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「なんじゃろ」で幸せ。

GWで数年ぶりに神戸へ旅行した。
私にとって神戸はとても縁のあった街。

20代から30代半ばまで働いていた会社の本店が神戸にあり、何度も仕事で訪れた。私の慣れ親しんだ街として、記憶の層の中を漂っている。

新幹線の車窓から、山手の緑を背景に新神戸駅の看板が視界に入ってくると、胸がぎゅん(きゅんではない。)としてきた。

キラキラしていた。若くて、根拠のない自信に満ち溢れて、沢山の経験と失敗をどんどんじゃんじゃん積み上げて、泣いたり笑ったり、やたらと四角四面にピーんと張り詰めた私が手を振っている。あ〜、恥ずかしい…懐かしい。

新神戸駅に降り立って、恥ずかしい失敗を一つ思い出した。仕事が終わり疲れ果てていた私は、新幹線窓際の指定席に座り、しばらくして、強烈な睡魔に襲われ居眠りをした。

こくりこくりと、気持ちよく頭を下げたり上げたり繰り返していたわけなのだが、頭の重量が途中からなくなり、左に傾いた頭は何か柔らかなモノに持たれかかり、イイ感じで、安定していた。

「次の停車駅は広島」車内アナウンスで目覚めたた私。目の前にグレーのスーツの腕。見ず知らずの男性の肩をお借りして眠りこけていたのだ。新神戸駅から約1時間30分くらいすっかり熟睡してしまった。

「す、すみませんでした」席を立ち上がり、恥ずかしさと、気まずさ、申し訳なさとで、変な汗が吹き出した。
「いやいや、とてもお疲れのご様子だったので」
人の良さそうな紳士は手を横に振りながら、優しげに微笑んだ。

今のご時世では考えられない寛容な対応とお言葉。1時間30分近く、赤の他人に肩を貸して下さったのだ。今思い出してもすみません、失礼しました!の気持ちでいっぱいになる。

久しぶりの神戸。私の思う神戸は街中に行かなくても、住宅街の中にもポンと素敵なお店やレストランがあり、坂道があり、緑がある。
異国情緒が入り混じって海の匂いもする。どこかへ船に乗って行きたくなる。そんな街。

偶然見つけた洋食の店「なんじゃろ」もそんな景色に溶け込んだところにある。

神戸牛のステーキや北野で食べる素敵なレストランのフレンチは間違いなく美味しい。南京町の豚まん、何度食べても食べたい。でも「なんじゃろ」は私をとても幸せな気持ちにしてくれた。

お店のオーナーシェフらしきご主人がお店に入ってから、ニコニコずっと笑顔なのだ。ランチタイムの混み合う時間帯、満席にも関わらず、イライラやピリピリ感は皆無で、カウンターごしに見える厨房はいい匂いと共に、とてもいい空気が漂っている。

BGMもクセ強めのアップテンポな曲で、一度聴いたら忘れられない、しばらく耳に残る音楽。

正直、お店は高級感もなければ、椅子やテーブルも年季が入っていて、お世辞にも綺麗ではない。
だけど老舗店ならではの居心地のいい、安定感が漂っている。

空気感がいいのだ。私はこの空気感は何をするにしてもとてもとても大事に思う。 
美味しい迄の大切な時間。
こんなお店で作られるお料理はきっと美味しいに間違ない。

例えば非の打ち所がない端正な顔立ち、完璧なスタイルのイケメンと、容姿は普通だが、その人がいるだけで何か、ふんわりと満たされていく、不思議な魅力を放つ空気をまとう雰囲気イケメン。私は絶対後者がいい。

そして私はたぶんお店の推しであろう、デラックス(ライス、味噌汁付き)1550円を注文した。 

デラックス

エビフライにハンバーグ。付け合わせはシャキシャキキャベツの千切りにポテトサラダ。
大人のお子様ランチだ。
サクサクのエビフライにタルタルソースが絡まって、食感がたまらない。口福だ。優しい味のデミグラスソースに、とろとろの卵がのっている。 
卵とハンバーグを口に含むと、ジューシーな肉汁がいっぱいに広がる。

この幸せ感はほんとに「なんじゃろ?」だった。美味しいものを食べてもらいたい、ハートが伝わったデラックスランチだった。




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