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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第83回 東京という都市はどこまで成長を続けるのか?

 2024年4月30日、不動産サービスの日本不動産研究所は「国際不動産価格賃料指数」を発表しました。それによりますと、東京と大阪のマンション価格が半年前と比較してそれぞれ+1.5%となり、世界主要15都市の中で上昇率が首位となりました。東京と大阪が揃って首位になるのはこの10年間で初めてで、日本の都市部の不動産価格が急騰していることをこの調査は裏付けています。
 
 また東京において価格が高騰しているのは、不動産だけではありません。例えばホテル価格も、コロナ禍では1泊7000円程度で泊まれていたようなビジネスホテルが、今では1万円台半ばの値付けになっています。また中~高価格帯のディナーレストランのプライスも、コロナ前には7000円台程度だった店が1万円台に、1円台だった店が2万円台に高騰しています。このように東京には、日本から、さらには海外から人とお金が集まっており、堅調な経済成長が見られる状況です。
 
 一方でこれに疑義を唱える人も現れ始めています。例えば2024年の東京都知事選で立候補した石丸伸二氏は、「東京の一極集中から、全国にわたる多極分散に向かう時が来ている」と訴えて、小池知事に次ぐ得票数を獲得しました。このように東京の一極集中を危惧する声は、石丸氏のみならず、他の有識者の中からも出ており、これは日本全体の課題とも言い換えることができます。
 
 ではどうすれば未来を予測できますか?この点で統計は有用です。例えば不動産価格や消費者物価指数などの指標を調べれば、東京の実態について、私たちは正しい理解を得ることができます。それは現在の東京が抱える問題を明らかにするとともに、将来の伸び代についても教えてくれるかもしれません。それゆえに統計は重要です。
 
 ただ日本の統計だけでは不十分です。海外の統計も必要です。東京の不動産価格が高騰している背景には、外国人投資家が関係しています。そして東京都心部の不動産価格が高騰しているのは事実ですが、それでも世界の主要都市と比較するならば、まだまだ割安感があります。加えて昨今は歴史的な円安により、その割安感に拍車がかかっています。また日本人の中には「東京の物価は高い」と考える人が多くいますが、逆に外国人観光客は口を揃えて「東京の物価は安い」と言います。このように日本だけでなく、海外からも東京には注目が集まっている訳なので、日本の統計に加えて、海外の統計を調べることも大切です。
 
 この点で私は香港とマレーシアでコンテナリース会社を経営しており、シンガポールにもクライアントが大勢います。コンテナリースは富裕層の節税対策のスキームに用いられることも多く、彼らの中には日本、特に東京を有力な投資先と考えている人も少なくありません。私はこういった人々と普段から接しているため、統計に加えて、「生の声」を聴くという点でも、確かに有利な立場にいます。
 
 それで今日は「東京という都市はどこまで成長を続けるのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、東京の様々な物価がどのように高騰しているのかを俯瞰します。次に海外の統計を通して、外国人投資家や外国人旅行者から見た「東京の価値」を考察します。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、東京の将来を予測すると共に、日本国民が「東京」という都市とどのように向き合うべきなのか、提言を述べたいと思います。東京にお住まいの方、お勤めの方、さらには東京の企業や不動産に投資を考えている方には、特にお読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
  

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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