科学へジャンプ in 京都 2024

会場校、京都府立盲学校門前
WS 終わって

「科学にジャンプ」とは

視覚障害の児童生徒が体験を通して科学について学ぶワークショップです。
それを紹介したHPには次の様に紹介されています。

五感を使う感動体験を通して
視覚に障害がある子供たちに
科学にチャレンジする機会をつくります

私が講師として参加してきたのは「地域版・イン近畿」です。
地域版とあるように、全国を8地域に区分したうちの近畿圏内の視覚特別支援学校・盲学校に通う児童生徒を対象にしたものです。

HPの近畿版は、2017年まで更新されていたようです。
今年度の実施報告をしてもらえると嬉しいですよね。

思考を形に表せるWSを目指して

教材:Takoratch(タコラッチ) Produced by T FAb×Works 選定の経緯

今回選定した教材は、T Fab*Works社が提供する「タコラッチ」というデバイスです。このデバイスは、基盤の上に加速度センサーや光、温度、湿度、気圧を測定するセンサー、またモーターが搭載されており、スイッチ操作できる物理的なボタンもあります。視覚情報に頼らずとも、触覚でデバイスの機能や構造を理解できる点が、全盲や弱視の子供たちにとって大きな利点でした。

参加者の「見え方」について

教材の選定、とても悩みました。
参加者の「見え方」がわからない段階で教材を決めて伝えないといけなかったのです。参加者が全盲なのか、それとも弱視なのか。あるいは混在しているのか。

例えば、視覚特別支援学校で学ぶ際の定義では、全盲といっても視野に光が感じられる場合や、色がわかる場合があるなど、一概に「見えない」の状態はさまざまなのです。
また、弱視も中心暗転や視野欠損、色弱や色盲、羞明など視力のばらつきも多種多様です。参加する児童生徒それぞれに合わせた教材が必要でした。
視覚障害とは「見え方」は誰一人として同じではない、高い個別性がある障害といえます。

参加者が決定し、名簿には午前、午後各3名の合計6名の中高生が参加することがわかりました。見え方の詳細は個人情報ですので、ここでの紹介は避けます。

「探求×プログラミング」

Takoratch(タコラッチ)を見て触って把握

まず、Takoratch(タコラッチ)を手渡しして、教材を確認しました。
見たり、触察したり。

Takoratch を拡大読書機で見ている様子
Takoratch の上のセンサの触察を手を添えて支援

Takoratch を iPad とケーブル接続して、各種センサが示すグラフを参加者が視認できるかどうかを確認しました。幸いに参加者全てが拡大読書機などを使用すれば、視認できることが分かりました。

拡大読書機使用の様子
コントラストで見やすく(拡大読書機使用)

導入:AならばB_Takoratch(タコラッチ)でできること

センサと音声の組合せで【「距離」+ 「こんにちは」】を示範しました。
iPadから音声「こんにちは」「こんにちは」「こんにちは」「こんにちは」。。。。
が無限ループすると驚きと笑い。Takoratch(タコラッチ)を天井 or 床に近づけると音声が止まる。これを理解して、ブロックプログラミングへ。

最初「すべてをとめる」を外しておくことが肝です

全員ができたことを確認して、次の段階へ。もちろんこの時、見え方や理解の個人差で時間的な差があります。早めの子にはどんどんとアレンジをさせました。

この際に支援者にお願いしたことは、過剰に支援しないこと。思考を深めることについては問いかけで答え、機器操作や見えにくさの支援に徹底してもらいました。
この「問いづくり」の支援、昨年に参加したWSが役に立ちました。

目標:「自分の「?(ハテナ)」、「したい」を深掘りしよう」

ワークショップの前段階では、参加者が日常生活をより便利にするための方法を想像し、創造力を高めることを目指しました。このプロセスでは、参加者が自分の興味を深掘りし、個々の課題に対して独自の視点で取り組む力を養うことを目標としました。

取り組みには、T Fab*Works 提供の『課題解決カード』を活用しました。このカードは、日常生活における具体的な課題を考えるきっかけを与えるものであり、特別に大きなサイズのカードを高松社長に同梱してもらいました。その『課題解決カード』を使用することで、より視覚的に分かりやすく、効果的な想像の支援を行いました。

ホワイトボードに貼って自分の課題を提示

あとは各々、それぞれの課題を見つけて、ひたすら Try & Error で黙々と取り組む参加者たち。支援者に京都府立盲学校の教員の方1名、兵庫県立視覚特別支援学校より2名、介護実習生として大学生3名が、操作の補助や対話の補助をして下さいました。
操作の様子を写真で紹介していきます。

Takoratch を動かして条件達成を確認している様子
ミノムシクリップ + 釘 + 濡れスポンジ の組み合わせ
LEDを光らせてみる
「ポイ捨て防止」プログラム

今後の課題と振返り

ワークショップでは予期せぬ問題が発生しました。
建物構造の問題で Google for Education 様より貸与頂いている Chromebook とポケット Wi-Fi の接続がうまくいかず、端末接続設定に手間取り、その結果、用意していた Classroom は使用せずに WS を行いました。
自分の考えていた進行が、最初から崩れた時は、嫌な汗をかきましたが、なんとかなりました。それも、参加者たちが楽しみながら取り組めたこと、それを可能にする教材「Takorach(タコラッチ)」のおかげでした。
勿論、支援者としての6名の力が大きかったことは言うまでもありません。
この場を借りて、お礼を伝えたいと思います。
本当にありがとうございました。

最後に

今回のワークショップを通して、全盲や弱視の子供たちに対するプログラミング教育の課題と可能性を再確認することができました。
まずは環境設定。そして特に、子供たちの見え方に応じた柔軟な対応と、支援者との協力が成功の鍵であると感じました。
今後も、視覚障害を有する子どもたちへの WS を実施していきたいと思いました。

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