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" ひととものを介して地域文化の経済循環を図る ", 地域文化商社・うなぎの寝床代表の白水高広(しらみずたかひろ)さん

武蔵野美術大学大学院・クリエイティブリーダーシップ特論II、第10回白水高広さん、2020年7月20日@武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス(via Zoom)by 木越純

白水さんは、1985年佐賀県小城市生まれの35歳です。大分大学工学部福祉環境工学科建築コース卒業後、厚生労働省の雇用創出事業「九州ちくご元気計画」にプロジェクトの主任推進員として関わります。同事業は2011年のグッドデザイン賞商工会議所会頭賞を受賞。ここで得たアイデアを発展させる形で、2012年7月にアンテナショップうなぎの寝床を立ち上げ、現在まで地域文化商社としての活動を展開しています。今日は地元・福岡県八女市からオンラインでご出講頂きました。

そもそも地域文化とは?白水さんは「土地と人、人と人が関わりあい 生まれる現象の総体」と定義します。「うなぎの寝床」は、地域のものづくりを伝え継続させてゆくためのブランディングを進めるアンテナショップとして立ち上がりました。その後、「もの」だけでなく「こと」すなわち地域文化を体験するサービスを提供し、循環経済を進める仕組みを作り、地域文化を活用した地元経済活性化のシステム作りまで視野に入れています。

うなぎの寝床の主力商品「MONPE」は、地元の伝統的な織物である久留米絣(くるめかすり)で作られた野良着・普段着である「モンペ」を、織り柄やデザインを工夫し、着心地抜群でお洒落なカジュアル着「MONPE」としてブランディングしたものです。「MONPE」博覧会といったイベント企画、インターネットやSNSを活用した宣伝・販売で、これまで久留米絣を知らなかった都市生活者や若い世代にも訴求できる商品となり、地元の伝統産業のリバイバルにも繋がります。

なぜ「MONPE」が受け入れられたかについて、白水さんは、まず肌触りが良く吸水性と速乾性に富む久留米絣の機能的要素があると分析します。その上で伝統工芸から生まれた日常着という文化的要素が加わり、それに視覚的要素であるデザインが貢献しました。機能・文化の土台がなく、デザインから入る商品は長続きしないと言います。

ものの特性は「商品」と「情報」に分かれます。前者は価格であり機能であり、地方の商品は常に大量生産品や輸入品との経済競争に曝されます。一方歴史や技術や思想といった文化としての情報は、地域固有のものとして違いを訴求できます。うなぎの寝床は、地域の特産品に新しい意味と価値を見つけ、都市生活者や他の地域との循環を目指しています。

うなぎの寝床は、起業の頃から地元の生産者とは全量現金買取で取引をしていると伺いました。自分達がこれだと思ったアイデアから生まれる製品を生産者のリスクで作らせる訳にはゆかないとの考えです。「MONPE」を始めこうして立ち上げた商品群が、地域生産者と消費者との信頼感の中で生み出しており、地域の伝統産業のリバイバルにつながっていることが感じられました。

アメリカの鉱夫の作業着から生まれたジーンズになぞられ、うなぎの寝床が「日本のジーンズ」とアピールしている「MONPE」、今度ワイフと一緒に、でも色違いで身に付けてみようかなと思いました。(了)



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