見出し画像

夢の配達員

なんでも夢を叶えてあげよう!
福引にあたって、私の前に現れた初老のおじさんはそう言いました。

-君が好きなことは?君がやってみたいことは?
-踊りが好きなの。この間テレビでアルゼンチンタンゴというのをみたんです。とってもカッコよくて、私もやってみたないな、って。

そんな書き出して始まったショートストーリー。ステッキをトントンと打って連れて行かれたのはブエノス・アイレスの夜でした。星空の下で老若男女が楽しそうに踊っていて、その中にいた一組のカップルに促されるように踊り始めた赤い服の女の子。それが私でした。

筆を進めるうちにこの子に惹かれた私は、役を取るためにアルゼンチンタンゴを習い、オーディションに臨んだのでした。

夢から醒めた女の子に配達員はどうだった?と聞きます。
-先生が学びにいらっしゃいと言ってくれたんです。仕事辞めて留学することにしました。人生一度きりしかないのだから、えいやって。
-大人になると最初の一歩を踏み出すことが難しいんだよね。いいぞ、さぁいってらっしゃい!
そう言って背中を押された私は、ミロンゲーラへの道を歩き出したのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?