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腐れ大学生とミニシアターとの出逢い

「じぶんの知らない世界」を覗くことが出来る、それがミニシアターという場所だ。

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私のミニシアターデビューは大学1回生の12月だった。思い描いていた大学生活とはかけ離れた、悶々とした真っ灰色の日々を過ごしていた。

これではいけない、新たなことを何か始めなければ。そう思い、今までに行ったことのない所へ行くことに決めた。決心した暇な学生の行動は早い。

そこで選んだのが、京阪出町柳駅から鴨川を渡ってすぐの出町枡形商店街の一角にある出町座。以前から存在は知っていたが、知っている作品もなかったので訪れる機会はなかった。

この日に見たのは「バッドジーニアス 危険な天才たち」。どんな作品かと簡単に言えば、定期テストと入試で頑張ってカンニングをするタイの映画。

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何かのサイトで面白いという評判は聞いていた。しかし、実際の感想としては、予想を超えた面白さ。今までにない新ジャンル。そこらのスパイ映画をはるかに超えるハラハラ具合。手汗が止まらなかった。というのも、数か月前に実際に入試を経験していた自らの姿と重なるところがあったのだ。決して私はカンニングなんかしない良い子だったが。

タイの映画なんか一本も観たことがなかった。ミニシアターとの出逢いがなければ一生観ようとも思わなかっただろう。こんなオモシロ映画を厳選して上映している出町座すごい。そう思った。

この日の衝撃を受けて出町座の学生会員になった。世間でそれほど評判になっていない映画を見つけ出す悦び、映画を通して世界が開けていく快感に気付いてしまったのだ。この日を境に京都のあらゆるミニシアター、さらには大阪にまで足を運ぶようになった。

シネコンとは違ったミニシアターにしかない魅力。スクリーンとの距離なのか、劇場の雰囲気なのか、年配の方のなんか安心する匂いなのか、様々な要素が絡み合ってミニシアターを引き立たせている。

オフィス街の一角にある「京都シネマ」、京都の玄関口からすぐの「京都みなみ会館」、町の商店街の中にある「出町座」。どれも好きだが、特に出町座は地域の人々、周辺の大学に通う学生に愛されている様子。私も愛している。

そんなかけがえのない存在が現在コロナウイルスの影響で危機に瀕している。本日で締め切りのミニシアターエイドに私も少額ながら支援した。

小さな映画館、そんなのあってもなくても経済は回り続けると国のお偉いさんは思うかもしれない。けれど、それが人々に与える影響は、計り知れないものだと私は知っている。私は国のお偉いさんより偉いのかもしれない。

コロナウイルスのせいか、おかげか、映画が無い日々はつまらないと痛感した。町の映画館がある。日々作品を上映している。上映スケジュールをチェックする。チケットを買って上映までに古本屋で時間を潰す。何気ない日常こそこの上ない幸せだった。

アフターコロナの世界でも、出町座にはいつも変わらず元気に上映してもらわないといけない。その日々を待ち焦がれるのは、一人の腐れ大学生なのだった。


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