"紙の向こう側"にいる人の存在と縁起〜ハンドシュレッダーによる裁断を通して〜
「サクッ…サクッ…サクッ…」
毎日のようにポストに投函されるチラシや広告。それらの大半は残念ながら手に取っても縁がありません。
「これは裁断してしまっていいのかな…」
ご縁のなかった紙類の一つひとつをハンドシュレッダーで裁断していると、作成主に申し訳ない気持ちが湧きあがる紙もあれば、そうでない紙もあります。
今の時代、電動シュレッダーにかければ紙を大量に短時間で簡単に裁断できますが、あえてハンドシュレッダーを使うと、時間はかかるものの裁断時の振動が身体感覚として蓄積されてゆき、紙の感触や質感に対する感受性が高まってゆくのを感じます。一つひとつの紙に込められた想い、縁がなかったことへの虚しさを供養しているような感覚もあるかもしれません。
紙の質感、記された内容。その一つひとつの裏側に物語があります。限られた紙面にありったけの文字情報を詰め込んだものもあれば、言葉を選び抜いて紙面に適度な余白やゆとりを持たせているものも。
「じっくりと手に取って眺める」
こうした体験は今や希少でありますが、「向こう側」にいる人の存在に対する想像力を育むことにつながっているのかもしれません。
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