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2020有馬記念観戦記~円熟期真っ只中~

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ファン投票第1位で単勝オッズも1番人気、名実ともに主役となったクロノジェネシスが鮮やかな走りで春秋グランプリ制覇を成し遂げた。

語弊があることを承知で誤解を恐れずに、いやどう思われてもいいやと開き直って言えば今年の有馬記念は間違いなく敗者復活戦であった。秋の天皇賞2.3着馬が人気を二分し、頂上決戦として話題をさらったジャパンカップの上位3頭は不在。考え得る最高のメンバーがそろったとはとても言えず、今年は香港に回る馬が少なくてまだよかったなぁ、でもサンデーレーシングの公開PV撮影みたいななるんだろうなぁと思っていた。ただ、反面レースとしては面白いものになりそうで、意外と見ごたえのあるレースになるのではないかという気持ちもあった。終わってみての感想は間違いなく後者のみであり、個人的にはめちゃくちゃ興奮した昨年より見ごたえのある一戦であった。

戦前頂上決戦とは言えないこのレースに見ごたえを期待する面もあったのはなぜか言われればやはりメンバー構成だろう。条件ベストとも思えるクロノジェネシスのグランプリ連覇への期待、バビットとキセキの外連味のない先手争いへの高揚感、ラストランのラッキーライラック(言わばラララララ)がその名前の通り5枚目の花びらを咲かせてーそうなっていれば5人の騎手で5つのG1制覇だったー1年に4頭のG13勝馬が誕生するのかという記録への注目、断腸の思いで決断を下したカレンブーケドール陣営の悲願などそれぞれにドラマ性のある多種多様な顔ぶれがそろった。念のために申し上げておくと今年の出走メンバーのレベルは決して低くない、なんというかちょっと今の競馬会はまるでマンガの世界のように化け物が多すぎるのである。競馬史に残る超一流馬が乱立しており、一流馬が霞んで見えてしまう特異な時期だと思う。そんな中今年の有馬記念は一流馬たちが、自分たちも超一流に近い存在であることを体現して見せた一戦に感じられた。


レースはキセキの出遅れで始まった。モズベッロも遅れた一方1番ゲートからバビットは一目散にダッシュ利かせて単騎先頭、レースの主導権を握った。続いたのはオーソリティで3才勢が前に位置を取る、一昨年の優勝馬ブラストワンピースも東のリーディングジョッキーを背に先行策。人気どころでは最初のスタンド前で押し上げたフィエールマンは好位置を確保した一方でクロノジェネシスは悠然と後方に構えた。フィエールマンの少々後ろにカレンブーケドールと思ったより前に位置したワールドプレミアが続き、ラッキーライラックはクロノジェネシスの少し前中団後方からレースを進めた。

入りは決して遅くなかったが、道中が緩んで500から1500は63秒5もかかったのに最後の1000は60秒7、ラスト5ハロンの持続力勝負となった。そうなると苦しかったのは有力馬の中で最も前に位置したフィエールマン。最終コーナーでもう先頭を伺う位置からカレンブーケドールを突き離したところでクロノジェネシスの追撃にギブアップ。12月になって急にルメール騎手は内をついて惜敗する役回りに変わってしまった。力強く抜け出したクロノジェネシスに唯一迫ったのが道中死んだふりから直線一気で追い込んだサラキア、ただクビまで追い詰めたところでゴール板。もはや見慣れた牝馬ワンツーとなった。

今回も先に2着以下の馬についてまとめておく。

サラキア・・ここがラストランになるのだろうか、エリザベス女王杯に続いて猛追しての2着。やや展開が向いたとはいえここにきての充実ぶりは目を見張るものがある。じっと我慢した松山騎手の好騎乗も光った。

フィエールマン・・ルメール騎手としては去年フィエールマンにやられたことを今年はカレンにやられた感じ。奇しくもどちらも池添騎手。不向きな馬場と展開でも寸前まで踏ん張ったのは底力の証、ジャスティスが勝った年のエアグルーヴみたいなレースだった。負けてなお強し。

ラッキーライラック・・理想的な競馬で力は完全に出し切った。4着とはいえ3着からは2馬身半、この距離での総合力の差が出た。産駒にも期待したい。

ワールドプレミア・・道中位置を取れていたわりに勝負所で置かれて厳しくなった。今日に関してははじめから控えておいたほうがチャンスがあっただろう。直線も伸びてなくはないが。

カレンブーケドール・・フィエールマンと真っ向勝負して届かなかった。2戦続けて強い相手に力勝負を挑んで跳ね返されている、勝ち切るには少々紛れが必要だろう。

オーソリティ・・本命を打ったので書いておく。番手からの競馬で展開は確かにきつかったが結局バビットも交わせておらず完全に力負け。府中巧者の可能性も否めずつくづつダービー前の怪我が悔やまれる。


勝ったクロノジェネシスがこれまで馬券内を外したのはたったの一度だけ。それも休み明けでのG1初制覇直後、なおかつ微妙に進路に苦労にした昨年のエリザベス女王杯でコンマ3秒負けただけ。そして一番人気では一度も負けていない。しかし、クラシック戦線でもどかしい惜敗が続いたせいかどことなく善戦タイプのイメージを持っているファンが多いのではないだろうか。改めてこの馬の馬柱を見て驚いたが京都記念を挟んだだけでここ9走中8戦がG1である、高いレベルへの挑戦は嘘をつかない。つめの甘かった少女はいつの間にかーデビュー以降すべてのレースでその手綱を取る相棒と共にー逞しい女傑へと進化を遂げており、ジェネシス(創世記)という名前とは裏腹にとっくに全盛期を迎えていた。

最後にはなるが、香港最高峰のレース香港カップと国内最後のドリームレース有馬記念、この2つをたった2週間で制した偉大なる母クロノロジストにも心から敬意を表する。


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