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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第79回 これからはフリーランスの時代が来るのか?

 2024年11月1日、フリーランスで働く人を保護する「フリーランス新法」が施行される予定です。この法律は2023年4月に成立しましたが、フリーランスを保護するための様々な施策が盛り込まれています。具体的には、報酬を相場より著しく低く設定することを禁止したり、業務完了後60日以内に報酬を支払うことなどが義務付けられています。また発注企業に違反が見られた場合、フリーランス側は相談機関に報告でき、国は違反企業に対して指導や勧告、さらには50万円以下の罰金を科すことも可能になります。
 
 確かに昨今の働き方改革は、多様な仕事のスタイルを生み出すようになりました。その代表格がフリーランスであり、その人数は増加の一途を辿っています。またメディアもそれを歓迎する風潮の報道を繰り返しており、フリーランスは一つの社会現象になっていると言っても過言ではないかもしれません。
 
 ここで一つの疑問が生じます。本当にフリーランスは有用な働き方なのでしょうか?これを知る上で、統計は重要です。統計を調べれば、フリーランスと呼ばれる人たちの数がどのように推移してきたのか、そして彼らの所得レンジがどの程度なのかを知ることができます。これにより、日本の雇用政策の課題や、今後の方向性も見えてくるかもしれません。ですから統計を調べることは大切です。
 
 ただ日本の統計だけでは不十分です。海外の統計についても調べる必要があります。フリーランスの増加は、実は日本だけでなく全世界的な傾向と言われています。先進国でも新興国でも、フリーランスのような立場で仕事を受注する人の数は増えている訳です。ではこれにより、企業の生産性や収益性はどのように変化しているのでしょうか?こういった点を調べるならば、昨今のグローバルな潮流を知ることができるのと同時に、日本の雇用の特異性も理解できるでしょう。
 
 一方で統計からは見えて来ないものもあります。それは実際に働く人たちの「生の声」です。ぜひ思い出していただきたいのですが、90年代から2000年代にかけて、日本は未曽有の就職氷河期に突入しました。この頃には正社員になれず、非正規にしか就けない人たちが大勢生まれた訳ですが、メディアの論調の中には、「これが企業に縛られない新しい生き方だ」というポジティブな見方も散見されました。しかしご承知の通り、正規と非正規の格差は拡大を続け、当事者は大いに苦しむ羽目に陥りました。私自身もこの世代ゆえにその惨状を目の当たりにしてきましたが、そこには言葉に出来ない多くの苦悩がありました。こういった類のものは統計から見えて来ず、当事者の声に耳を傾けて初めて理解できるものです。それ故に「生の声」は重要なのです。
 
 この点で私はマレーシアで会社を経営していますが、この国でも様々な働き方が見られるようになっています。特にマレーシアでは副業に従事する人の割合が非常に多く、フリーランスの立場で働く人も少なからず見られます。また弊社自身も正社員を抱える一方で、派遣社員も受け入れていますし、逆にフリーランスの立場の人に仕事を発注することもあり、その発注先は国内だけでなく海外にも及びます。このような環境にいることから、私はフリーランスの問題について考える上で、確かに有利な立場にいます。
 
 それで今日は「これからはフリーランスの時代が来るのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、フリーランス人口がどのように推移してきたのかを振り返ります。次に海外の統計を通して、諸外国におけるフリーランスの実態と課題を考えます。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、フリーランスという働き方の強みと脆弱性を考察すると共に、「ビジネスパーソンがさらに稼ぐにはどうすべきなのか」について、具体的な提言を述べたいと思います。将来的に副業や独立を考えている方には、特にご覧いただきたい内容です。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
 

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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