見出し画像

「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第64回 日本のNPO法は何が問題なのか?

 今年、2023年はNPO促進法が施行されて、ちょうど25周年に当たります。それ以前には何か慈善活動を行っても、その多くが個人の善意に過ぎませんでしたが、NPO法が整備されたおかげで、今ではボランティア団体が法人の名の下に取引を行うことができるようになっています。そして現在NPO法人の数は、認証法人と認定法人を合わせて、50,000法人を超えています。恐らくNPO法が施行された時点では、ここまで団体数が広がることを予想できた人は少なかったでしょう。
 
 一方で「数」が増えれば、逆にその「質」が問題となってきます。大きな成果を上げている団体がある一方で、活動報告すらままならない団体も中には存在します。例えば2018年には、福岡県内の休眠中のNPO法人が暴力団に乗っ取られ、組幹部の指示の下、暴力団関係者が役員として送り込まれるという事件が発生しました。このNPO法人では、当初4人だった理事が50人まで増加し、福岡県警の捜査が入る事態にまで発展しました。
 
 これは特異な例ですが、一方でNPO法人の中には、補助金や助成金などのいわゆる「公金」が入っている団体も少なくなくありません。仮に運営が不適切な法人にそういった公金が注入されるなら、国および地方自治体の責任も問われることになります。それで法制化から25年が経過した今、NPO法の功罪について改めて検証することは有用と言えます。
 
 ではどうすればそれが分かりますか?この点で統計は有用です。日本の統計を調べれば、NPO法人の数がこれまでどのように推移してきたか、またそこに関わった人数や、それによる経済効果なども知ることができます。それはこれまでの日本の歩みを明らかにするとともに、現在の日本のNPO法人が抱える課題も浮き彫りにしてくれるかもしれません。
 
 一方で日本だけでなく、海外の統計も重要です。無論海外にもNPOおよびNGO法人は存在します。彼らは先進国に加え、新興国や途上国においても活発に活動を続けています。こういった海外の団体に関する統計を調べる時、日本のNPO法の特異性をさらに理解できるようになります。それ故に海外の統計を調べることも有用と言えます。
 
 ただ統計からは見えて来ない面があります。それはNPOの活動に関わる人たちの「生の声」です。そもそも慈善活動というものは、お金だけでは評価できない側面があります。慈善活動によって助けられた人は感謝の気持ちを抱くものですし、反対に助けた側も喜びを感じるものです。このような「人の感情」というものは、当然ながら統計には現れず、慈善活動に関わった当事者でないと理解できない類のものです。それ故に「生の声」に耳を傾けることも大切と言えます。
 
 この点で私のnoteの読者、およびTwitterのフォロワーは良くご存じかと思いますが、私はマレーシアで会社を経営する傍ら、これまで慈善活動をライフワークとしてきました。マレーシアは世界最大級のロヒンギャ難民の受け入れ国として知られており、その数は約18万人に上ります。その中には子どもたちも大勢おり、彼らはずっと教育を受ける機会に恵まれてきませんでした。それでマレーシアにはこういったロヒンギャ難民の子供たちを対象とした教育センターが幾つもあり、私はその支援のために、これまでかなりの時間と資金を費やしてきました。 ちなみにnoteやTwitterの収益も、慈善団体に寄付させていただいています。それで私は慈善活動に携わる人たち、またそれによって救われた人たちを実際に目の当たりにしてきましたので、「生の声」に耳を傾けるという点で確かに有利な立場にいます。
 
 それで今日は「日本のNPO法は何が問題なのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本のNPO法人の推移を振り返ります。次に海外のNPOの傾向を調べることで、日本のNPO法の特異性を浮き彫りにします。最後に私自身の海外における会社経営および慈善事業の経験を踏まえながら、日本のNPO法の問題点を考察するとともに、今後の方向性に関して提言をしたいと思います。いわゆる「公金問題」に関心をお持ちの方にも、是非お読みいただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
  

ここから先は

6,808字 / 6画像
マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?