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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第16回 日本は中小企業が多すぎるのか?

 日本は20年以上にわたり経済低迷が続いていると言われています。確かにこの間、賃金は伸びずに物価の低迷も続いてきました。そしてここにきて、賃金は上がらないのに物価は上昇していく「スタグフレーション」と呼ばれる状況になってきたと考えられており、今後の日本人の生活は更に厳しいものになっていく事も予想されます。

 なぜこの様な状況が続いているのでしょうか?その要因の一つに「日本企業の生産性の低さ」を挙げる識者は大勢います。確かに諸外国と比較しても日本企業の生産性の低さを明示する統計は幾つもあり、これが日本の経済成長を妨げてきた要因の一つと考えてもおかしくはないでしょう。しかし何故日本企業は生産性が低いのでしょうか?この点に関しては諸説ありますが、非常に有力な説の一つが「中小企業が多すぎる」というものです。確かに大手企業と比較して中小企業の収益性は全般的に低い事で知られており、それが日本経済の低迷に繋がったと考える人は大勢います。

 ただしこの背景を知る事は大切です。日本に中小企業が多いのは事実ですが、なぜこれだけ多くなってしまったのでしょうか?この点を理解する上で、統計を調べる事は有用です。統計は雄弁です。統計を調べれば、日本の中小企業の数がどのように推移してきたのかを知る事ができます。それを知るならば、日本企業の生産性が上がらない原因も併せて見つける事が出来るかもしれません。

 一方で日本の統計だけを見ても余り意味がありません。海外の統計も調べる必要があります。なぜなら日本企業の生産性は「過去と比較して」という指標以上に、「海外と比較して」芳しくないからです。日本に加えて海外の中小企業の数や傾向を調べるならば、現在の実際の日本経済の立ち位置も理解する事ができるでしょう。

 ただ統計だけでは見えて来ない分野もあります。それはその企業で実際に働く人たちの暮らしぶりです。中小企業は大企業と比較して賃金が安いと言われていますが、一方で経営者の生活ぶりを見るならば、非常に儲かっている様に見える企業も少なくありません。「節税対策」と称して高級外車に乗っている中小企業経営者は大勢いますし、暮らしぶりの豊かさだけを見れば、大企業の経営者以上に裕福そうに思える中小企業経営者も大勢います。

 この点で私自身も中小企業の経営者ですし、同時に海外の港湾で会社を経営している事から、海外の中小企業経営者と接する機会があります。というのは、弊社はコンテナリース業ですが、最終荷主の殆どは中小企業であり、彼らと密に接点があるからです。こういった世界の中小企業経営者との交わりを通して、私は彼らのビジネスや、その仕事に対する哲学を目の当たりにしてきました。ですから私は日本と海外の中小企業の比較を行う上で有利な立場にいます。

 それで今日は「日本は中小企業が多すぎるのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を調べる事で、中小企業の数やそこで働く人の数、更には事業所数がどのように推移してきたのかを考えます。次に世界の統計を調べる事で、世界の中小企業の実態や生産性について検討します。併せて私が海外で会社経営を行う中で得た人脈や経験を通して、海外の中小企業の実態についても考察していきます。そして最後に日本の中小企業の将来像についても推察していきたいと思います。長文ですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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