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2021エリザベス女王杯観戦記~like a cosmos~

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書き出しに迷った時は直球で行くと決めている。

皆さんはアドマイヤコスモスを覚えているだろうか?
私はあの馬が大好きだった、そして2012年中山金杯の事をきっと死ぬまで忘れないだろう。

G1を幾度も制したケイティブレイブを差し置いてこう呼ぶ事には賛否が分かれるだろうしたらればの話に結論がないことは百も承知の上で敢えて述べるとアドマイヤコスモスはアドマイヤマックスの最高傑作であり無事であればG1にも手が届いた悲運の天才であった。
紆余曲折を経ながらも7連勝で重賞まで制しながら志半ばでターフとこの世を去った稀代の素質馬の事をたまにでも思い出して頂ければ嬉しい限りだ。

はてさて、それがどう今回のエリザベス女王杯とつながるのか?

アカイイトとアドマイヤコスモスをつなぐ糸は生産者の辻牧場である。
2頭は110年ほども前に開業した老舗中の老舗辻牧場に生を受けた。
同牧場はアドマイヤフジ、アドマイヤデウス、アンビシャス、スズカデヴィアス、インターライナー、ランドヒリュウなどなど数々の名馬、個性派を生み出した名門であるが長く大きなタイトルからは遠ざかっていた。

今回調べるまで、某巨大サイトに調べ物を頼りきりの私は恥ずかしながら
辻牧場はこれまでG1を制したことがないと思っていたが実際は1977年にインターグロリアで桜花賞などを制している。また、それ以前にもタイトルホルダー(なお今年の菊花賞馬は岡田スタッド)を輩出しているがいずれにしても最後の戴冠は44年前である。

それ以降の44年間辻牧場は決して低迷していたわけではない。
上記の通りアドマイヤラピスの一族は大きな活躍を見せたし、他にも多くの実力馬たちを生み出した。実際アドマイヤコスモスが無事であれば大仕事をしていた可能性は高いし、もっと言えばアンビシャスが制した産経大阪杯はその翌年にはG1に格上げされている。
しかし事実として、名門辻牧場は長く長くG1勝利から遠ざかっていた。
そして遂に今回アカイイトが長い沈黙にピリオドを打って見せた。

パワー型である同馬にとって間違いなくプラスであった阪神開催。
人気の中心レイパパレが気負って前を追ったことにより切れ味+しぶとさを問われた展開。
やや強気の進出も結果的に一番伸びる場所を通れる形になった複雑な馬場状態。

すべてのピースがかみ合った結果、伏兵以上の前評判はなかったアカイイトはまるで本命馬のように堂々ともはやあっさりと突き抜けて見せた。

馬の激走はもちろん、鞍上幸英明のエスコートも見逃せない。
差しタイプとはいえキレよりはばてない長所を生かした攻めた仕掛けはとてもテン乗りとは思えなかった。
岡オーナーが初めて知り合った騎手が幸騎手だったそうでみゆぴーと呼ばれているらしい。
気心知れたオーナーとヨカヨカの分まで喜びを分かち合えただろうか。

キズナ産駒はこれがG1初制覇、15個目の産駒重賞勝利で遂に手が届いた見事なワンツー決着。3着には母に続いてクラヴェルが滑り込み、前走でアカイイトに決め手を注入した横山典弘も好騎乗。そしてクラヴェルはエピファネイアの産駒、そうキズナとは2013年のダービーでしのぎを削ったライバル同士。いきなりデアリングタクト、エフフォーリアを生み出した天才肌エピファネイアとの戦いは父としても続いていきそうだ。

人気馬がそれぞれに不安も抱え混戦模様。
混合戦で善戦してきた馬、潜在能力の高い年少馬、この一戦に賭ける適性の高い馬。そういう馬たちがしのぎを削り終わってみれば大波乱。ひさしぶりにらしいエリ女を見た気がする。

幸騎手が生まれたのは1976年、辻牧場が最後にG1を制したのは1977年。
アカイイトが生まれたのは2017年4月、アンビシャスが連覇と共にG1獲りに挑み敗れた大阪杯のわずか2週間後。

ヨカヨカと笑って泣いたであろう幸騎手と岡オーナー。
コスモスで見た夢を忘れなかったであろう辻牧場とアカイイト。

競馬界にはたくさんの深い絆とすれ違う夢と希望と失意が複雑に交差する。
酸いも甘いも知り尽くした名門に秋の大輪が咲き誇った。アカイイトおめでとう、そして感動をありがとう。


拝啓 アドマイヤコスモス号
辻牧場にやっとやっと朗報が届きました、見てくれましたか?
満開でしたね、ピンクじゃなくてアカでしたけど。でもピンクの帽子もとても誇らしげでまるで秋桜のようでした。

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