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「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」 第51回 日本の食品輸出はどこまで伸びるのか?

 農林水産省は2022年の食品輸出実績を発表しましたが、それによりますと2022年の農林水産物と食品の輸出額は前年を14.3%も上回り、総額で1兆4148億円となりました。実際この分野の輸出額は目を見張る勢いで伸長しており、例えば2012年からの10年間で約3倍にも拡大しています。また欧米や中国、東南アジアなど市場は全世界的に広がっており、最近の円安も輸出にプラスに働いています。これは非常に明るいニュースです。
 
 振り返ってみますと、製造業の分野で日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代がありました。しかし90年代から2000年代に入ると、中国・韓国・台湾などの企業の台頭もあり、日本企業が世界的シェアで優位に立てる分野は減少してきました。その中でも伸長を続ける食品輸出は、貴重な数少ない成長産業と言えるでしょう。
 
 そして今後もこの傾向は続いていく事が期待されます。例えば世界的な日本料理人気は衰えておらず、特に近年は所得が伸びている新興国で店舗数が増加しています。加えて日本料理の認知度と日本の食品輸出は密接に関連しているため、今後も世界所得が伸びる中で、日本の食品輸出額が更に伸長するのは間違いないと考えられます。
 
 一方で確かに輸出額は増えているものの、日本の食品市場を俯瞰すれば、輸出は全体のごく一部に過ぎません。今後も輸出の伸びは期待できるものの、それだけで日本の農業や漁業が起死回生できるほどのインパクトはありません。ですからこの点でバランスの取れた見方をする事は非常に大切です。
 
 ではどうすれば実態を理解できますか?この点で統計は重要です。統計を調べれば、日本がどの国に対して、どのような品目を輸出してきたのかについて、正しい理解を得ることができます。それは過去の歩みを教えてくれると共に、今の日本の食品市場の問題点も明らかにしてくれるかもしれません。
 
 ただし日本の統計だけでは不十分です。海外の統計についても精査する必要があります。日本が食品を輸出している相手国は、当然ながら日本の食品だけを輸入している訳ではありません。多くの国では物量や価格で圧倒的な優位性のある中国産の食品が輸入シェアの1位を抑えていますし、また品質面で言うならば、韓国産の食品も日本の競合となっています。こういった海外の統計も調べるならば、日本の食品が置かれた立ち位置を更に正確に理解する事が出来るでしょう。
 
 一方で統計からだけは見えて来ない分野があります。それは現地の方々の生の声です。例えば東南アジアをはじめとして、新興国では日本の食品の認知度は上昇しています。しかし「どういった所得層の人に消費されているのか」、「評判はどうなのか」、「何が魅力なのか」、こういった質問に対する答えは、残念ながら統計からだけでは得る事ができません。現地の方々から話を聞いて初めて理解できる事柄です。ですから統計に加えて、生の声に耳を傾けるのは非常に重要と言えます。
 
 この点で私はマレーシアの港湾でコンテナリース会社を経営しており、弊社のコンテナは食品の輸送にも使われています。そのため日本に加え、海外、特に弊社の取引先の多い中東や東南アジアにおいて、貿易の最前線の情報や統計に触れる事ができています。加えて私自身も海外生活が長くなってきていますので、各国で取引先の方と日本料理を食べに行く機会や、自身で日本の食品を購入する機会に恵まれています。それでこの日本の食品輸出の課題について俯瞰する上で、私は幾らか有利な立場にいます。
 
 それで今日は「日本の食品輸出はどこまで伸びるのか?」というテーマでコラムを書きます。最初に日本の統計を通して、日本の食品輸出の概況を俯瞰します。次に海外の統計を通して、日本の食品輸出が抱える課題点も考察します。最後に私自身の経験も踏まえながら、今後の日本食品の輸出の方向性について、私見と考察を書いていきたいと思います。長文になりますが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

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マガジンは毎週1回、月4回更新します。コンテナ業界の裏話を含んだ自伝的小説「Container from Malaysia(コンテナ フロム マレーシア)」と、日本の構造的問題を海外の経営者の視点で統計と共に読み解くコラム「海外から見た、日本の良い点・おかしな点」を隔週で更新。貿易に関心がある方、海運やコンテナ関連の株をお持ちの方、またマレーシア在住者を含む海外移住者やそれを目標にしている方、更には日本の行政や教育システムに疑問をお持ちの方に有用な情報をお届けします。

香港・マレーシアでコンテナリース会社を経営中。マレーシア在住。コンテナや海運業界の裏話や、海外から見た日本の素晴らしい点やおかしな点を統計…

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