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コロナ禍でウィッグ市場とピアに起こったこと、そのトンネルを抜けるまでのメモ。

経営者をやっていて勇気のいる瞬間の一つ、大きい値上げ。今回ウィッグを10000−15000円値上げすることになりました。ピア・ディピアともにお客様のお財布の幅をよく知る、同じ生活者として、値上げは難しい判断です。そして正当な理由があります。そして、学びもありました。今回値上げをすることになった判断基準と背景ををここに書いておきます。

①コロナ禍で起こったこと

グローバル調達の脆弱性を一気に突かれた2年間でした。ピアは商品の製造コストを常識的な範囲で下げて(現場をいじめない、生産者を追い込まない)、差益を稼いで、患者さんの話を聞く場所を維持してきました。じわじわと生産コストは上がってきましたが、上代の10%以内の上下で、じわじわと上がるけれど、技術や素材のイノベーションでその分が吸収できる、日本側も技術がついて効率化できる、という現場の成長に支えられて利益を確保してきました。

しかし、コロナがやってきて、まず中国の工場が操業を停止、部品の発注先の北朝鮮、フィリピン、ベトナム、バングラディシュなどからの物流がストップし、ウィッグが完全に作れなくなりました。ゼロ生産です。幸い社内に半年分くらいの在庫を抱えている時期だったので、それでなんとか現場がやりくりし、お客さまにも工夫をしていただきながら事業を継続。その一方で、取引先の中国工場の人たちが一緒に市場に流通している規格品を探し回ってくれました。アリババなどにウィッグや帽子はたくさん出品されています。しかし、品質は正直なところ写真ではわかりません。髪の毛の品質、植え方の技術、生地の組み合わせ等、日本人はとても厳しい客層で、正直いって自分が日本でアリババを見たり工場づてで連絡を取り合うだけでは商品の品質管理はできません。それを助けてくれた中国の工場のみんなの努力もあって、なんとか安定的にウィッグを入荷できるようになったのは、コロナの影響が出始めた2020年1月から1年以上たってからでした。お金も大変ですが、現場がとても大変でした。それをなんとかお客さまとの対話を続けながらやりくりしてくれた現場の柴田・近藤・千明・小出さんたちには感謝しかありません。現在やっと7割くらいのオーダー内容に応えられる様になりましたが、まだ3割位の特殊なお客さまの商品は保留になっています。これはあと半年くらいの間に解消する予定です。

②お金のこと

正直なところ、コロナの影響が出始めた2020年1月から、作って販売しても利益ゼロ、もしくはマイナスの状態がつづきました。コロナ関連融資と貯蓄と私の役員報酬ゼロで、とにかく全員のお給料の遅延減額なくなんとかトンネルを抜けられそうなところまできました。コロナの補助金をもらうほどは売上は落ちないんです、お客さまの数は減らないから売上は落ちない。しかし利益率がマイナスに近いところまでいっていたのですが、補助金は売上が落ちたところに補填されたものなので、私たちの事業には相当するものが有りませんでした。同じように大変だったお店はたくさんあると思います。しかし、私は楽天的でリアリストなので、計算すると3年位はなんとかなるかな、と思っていたので、影響が2年で終わりそうで正直ごきげんです。これからコロナ関連融資でお借りしたお金をコツコツ返します。

③値上げのこと

このような背景で調達価格はピーク時よりも少し下がったところで落ち着きました。しかし、今後、以前の価格帯に戻ることは考えにくいですし、資材、輸送費、国内コスト、すべての価格が階段を一歩登ってしまいました。これらを加味して、調達価格が安定してきたこのタイミングで10000〜15000円の値上げをさせていただくことにしました。

④お客さまのためにも、チームのみんなの生活をまもる。

ピア/ディピアはウィッグを必要とする人たちの日常生活を豊かにすることを目指しています。それはずっと変わりません。しかし、それを実現するためには、ピア・ディピアで働いている人たちの生活の安心があってこそです。私は経営者なので、自己責任で、しょうがないことは多々あります。しかし、みんなのお給料が出ないのは、絶対にだめです。今回の2年間で一番不安だったのは、正直そこでした。ピアがなくなっても、お客さまには他のお店があるかもしれない。しかし、働いているみんなにはここが仕事の場で、失敗するとお給料が減ったりキャリアが止まってしまう。これがとてもプレッシャーでした。

⑤ 安心して相談できる場所の維持継続へ

リアルORバーチャルの手法はその時々で変わると思いますが、人が思いやりを持って相手の話に耳を傾け、解決方法を一緒に探して実装する場所は、これからも価値があると考えています。その人と場所を守るために、事業の幅を広げたり狭めたりしながら、これからもチームのみんなの生活を守りつつ、お客さまの日常生活を豊かにしていきます。引き続き、応援とご支援、どうぞよろしくお願いいたします。

ここでサポートしていただいた売上は、ピアの運営する美容室の備品代に使わせていただきます。