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【MTG雑談】通計・感覚・賭け

こんにちは。malsemanです。
今回はちょっと変わった形で、昔聞いた少し珍しい話を語ろうと思います。


■ CASE 1

「私には、通計的にこれが正しい行動だと思う」

(200x年、地元のショップに行った。知り合いが遊びながら声をかけた)

A:「M君久しぶり~ あ、ちょうど今面白いこと見せようか?」
M:「こんにちは。へえ、なんですか?」
A:「最近俺はさ、フェッチランドを切るといつも土地ばっかり引くんだ。ほら、エンド時にフェッチを切ります!(シャッフル)カットお願いします!ドロー!あーまた土地かー!」
A:「この現状、偶然と済ませたいけど頻度が多すぎるんだよ。君も知ってるでしょう?土地を引きたくないならフェッチしてライブラリの土地を減らせという常識。でもね、これが俺には全然適用されないんだよ。」
A:「それから、最近の私は土地が欲しい時はフェッチを切ろうと決めた。一般論とは関係なく、私には、通計的にこれが正しい行動だと思う。」

(2ゲームした後に、彼はもう一回声をかけた)
A:「1ランドキープ!見て見てフェッチするぞ~~ ドロ!ランド!やはり数学的確率が低くてもこれが正解だよ!」
M:「そ、そうですね。。。」


(Aさんは競技プレイヤーではなかったが、後でこの理論を学んだ別の人は結構勝ち、プロツアーまで行った)

■ CASE 2

「感覚的にこの行動を選びたい。オフラインはシャッフルが不完全だから」

(約5年前、モダン大会が終わったから雑談を始めた)

B:「M君。今日大会中にこんなハンドが出た。少し考えてみたら他の人の考えが気になった。これ、どう思う?」

Bさんの初手例

B:「1戦目の先手。相手のデッキは不明。私はこの手札なら1ターンに《Ancient Stirring》を使ってデッキに4枚ある《Eldrazi Temple》を探す事に成功したら2ターン目からベストムーブが出来ると思ってキープした。」
B:「ここで一番大事な行為は《Ancient stirring》でデッキ上5枚を見て《Eldrazi Temple》にたどり着くこと。そしたら君は(1.森をセットしてstirringを唱える)/(2.フェッチランドを切ってstirringを唱える)?」

M:「うむ~ ぱっと見るとフェッチを切る方が正しいと思いますが。。。なぜそんな疑問を?」
B:「この状況に関して後に少し考えたら、こんな考えを思いついたんだ。フェッチを切ったら基本ライブラリのカードを1枚減らして52枚のランダムなカードで上位5枚を見て《Eldrazi Temple》を探すことになる。
しかし、もし森をセットして《Ancient Stirring》を唱えるとしよう。これは53枚のカードで上位5枚を見て探すことだが、実は60枚デッキから既に上7枚を見た状況で、さらに5枚を見ることだよ。即ち、60枚から上12枚を見て《Eldrazi Temple》を探す行為ではないかと思った。ライブラリが最初と同じだから。」
B:「こうなると52枚中5枚より、60枚中12枚の方が4枚カードを探す確率が多いんじゃない?初期シャフルでカードがよく分布されたら、フェッチを切らない方が確率が高いんじゃないかという気がした。数学的に正しいかよくわからないけど、感覚的にはそう思う。前にカバレッジビデオで見たプロもフェッチよりペインランドを優先するのを見た。何か理由があるはず。」
M:「深いですね。後で数学が得意な知り合いに聞いてみたいです。」

(家に帰り、オンライン知り合い達に聞いてみた。)
P:何その戯言は、当然減らす(フェッチを切る)方がいい。独立試行確率はそう計算しちゃだめ。
S(数学博士課程):先に7枚を引いたのは後に引くカードの確率には影響が無いのに、関係があると勘違いする人は結構いる。もっと興味があったら「マルコフ連鎖」とか調べて。そのカードを探す確率は数学的には母数をへらした後が高いよ。

(数日後、Bさんと再会)
M:~らしいです。数学が得意な人達がそう言いました。
B:おお、ありがとう。そうなんだ。。。MTGOなら私もフェッチからする方が正しいと思う。でもね、数学的に確率が低いんだとしても、私は感覚的にライブラリがリセットされるのは好ましくないね。理論がそうだとしても、感覚的にこの行動を選びたい。オフラインはシャッフルが不完全だから」

(Bさんは基本合理的なプレイをするが、時々感覚的で理不尽な選択をしてた。でも彼は結構勝ち、プロツアーまで行ってた)

■ CASE 3

「あれはマジックに強いんじゃなくて、賭けに強いことだと思う。」

約7年前、「BGエネルギー」というデッキが話題になったことがあります。
2ターン《Winding Contstrictor》 3ターン《Rishkar, Peema Renegade》で4/5 + 4/4という凄い盤面を作るデッキで、発売初期大会で凄く勝ちました。

BGエネルギーデッキ

最初は基本固定パーツが多いデッキで、人によって中後半に強力な《Vedurous Gearhulk》を使うか、相手の除去対策兼コンバットトリック《Blossoming Defense》を使うかが特に異なる部分でした。ある日、このデッキで勝ってるプレイヤーがいて、彼に少し聞いてみました。

M:「こんにちは。このデッキ最適化で悩んでいます。緑ギアを増やすなら土地を何枚にする方が良いか、defenseは役に立つ状況が多いからもっと使いたいんですが、枠がなくて。。。あなたはどんな比率で組んでましたか教えてもらえますか?」
D:「両方いいカードだから使い得ですね~ 私は緑ギアと防御を4枚づつ採用してます。」
M:「???何?枠はありますか?何を減らしたんですか?」
D:「当然土地です。実はこのデッキ、回して見たら《Attune with Aether》の存在で、あまり事故らないですよ。」
M:「そしたらギアハルク用5マナが出ないんじゃ。。。安定性が。。。」
D:「私は特に問題なく、凄く事故った経験はないよ。」

(数日後、当時チームのエースだった兄貴にこの話をしました)
M:「と話しました。私には理解できません。あんなに不安定なデッキでずっと勝てるなって。」
N:「ふふ、一言で説明してやろうか。それはマジックに強いのではなく、賭けに強いことだよ。多くの試合をすればいつか事故るよ。でもね、短期的には運がよければ他の人よりバリューが高いデッキになることさ。正直長くはならないと思うけど、彼なりの勝ち方よ。褒めるべきだと思う。」
M:「 そうですね。うむ。。。よくわかりません。」

(Dさんも私の予想より結構勝って、プロツアーまで行ってた)

■ CASE 0


幼い頃、たまにこんな課題がありました。「創意的に考えて発表しなさい」

自分なりに頑張って色々考えて発表したが、ふつうに評価が悪かったです。
「それ非現実的ですね」「肯定的ではない」「珍しいけど、そうじゃない」

とにかく他の人とは違う何かを頑張って考えた結果は、ほぼよく評価されませんでした。点数をもらうためには、普通だけど健全そうな答えがよかったです。重要なのは先生の好みで合わせることでした。

時が流れ、会社で似たような指示がありました。「新しいアイディアを提案しなさい」私が最大限「新しい」と考えた提案の反応も、学生の時とあまり変わりませんでした。
「似た成功例はある?」「全然よさそうではない」「状況を考えなさすぎ」

他と違うことでは全然足りなかったです。上司の好みも大事だし、証明には成功例もしくは凄い説得力が必要でした。

偉い人達はこんな状況を乗り越える為に色んな努力をするが、私は力不足で出来なくて、どんどん普通に安全な意見だけ出す人に変わりました。


しかし、マジックの世界は少し違いました。

新しいデッキアイディアを話すと、実はほぼ同じ反応が返ってきます。
「成功例ある?」「よくなさそう」「証明出来る?」

ですが、ここでは極簡単に「証明する」方法がありました。「大会で勝つ」ことです。日常生活と違って、考えたアイディアをあらゆる人達を説得するために凄く努力する必要はありませんでした。ただそのアイディアを使ったデッキで勝てば自動的に証明され、簡単に説得できました。

「勝ってば正義」という事象は普通よくないと思われます。色んな悪行が正当化されるからです。ですが、カードゲームだからこの属性によって意外といい面もありました。
私がMTGというゲームを好きな理由は数え切れないほど多くありますが、今回はこれを言いたいです。
「論理的に証明不可能なことを証明出来た」と感じられる、承認欲求を満たしてくれる面もあるから です。
(もちろん負けたら証明不可だけど、そもそも不可能なことだったから問題なし。次に挑戦しよう。)

Fin.

■ EPILOGUE

  1. 実は約3か月前にもりゆきさんの「一般TCG理論」記事を見て、私ならどんな話をするかを考えた時に浮かんだ話です。はあ?と思われるでしょうね。そうです。なんか私が面白そうな経験を考える度に、一般的な話からひねり過ぎた結果、わけわからない特殊な例ばかり書いてしまいました。「一般TCG理論」ではなく「特殊TCG詭弁」になってしまったのです。
    途中書く事を止めた記事ですが、考えた時間を無駄にすることも惜しいし、 たまにはこんなエッセイ的な記事も少しエンターテインメント性があると思って書きました。次はもっと役に立つ記事を書きたいです。

  2. 本記事をCASE形式はとあるゲームのパロディーです。美少女がいる科学的ファンタジーは好みです。(有名デッキビルダーまつがんさんも絶賛


最後まで読んでくれてありがとうございました。


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