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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第41回 COP27(気候変動枠組条約締約国会議)は世界をどう変えるのか

 2022年11月6日、COP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)が開催され、197の国と地域の代表者がエジプトで一堂に会しました。地球温暖化は世界共通の関心事であり、日本も他人事とは言えません。しかし各国間の調整は難渋を極め、予定した会期を延長する事態になりました。しかし最終的には国連の枠組みで途上国への資金支援に取り組むことで合意に至り、会議は閉会を迎えました。
 
 このCOP27に関しては、テレビやネットのニュースでご覧になった方も多いかと思います。COPは毎年行われている訳ですが、ここまで日本のメディアによって取り上げられたのは初めてだったかもしれません。ただ殆どの日本人にとっては、COP27で何が話し合われたかなど知りませんし、関心もありません。とはいえ今回の会議で話し合われた内容は、日本の将来を大きく左右するものです。故にその内容について精通するのは非常に有用です。
 
 加えて今回のCOP27は今後の世界情勢を占う上で、重要な分水嶺になったと私は考えています。当然の事ですが、COP27で話し合われたのは環境問題です。しかしながら今回のCOP27は環境問題にとどまらず、これまでの先進国・新興国・途上国という力関係の枠組みを一変させる可能性を含むものとなりました。一言で言えば、「先進国に対する新興国・途上国の蜂起」です。言うまでもなく日本は先進国側にいますので、今回の会議が及ぼす影響を避けて通る事はできません。ですからCOP27について深く知る事は極めて重要なのです。
 
 ではどうすれば正しい理解を得る事ができますか?この点で統計は有用です。世界の統計を調べれば、実際に世界の気候変動がこれまでどのように推移してきたか、更に各国はそれにどのように対峙してきたのかを知る事ができます。これは現在の各国が抱える問題を浮き彫りにすると共に、今後の世界の方向性も明示してくれるかもしれません。
 
 同時に日本の統計も精査する必要があります。当然ながら国際的な気候変動の枠組みにおいて、日本は常に途上国から責められる立場にいます。しかし日本の統計を調べれば、日本がこれまでどれだけ国際社会の中で協調性を示してきたか、その実績を知る事ができます。そしてその理解があれば、譲るべき点とそうでない点を論理的に主張できます。ですから日本の統計を調べる事も重要です。
 
 とはいえ統計だけでは見えて来ない分野もあります。それは実際に気候変動の被害を受けている国の人々の生活です。特に深刻なのは途上国の人々であり、途上国は政治的にも経済的にも力が弱いことから、彼らの声は国際社会に届きにくいものです。そしてこういった人々の窮状は統計にはなかなか現れてきません。それ故に生の声に耳を傾ける事も重要と言えます。
 
 この点で弊社は海外の港湾で会社を経営しており、途上国ともビジネス上の深い繋がりを持っています。その中にはアフリカの途上国も多く含まれ、彼らの港を含むインフラが自然災害の影響で被害が生じている状況を目の当たりにしていますし、それによる貨物の遅延や損害等も被っています。ですからこの気候変動の問題を語る上で、私は有利な立場にいます。
 
 それで今日は「COP27(気候変動枠組条約締約国会議)は世界をどう変えるのか」というテーマでコラムを書きます。最初に世界の統計を通して、地球の気候変動がこれまでどのように推移してきたのかを振り返ります。次に日本の統計を通して、これまで日本が国としてこの問題にどのように対峙してきたのかを俯瞰します。最後に私自身の海外での会社経営の経験を踏まえながら、このCOP27によって世界がどのように二分されていくのか、更に日本は何を行うべきかについて、考察を述べたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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