「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第62回 ロヒンギャ問題は解決へ向かうのか?
2017年8月25日、この日は多くのロヒンギャにとって苦難の始まりとなりました。この日以降、ミャンマー国軍はロヒンギャの武装組織に対して掃討作戦を実施し、無数のロヒンギャが難民として国外へ逃れることになりました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、その数は既に100万人を超えており、その多くが隣国バングラデシュへと流れています。彼らは不自由な難民キャンプでの生活を余儀なくされており、これが深刻な国際問題となっているのはご承知の通りです。
実際ロヒンギャ難民の数は、パレスチナ難民に次いで世界で多いとされています。一方で日本ではウクライナ問題とは異なり、ロヒンギャ問題がマスコミによって取り上げられる機会は非常に限られています。ただ現実に目を向ければ、日本とミャンマーの経済的な結び付きは、日本とウクライナ以上に強いものがあります。実際ミャンマーに対しては、これまで有償と無償合わせて約1兆7000億円のODAが注ぎ込まれてきました。現在では新規のODAは止められているものの、過去の支援の一部が軍部に流れていたことは、残念ながら紛れもない事実です。加えてロヒンギャを最も受け入れているバングラデシュに対しても、日本は累計約3兆円のODA支援を行っています。こういった過去の歩みを考えるならば、日本国民一人一人がこのロヒンギャ問題に対して、もう少し関心を持って良いものと思われます。
ではこの深刻化するロヒンギャ問題において、日本は何ができますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、日本とミャンマー両国の関係性や、日本がロヒンギャ問題にこれまでどのように取り組んできたのかを知ることができます。それは過去の歩みを振り返るとともに、現在の日本が抱える問題を浮き彫りにしてくれるかもしれません。
一方で日本の統計だけでは不十分です。海外の統計にも注目する必要があります。既にロヒンギャ問題はミャンマーとバングラデシュの二国間ではとどまらず、東南アジアや中東まで飛び火しています。しかしミャンマーは立地的に欧米と遠く離れていることから、国際社会の中で問題が矮小化されがちです。この点で海外の統計を調べれば、これまでどの国が積極的にロヒンギャ問題に関与してきたのかを理解できます。それ故に海外の統計も重要と言えます。
とはいえ統計だけでは見えて来ない分野があります。それはロヒンギャ一人一人の「生の声」です。100万人という難民の数字に私たちは圧倒されますが、言うまでもなくその100万人の一人一人にはそれぞれの人生があり、それぞれの家族がいます。そして彼らの中には栄養失調や伝染病で命を落とす人も少なくありません。当然ながらこういった一人一人の辛苦は、統計から見えて来ないものです。それ故に「生の声」に耳を傾けることは大切なのです。
この点で私はマレーシアで会社を経営していますが、マレーシアはバングラデシュに次ぐ世界最大級のロヒンギャ受け入れ国として知られています。その数は少なくとも18万人に及び、クアラルンプール近郊のレストランにでも行けば、ロヒンギャ難民の店員を見かけることができます。また私は会社経営の傍ら、ロヒンギャ難民の子どもたちが教育を受けられるための慈善活動をライフワークにしています。これまで決して少なくない資金を慈善団体に対して寄付してきましたし、その活動のために時間も割いてきました。例えばTwitterやこのnoteの収益も、慈善団体に寄付させていただいています。このように私は彼らの現実をこれまで目の当たりにしてきましたので、このロヒンギャ問題について語る上で、確かに有利な立場にいます。
それで今日は「ロヒンギャ問題は解決へ向かうのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、これまで日本がこの問題にどのように対峙してきたのかを振り返ります。次に海外の統計を通して、ロヒンギャ問題が深刻化してしまう要因を分析します。最後に私自身のマレーシアにおける会社経営および慈善活動の経験も踏まえながら、今後のロヒンギャ問題の先行きと、日本政府が行うべきこと、および日本国民一人一人が行えることに関して、考察と提言を述べたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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ちゃん社長のコンテナ・海運業界・マレーシアの裏話。
香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…
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