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28周年を迎えて、店主からご挨拶

本日5月12日、池袋ジェイズ・バーは28周年を迎えました。
まずは、日頃よりご愛顧いただいております皆様に感謝の意をお伝えします。

本当にありがとうございます。

当然のことではありますが、長らく続けて来られたのも日々飲みに来るお客様がいたからこそ。
感謝、感謝であります。

毎年この時期になると思い出すのは、28年前の今日「さて、本日開店、準備万端整った」と誇らしい気持ちで入口に看板を出し、お客さんを迎え入れ、いざお会計という時にレジに釣り銭を用意していなかったこと。

ご来店いただいた方にはご迷惑をお掛けすることとなりましたが、準備より大切なのは状況に合わせて振る舞うことと初日から教訓を得ました。

ところが28年も経ちますと、そんなエピソードをご存知なお客さんも、もうご来店していただくことも少なくなくなりました。

感慨深いことに、時間は多くのものを入れ替えてしまいます。10年以上のお付き合いのあるお客さんも珍しくありませんが、新しいお客さんとも長くお付き合いさせていただきたいものです。

今後ともよろしくお願いします。


開店当時から残っているお酒などありませんし、グラスをはじめとした備品や消耗品なども、ほとんど入れ替わっていきます。それでもなお、開店当時から淘汰されることなく残っているものは、このロックグラスとホチキスと、そのふたつが置かれたカウンター。その3つくらいのもの。


愛おしい気持ちになりますが、改めて思うなら、28年間生死を共にした戦友の一人がホチキス。不思議には思いますが、悪くない人生。切なく思うのは、そのベテランのホチキスにも、やがて退役の日がやって来るだろうこと。

ただ、ホチキス退役の日をジェイズ・バーで迎えさせてあげたい。その日はいつか突然にやって来るのでしょう。だからこそ、その日より以上ジェイズ・バーを長く続けていく覚悟です。

さて、28周年を迎える今年の周年記念日は、僕にとっても少しだけ特別な気分です。

これまで毎年の周年記念日に何か特別なことをして来た訳ではありません。手持ちの在庫の中から、ちょっと贅沢なウイスキーを。そんな気分で選んだウイスキーを皆さんに提供して来ました。そんな毎年の周年記念日です。

特殊な場所ではなく、日常の中のバー。そんなジェイズ・バーにしたいとの思いが僕の中にはあります。皆さんには特別な日があるでしょう。でも、そんな人がそんな時にゆっくりと過ごしたいと思うのは日常的な空間なのではないでしょうか。

お酒や備品や消耗品、ましてやお客さんだって入れ替わるのがバーという空間。28年も続けていればなおさらのこと。唯一変わらないスタッフは僕一人だけとなりましたが(笑)、僕自身も日々アップデートを繰り返してますので、28年前とは同じではありません。

多くの方の日常的な空間としてのジェイズ・バーでありたい。そんな思いから「特別な」周年記念日にすることを避けて来たのでしょう。皆さんにお祝いしていただく日ではなく、僕から感謝を表す日。周年記念日というのは、そういう日。そう考えて来ました。

ところが、昨年と一昨年(26周年、27周年)はその記念日に営業することができませんでした。
皆さんご存知の通り、感染症の影響です。

その機会を失って初めて気付きました。
僕が失ったのは「節目」だったのだなと。

皆さんにお祝いしていただくことを目的としていないことは先ほどもお話ししました。とは言えもちろん、毎年皆さんからお祝いの言葉を掛けていただきます。それは本当に嬉しいことです。だからこそ、周年記念日は僕の方からも強く感謝させていただける日だったのです。

感謝を伝えられないことは辛いことでした。そして、この日の感謝はやはり特別で、僕の中に強い覚悟と意志が生まれる日でもありました。感謝をカタチに表すならそれは「これからも長く続けていくこと」と。

世界は大きく変わりました。感染症を気に掛けながら暮らす日々が始まって3年目になります。戦時対応に迫られた約2年を何とかしのいで来たとは感じています。3年前と同じ日常が戻って来るとは思いません。でも、新しい日常がやって来る。いや、作っていこうと思います。

戦時から平時へ。
これからの新しい平常運行を時代に合わせてアジャストさせて行こうと思います。

あと20年通えるバー。
心からそうありたいと思っております。

日々、ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。

池袋 ジェイズ・バー
蓮村 元


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