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まつもと泉追悼イラスト集『金色のミラージュ』が発売中

とらのあなで発売された『まつもと泉追悼イラスト集 金色のミラージュ』を購入することができた。ちょうどネットで発売されたことを偶然知り、慌ててとらのあなに駆けつけると、同人誌のコーナーに大量に平積みされていた。このボリュームと内容で1300円(税抜き)は安すぎるくらいだ。

漫画家のまつもと泉先生が亡くなられたのは昨年10月6日のことで、かねてから脳脊髄液減少症を患い、長く闘病されていることは知っていたが、61歳というあまりにも早い旅立ちは大きなショックだった。

先生の死が公になるとともに、yahooのトレンドでは「まつもと泉」「きまぐれオレンジロード」が1位と2位を独占した。

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『きまぐれオレンジ☆ロード』(以下『KOR』)の連載が終了してから30年以上は経過しているが、今なお途方もない数のファン=「同士」がいることに感慨深いものが感じられた。また多くの漫画家や芸能人がtwitterで『KOR』のファンであることを公言して追悼のツイートをアップしており、多くの人に今なお深く愛されている作品であることが改めて確認された。

『KOR』がリアルタイムでアニメで放映されていた当時は、まだ小学校3年生か4年生くらいで、家にコミックはなかったが、とてもお気に入りで大好きな作品として心に残った。本格的にのめり込んだのは、アニメが夕方に再放送されていた中学2年生で、同じ頃、愛蔵版(ハードカバー版)全10巻が出版されたこともあり、それを機に一冊ずつ購入していった。とはいえ、お色気たっぷりの表紙の本を購入するのは、非常にハードルが高かったものだ。まだ全巻コンプリートする前に、友人宅でジャンプコミック版最終巻をフライングして読み、深く物語に引き込まれた。そのため先に愛蔵版の最終刊(10巻)を購入したため、いささか順番が逆転したかたちとなった。アニメ版のラストが、愛蔵版9巻に収録されている、恭介が過去にタイムスリップして子供のまどかに赤い麦わら帽子を買ってあげるエピソードであり、連載第1話が大きな伏線になっていることもわかって、その物語性にいたく感動したものだ。

2010年には東京青山で開催された原画展にも行ってきた。まつもと泉先生の姿は、アニメ関係のイベントにYouTubeで出演されており、その姿は元気そのものであった。キーコーヒーのウェブサイトに新作の書き下ろし漫画が公開されており、その画力はまだまだ衰えていなかった。自身の病気を題材にした闘病漫画の連載に向けて準備中との情報が先生の公式ウェブサイトでアップされていたので、いつ出版されるのかと心待ちしていたのだが、残念ながら病気から回復することなく旅立たれてしまった。

『KOR』の出現は、少年漫画の世界に全く新しい絵柄とラブコメという文体を創出し、その後の漫画史に大きな潮流を産んだ。まだ「ツンデレ」とか「萌え」といった概念すら存在しない時代のことである。また、ジャンプ史上最もかわいいヒロインランキングにおいて、鮎川まどかは令和3年にして今なお1位に君臨している。このことからも、その影響の強さがうかがい知ることができる。その功績は、果てしなく大きい。

『金色のミラージュ』には「え?この人まで!」というくらい、実に多くのクリエイターがイラストを寄稿しており、まつもと泉先生が後世に与えた影響の大きさに改めて感嘆の念を抱かずにはいられない。しかしながら、本家であるまつもと泉先生が描く鮎川まどか以上にかわいく、魅力的なまどかは、もうこの世には決して産み出されることはない、という残酷な事実も突きつけられてしまった。だが、それは無い物ねだりというものであろう。

若い未読の読者は、どうか、まつもと泉先生の作品に手を伸ばして欲しい。そして、反発はあるかもしれないが、アニメのリメイクにも期待したい。

まつもと泉先生、すばらしい感動をありがとうございました。あちらの世界で、鶴ひろみさんと再会できることを願ってます。
最後に、まつもと泉先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

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