました。コードの概要は説明しましたが、コードの変更・改善までには至りませんでした。というのはここまでを中学2年生で行い3年生でコードの変更・改善を計画していたのですが、3年生で技術を離れることになったためです。計画では、自力でコードを書くのではなく、生成 AI でプロンプト入力してコードを作成し、デバックに力を注ぐ予定でした。

挿入写真の説明。もう一度お伝えします。大人ができること、それは子供の「好奇心を妨げない」ことです。
全盲、弱視の生徒は人一倍大きな好奇心を持っている

大人が子どもたちにできること。それは繰り返しますが、子どもの好奇心が動き出すことを妨げないことです。好奇心を深めるに足りる環境を整えていくことです。

挿入写真の説明。Google for Education Champions, Thank you
Thank you!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


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