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もうドミナントモーションじゃ人の心は動かない。

ここはとある一室、二人の男女が炬燵を囲んで音楽話を熱く語っている。
傍にはハチワレの猫が一匹、眠そうに欠伸をひとつ。
男が言った。
【もうドミナントモーションじゃ人の心は動かないのかなぁ。】
女が返す。
「ドミナントモーションって?」
【不安からの解放だよ。】
「???」
【曲っていうのは調があって、調っていうのは音階の事ね、その音階で曲が構成されてるんだけど、音階の中に安定、落ち着く音と、不安定、不安に感じる音があるの。】
【で、不安に感じる音はドミナントって言われてて、安定する音に移動したがる。】
【安定した音はトニックって言う。】
【そんで、ドミナントからトニックに移動する過程をドミナントモーションって言うんや。】
「なんとなくわかったけど、なんで関西弁?笑。」
【で、だ。】
「うん、で?」
【ドミナントモーションしてるところを聴くと、心が不安になって安心する。】
【音楽って心を揺さぶって、人の感情を操って好印象をもってもらうものなの。】
「ほう。」
【あと、歌詞とか演奏のクオリティとか色んな要素も入ってくるんだけどさ、コード進行に関しては、作曲者がね、どういう展開にしたら聴いた人が作った曲に心奪われるかの仕掛けをいっぱい仕込んだりする。】
【その仕掛けが上手くいくと、マジョリティ、多数の人がいい曲っつてCDやら、今はサブスクとかでダウンロード、ストリーミング再生◯億回とかヒットするわけですよ。】
【んで、その仕掛けの中でもドミナントモーションっていうのは結構強い!】
「白熱してきたね!」
【それから、それから、DTMが流行って、あれって波形区切って切り貼りできちゃうから、何種類かメロディとかコード弾いて切り貼りすると…。】
「すると?」
【なんと、曲ができちゃうんですよ、おくさん!】
「ドミナントモーションしてないの?」
【いや、してたり、ちゃんと考えて作ってる人もそりゃあいるけど、理論の枠からはみ出しちゃってて、それでも曲として完成しちゃってて、世の中に認められちゃうのもあるんだよね。】
「あるのかー!」
【たぶん、TikTokとかでバズったりしてわかものの間で流行ったりだとかそういうの。】
「ああねー!」
【そういうのはドミナントモーションしてないのかなぁとか思ったりしたんですよ。】
「そういうことか。」
【もう、音楽ってアニメの主題歌とか、なんか有名な人がバックで使ったとか、そういうので売れるでしょ?】
「そうだね、SNSでバズったりもあるね。」
【バズったりとかもなんか仕掛けがありそうだけど、もう、音楽単体じゃ、コラボ作みたいなのには売り上げじゃ勝てない。】
「そうかもね。」
【主体がアニメで音楽はサブなんだよ。】
【サブにドミナントモーションが必要なのか?】
「主体で心は揺れちゃうもんね。」
【アニメに感情移入した感動が残ったまま、曲を聴いた時に感動するって勘違いする。】
【音楽自体で心を揺らさなくてもよくなってきたんだよね。】
「時代の流れだね。」
【時代は変わっていくんだなぁ〜。】
【それにしても、テレビ観てると音楽番組に出てるアイドルみたいのが歌ってるラップみたいな歌、アレ何?聴いてると恥ずかしくなってくる笑。】
「ブンブンブンとかボンボンボンとか言ってるのねー笑。」
【そういう心の揺さぶりなのか?】
「お笑い枠かなぁ?」
『うにゃ〜。』

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