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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第67回 政治献金は悪なのか?

 2023年11月、岸田文雄首相が一昨年、日本医師連盟から1150万円の寄付を受け取った事実が明らかになりました。この他にもパーティー券150万円分や陣中見舞い100万円分など、受領した献金の総額は1400万円に上ると言われています。現在国会では診療報酬を巡って激しい攻防が繰り広げられている事から、このような行為は「利益相反に当たるのでは」と疑問視する人もいるようです。一方で他の野党も多かれ少なかれ企業や団体から献金を受け取っているため、自分たちにも火の粉が及ぶ可能性もあり、深く追及しにくい状況が生まれています。
 
 確かに「政治とカネ」は、古くから問題になってきました。そしてこれを脱するために、制定されたのが政党交付金です。この基となる政党助成法は1994年に成立し、1995年1月1日から施行されましたが、これにより大規模な政治献金による不正は影を潜めました。しかし一方で、この制度の欠点も露見しています。例えば日本の政界では、政党交付金を欲する余り、年末になると新党が結成されるという悪習慣も見られます。それで一度立ち止まって、日本の政治献金の在り方について考えるのは良いことと言えるでしょう。
 
 ではどうすればその実態が分かりますか?この点で統計は有用です。統計を調べれば、これまで日本の政治献金がどのように推移してきたのか、同時に政党交付金がどれだけ支払われてきたかを理解できます。それは過去の日本の政治の歩みを教えてくれると共に、今の日本の政治が抱える構造的な問題も明らかにしてくれるかもしれません。
 
 ただ日本の統計だけではなく、海外の統計にも注目する必要があります。例えば米国では、日本よりも遥かに政治献金が活発に行われていることで知られています。特に近年は大富豪による政治献金が、企業献金の額を凌駕する事態も見られます。こうなると、特定の業界団体ならまだしも、特定の個人の考えが政策に影響を及ぼしかねません。加えて政策を実現するためのロビー活動も、日本とは比較にならないほど活発です。正に米国は「政治献金大国」と呼べる状況です。一方で逆に企業献金を禁止している国も存在します。それでこういった諸外国が政治献金によって受けている恩恵や、また逆に直面している問題を知るには、海外の統計を見る必要があります。それゆえに日本だけでなく、海外の統計も重要と言えます。
 
 この点で私は海外の港湾で会社を経営していますが、港湾という場所は、どこの国でも「利権まみれ」に近い状況が見られます。実際多くの国で、港湾の協会、もしくは港湾に関係する事業者は政治献金を行っていますし、それによって政策が決定されることもあります。さらに政治献金の法整備が追いついていない国においては、それが大規模な汚職や賄賂に発展することもしばしばです。私はこういった現実を目の当たりにしてきましたので、この政治献金の問題について語る上で、確かに有利な立場にいます。
 
 それで今日は「政治献金は悪なのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本の政治献金がどのように推移してきたのか、その額と歴史を振り返ります。次に海外の統計を通して、世界各国の政治献金の制度を俯瞰しながら、それぞれの国が抱える問題点を考察します。最後に私自身の海外における会社経営の経験も踏まえながら、日本の政治献金の問題点を考察するとともに、今後の進むべき方向性について提言を述べたいと思います。何よりこのコラムは、特定の政党や政治家を非難するためのものではありません。このコラムを通して、お読みいただいた各個人が、「適正な政治献金とは何なのか?」を考えるきっかけになることを願っています。長文になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
 

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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