ロクロ首おばさんに会える街を行く

或る日しばらく行ってなかった交差点を超えた向こう側に行った。
大通りから路地に入り、ああ、リニューアルした焼き鳥屋は健在だな、いつかテレビに出ていたスイーツ屋には人が並んでいる。小さな角を曲がったら残り少なくなった料亭が、、、あるはずなのに、そこではショベルカーがうなりを上げていた。
古い由緒ある居酒屋がビルに変わったころから、街並みにはコンビニができ、ファーストフードの店が現れてきた。風情ある街並みは時代の流れに逆らうことなく身をゆだねていた。
多くの作家が逗留して、沢山の映画やドラマが生まれた旅館は一見何も変わっていないように見えるが、よく見ると趣のあった木の看板はプラステックに変わっていた。
仕事を辞めてから疎遠になっていたブテックは店を縮小して、それでも心惹かれる外国製のドレスやバッグがおいで、おいでしている。
そのたたずまいや歴史にこころひかれ、住みたくて住み始めた街は別の顔をみせていた。

歩き疲れて入ったカフェでクリームソーダをたのんでいたら、いつの間にか「ロクロ首おばさん」がそばにいた。
「変わっていくものを懐かしむのもいいけど、歴史とは変化を受け入れることなんだよ」と言う。
「ロクロ首おばさん」はコーヒーにたっぷりのミルクを入れた。スプーンでグルグルかき混ぜるとコーヒー色とミルク色が線となって混ざり合い、あっという間に黒でも白でもない「ホット色」になった。

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