先週の日曜日、競馬場に初めて行った話。ー競馬初心者が現地で大阪杯を見て感じたレポート
※今回この記事では、競馬初心者である著者(自分)が初めて競馬場に足を向け、実際に感じたことや考えたことを振り返るレポートである。
今年に入って、競馬が盛り上がってる。
というのも、(ピンと来る人にはわかると思うが)Cygames(以下、サイゲ)が送るコンテンツ『ウマ娘 プリティダービー』(以下、ウマ娘)が本格的に始動したからだ。
殊更説明することでもないが、この『ウマ娘』は、2016年にサイゲの新規IPプロジェクトとして、「実在する競走馬を擬人化する」というテーマで公にブチ上げられた。しかし、様々な問題が重なりに重なり、ゲームリリースが延長され続けてしまう。「早く遊びたい」というファンの熱烈な声が上がる一方で、延長されている間に最初の総合プロデューサーがサイゲを退職するなど、一時期は「死産したのでは?」と噂されたほどの有様であった。
そんなゲームが満を持して、今年の2月24日にリリースされた。これに先立ち、アニメの2期も放映され、そのクオリティの高さや実際の競馬に対する真摯なリスペクトとその内容の良さで反響を呼び、競馬界隈のみならず、様々な界隈のオタクや有名人を競馬の坩堝に叩き落したのである。
そのため、今まで競馬を見てこなかった層が「競馬を見てみよう」「競馬に興味を持った」などと、競馬に対して関心を抱き始めている。
それを示すように、アプリリリース後となる2月28日から3月28日までに開催された重賞レースの売り上げは、17レース全てで売り上げ増となっていた。勿論、この増加には、『ウマ娘』効果だけではなく、コロナ禍による巣ごもりとレジャーなど娯楽の相対的減少、手軽なネット投票の導入など様々な要因が想定されよう。しかし、『ウマ娘』が初動月+3月の間で約100億以上も売り上げて【※1】、莫大な金額が動いている点から推測されるように、競馬に入るきっかけとして『ウマ娘』が果たしている役割は無視できないといえる。
【※1(Game-iセルラン分析を参照)】
流石オタク。一度火が付いたら止まらない。
さて、ここで『ウマ娘』の紹介をしているこんな自分も、競馬にハマりはじめたのはついここ4ヶ月間の事である。自分の場合は、元々から競馬に興味があり、昨年末の有馬記念から本格的に馬券を買い始めた身。そして『ウマ娘』のアニメを見て一気にその興味が加速し、現実のレースをYoutubeで見るうちにハマった人間だ。
勿論、競馬に関してはまだまだ初心者。
その事を念頭に、話を進めていこうと思う。
先週の3月28日に中京競馬場で、春のGⅠ戦線の幕開けとなる高松宮記念が開催された。そして4月4日、阪神競馬場では大阪杯が開催された。今年の大阪杯は、無敗のクラシック3冠馬・コントレイルと、マイルの快速女王馬・グランアレグリア、そしてコントレイルのライバル・サリオス、ここまで全勝無敗のレイパパレなどが会する注目の一戦となった。
特に今回は『ウマ娘』から入った層でも、これほどの当代を代表するスターホース一同に相まみえるのだがら否応なく話題にはなるわけで、また一方で、根からの競馬民も「ぜひ見てほしい」だとか「こっち(競馬観戦)は楽しぞ…」と、ライト層を取り込まんとせんとする様相がTwitterのTLで散見された。
当然ながら、競馬歴4ヶ月の初心者である自分でも、
「こんなレースはそう滅多に見れるものじゃない!」と感じた。こればかりは是が非でも現地で観戦したい――その気持ちが抑えられなくり、ついには競馬を良く知る競馬上級者の友人Aと、負けて競馬をやめる宣言をしたハズの競馬初心者の友人Bを誘い、現地観覧の抽選に応募することにした。
結果、Bが抽選にて一発で通り、自分とAは落選。キャンセル席の先着販売に望みを託すこととなった。ただ正直、GⅠ開催日である上に、大きな注目を浴びていたレースだったので、
「大阪杯、これは現地観戦無理だろうなぁ…」と、落選した段階で半ば諦めていた。
しかし、幸いにも自分はキャンセル席の争奪戦に勝利して購入に成功。一方Aは、販売開始時間に寝坊したため、販売最終日まで粘る羽目になり、購入に失敗。結局、自分とBの2名で阪神競馬場に向かうことになったのである。
いくら初心者とは言えども、流石に競馬場デビューがこの注目される大阪杯となればくテンションはあり得ないほどアガり、翌日の遠足を楽しみにする子供が如く、前日の夜はほとんど眠れなかった。そのくらい、競馬場で本物のレースが見れることにワクワクしていた。
そして、レース当日。
Bと共に阪神競馬場に向かうと、次第に大きな建物が見えてきた。
生阪神競馬場の見た第一印象
(おぉ、おぉーー!これが阪神競馬場…!デケェー!!!)
そんな感想をにじませつつ、阪神競馬場のスケールに圧倒されながら、受付口に直行。そこで手続きを済ませると、入場券と紙のリストバンドを渡された。
そして、友人Bより一足先に場内に足を踏み入れ、目の前に広がる光景に釘付けになった。
いやぁ、本当にデカい。広い。そして綺麗。
これは確かに感動するわ。(語彙力)
(ここで豆知識だが、日本の競馬場は収容人数の観点から見ると世界でも指折りに位置するとされている。東京競馬場が約19万人以上と言われており、阪神競馬場は約9万人が収容できるとされている。世界で一番大きい競技場とされている北朝鮮の綾羅島メーデー・スタジアムは15万人、日本のスポーツ競技場で一番大きい新国立競技場ですら8万人とされている点から見ても、日本の競馬場がどれだけデカいのかが分かろう)
とにもかくにも、競馬場のスケールに圧倒される。まるでテーマパークに来たような感覚であり、見渡す限りどこまでも広がる仁川のターフに写真を撮る手が止まらなかった。それに、満開の桜がターフとマッチして美しく映える。
今まで見たことがない世界が、確かに広がっていた。
また、巨大なターフビジョンには過去のレース映像や、今日の大阪杯に向けての紹介VTRがまるで映画の様に流れるなど、競馬場の何もかもが、自分が想像していた何倍ものスケールで構成されていることを肌で感じた。
さて、そうしている内に、いよいよお待ちかねのレースがスタート。パドックには競走馬たちが入場してくる。
これもまた感動。勿論、予想に向けて状態をチェックしたりと色々考えを巡らせているのだが、今から競わんとする馬たちのカッコ良さたるや、その姿に思わずシビれてしまいそうだった。
そして、騎乗合図である「止まーれ!」の号令がかかり、いよいよ本馬場入場となる。最初のレースはダートの1800ⅿ。そのため、芝から内側のスタンド正面からの発走だ。
「せっかくだし、外で見よう」と、自分は友人Bを連れて外の空いているスペースで観戦することにした。外で予想を組み立てながら待つ。そうすると、スターティング・ゲートと馬たちが自分たちがいる場所から遠い位置でゲート入りを待っているのが見えた。やがて、スターター壇上に上がり、スタートのファンファーレが場内に響く。
思わず、感情が高鳴る。
ファンファーレが鳴り終わると、馬が順番にゲートに収まりつつ、ラジオNIKKEIのキャスターによる場内実況がスタートする。最後に全馬ゲートインが終了し、いよいよ出走時間。
ガコンッ、という音と共に馬が一斉に走り出した。砂を巻き上げ、ドドドドッと鈍い音を立てながら走ってくる。そしてあっという間に自分たちの目の前を駆け抜けていった。
凄く当たり前のことなのだが、とにかく馬は速かった。
やはり、ネット中継や動画などで見る感じとは全く異なり、音、速度、空気、そして緊張感に至るありとあらゆるものがケタ違いだった。
直線から最初のコーナへ、そして向こう正面の直線に差し掛かって馬群は点のように小さくなる。ターフビジョンでレースの様子はわかるが、やはり実際に走っている姿は圧巻の一言である。
そうこう思っている間に馬群は第4コーナーを曲がり、直線に入ってくる。すると、観衆から「差せーッ!!!」、「いけぇー!!!」と、怒号のような歓声が飛んでくる。
「おおぁ、これが競馬場の歓声か。ちょっと怖ぇけど、すげぇな」と感じた。
今はコロナ禍のため、出来るだけ大声を発するのはあまり歓迎されたものではない。が、つい大声が出でしまうのもいささか理解できた。
勿論、金を賭けている以上、勝ってもらわなければならないという強い意志から出ているのだろう。だが、目の前を駆けている馬たちの姿を見ていると、そんなの関係なしに大声が出てしまいそうに思えたのである。
それくらい、一生懸命走る馬の姿に自分は見とれて、応援していた。
その束の間、先頭の馬が一番にゴール版に駆け込んでいった。
こうして初めての生レース観戦が終わった。
その後、Bと一緒に競馬場で売っていた焼きそばをすすりながら、レースの予想をして賭けてゆく。Bとあーでもないこーでもないと言い合ったり、Twitterの知り合いと予想のリプをやり取りしながら楽しんだりと、刻一刻と大阪杯の時間に向けて時間を潰してゆく。
あくまで、本日の一番の目的は大阪杯の観戦。
次第に、雨は強くなり第9レースの段階では雨、馬場は重の発表に。実際、現地にいた身としては、若干の風を伴っており、雨もまっすぐ降るというよりはやや横からくると言った具合であったと記憶している。
9Rが終わると、「パッドクで大阪杯のメンツの様子を見ておきたい」とのことですぐに移動。すると、パドックには10Rが発走する前から多くの人だかりができている。
やはり、皆この注目の1戦はどうしても見ておきたいという気持ちは一緒のようだった。
いやぁ、本当に人が多い。密of密。都知事が見たら流石にキレそうなレベルで人が集まっている。
流石に今年初の阪神でのGⅠ、そして春の重賞戦線の開幕戦、なにより大注目の一戦とだけあるなぁと、ただただ痛感した。
その視線の先には、グランアレグリア、サリオス、レイパパレ、ワグネリアンなど…当代を代表する一流現役馬の本物が周回している。
そこに…
俺の愛馬が!(うまぴょい伝説)
あぁ!推しがいる!!推しが目の前にいる!!!あぁっ!(語彙力)
実はコントレイルを凄い推している大のコントレイルファンボ。何故、競馬歴4ヶ月の自分がファンボになったのか、これを話し始めると尽きない気がするここでは割愛させてもうう。が、にしてもだ。
やはり画面越しで見る姿と、実際にこうやって見る姿では全く違う。
特にコントレイルは前走があの伝説のジャパンカップで、約4~5ヶ月ぶり休養明け、そして古馬(4歳以上)になってから初のレースである。
馬体重は+16kg、馬格も全体的大きくなり、筋肉質になった。歩様も落ち着いており、周りを気にする様子をあまり見せない。
成長した姿が形としてはっきりとみて取れた。
このあたり、本当に感じることはパドックの重要性である。
中継でもパドック解説は重要な要素であり、当日の馬の状態を理解するには欠かせない大きな部分だ。ただ、どうしても中継では映せる部分は限られており、情報として拾い切れない部分が出てくる。
しかし、生で見るパドックでは、本馬場入場のタイミングまでしっかりと見ることができる。ここで得られる情報量の差はあまりにも大きかった。
特に、今回のパドックで1番大きな情報だなと思った部分が1つある。
それが、雨だった。
先述したとおり、9Rの段階で雨量が増え、足元が濡れるぐらいに降っていた。11Rのパドック入場時間でもそれは気になるぐらい降っており、正直「大丈夫かな…」と心配していた。
が、それが嫌な形でパドックに現れる。
騎乗合図のタイミング。コントレイルの方に視線を向けると、若干ではあるが、首を振ってイラつくような仕草を見せたのだ。
(これは…まさかチャカついてる...?)
少し不安な気持ちが心をよぎる。
しかし、コントレイルは無敗三冠馬。いざレースとなれば、きっと持ち味の走りを見せてくれるとそうも思って、不安な気持ちを押し殺した。
そして、パドックが周回が終わり、人盛りは各々のポジションに向かう。
友人Bは雨が降ってカメラが濡れるのを気にしため、自分が予約した席で観戦するとのこと。で、自分とは別れて行動することに。一方の自分はやはりこの1戦はどうしても外で見たい気持ちが抑えられず、外で見ることにした。
本馬場が終わり、各馬がターフに散っていく。
返し馬の時間だ。
写真では分かり難いが、足元の濡れ具合から見てもらえるように、かなりの雨が降っている。
外の観戦広場では、それぞれが発走時刻になるのを心待ちにしていた。
すると、ターフビジョンに発走前に放送されるPVが流れ始めた。
いやぁ!あり得んカッコいい!!!!!!
ちょくちょく、youtubeで発走前の様子を見ており、GⅠレースにはこうした特別PVが用意されているのは知っていたが、こうやって生で本物を見れることに否応にでもテンションが上がった。
そしてその興奮冷めぬまま、待っているとスターターが壇上に向かっている。
そうGⅠファンファーレの時間だ。
「ぱぱっぱぱーぱらっぱーぱぱぱぱーっぱ、ぱぱらっぱぱぱー…」
うぉぉおぉぉぉおおおおおお!!!!これが関西GⅠ…!!!!
とにもかくにも感動がやばい。気持ちが昂りすぎて涙が出そうになった。
大阪杯は毎年、大阪音楽大学による生ファンファーレで幕を開ける。が、今年は残念ながらあいにくの雨模様とコロナ対策の観点からCD音源だった。確かに残念だったのだが、それでも、ファンファーレを現地で聴けたことにすごい感動した。
各馬ゲートイン。発走の時刻を待つ。
やがて雨音だけしか聞こえない、一種の静寂が訪れる。その後、ガコン。
火蓋は、落とされた。
スタンド正面からスタートした馬群は一気に目の前の直線を駆けていく。
レースはレイパパレが主導権を握り、あっという間に第一コーナーに差し掛かり、集団は小さな黒い点と線になっていく。
向こう正面に入ると、もはや肉眼では確認できなくなり、ターフビジョンの方へと視線を向ける。1000mを通過した段階でタイムは59秒台とビジョンには映し出される。2000ⅿでこの雨、この馬場での速度にしては速い。
しかし、そんなことを思う余裕がない程、自分の関心は1頭に集中していた。そう、コントレイルに。
コントレイルは向こう正面にいた段階で、中団のやや後方に位置していた。列が縦に伸びていたので、一瞬
(このままでは先頭を捉えられない…!)
と、不安がよぎった。
やがて第3コーナーに差し掛かると、スタンドの歓声も激しさを増す。
すると、コントレイルが一気に位置を上げてきたのだ。
自分も思わず、
「コントレイルーッ!!!行けーーー!!」
と、大きな声援を送る。
そして最後の直線。コントレイルはグングンと大外から伸びてくるが、内を先頭を走るレイパパレの背中に追いつかない。やがて残り200mを切ったあたりで、伸びなくなってしまった。
背中を捉えられないコントレイル。その後ろからはモズベッロが伸びてきて、抜き去っていく。
ゴール板を通過した時には、コントレイルは先頭から三頭目だった。
「あぁ…コントレイルぅ……」
推し馬が負けた瞬間、ショックで膝から力が抜けて、思わず倒れそうなった。ただただ、ショックだった。
回りにいる人間も悲喜こもごもの声をあげていた。結局、3強と呼ばれた3頭はレイパパレ、モズベッロの前に敗れたのだった。
レースが終わると、自分は外の観戦席から戻り、Bを呼び寄せた。ぐったりして椅子に座ったところで、初めてズボンの裾が凄い濡れていることに気付いた。それくらい、レース観戦に集中していたのだ。
友人Bと合流した後、大阪杯の感想をぶつけ合った。Bから12Rをやるかどうかを問われたが、流石に心身共に消耗しきっていたので、12Rをやらず、「お開きにしよう」ということになり、初の競馬場で過ごす1日はこうして終わった。
こうやって初めて競馬場に競馬初心者が出向いてみたわけなのだが、やはり「競馬場に行ってみないとわからないことが沢山あるな」と、つくづく痛感した。
競馬に入る以前、競馬に対して持っているイメージは「ギャンブルだから、あまりやるのは良くないな」であった。勿論、競馬はギャンブルである以上、金のしがらみが発生するため、その認識は正しいと今でも思っている。しかし、一方で足を踏み入れてみて分かった事も多いのも感じた。
特に「競馬には多くの物語が詰まっている」ということが、今回の競馬場遠征を受けて感じた感想である。
競馬は多くの人間、そしてなにより、馬無しでは成立しない。それぞれがきとんと存在し、密接に動き合うことで競馬は出来上がっている。
そうした関係の中で、多くの物語や出来事が生まれているということを強く肌で感じた1日であった。
今、『ウマ娘』の影響もあって、過去の競走馬たちのレースを見る人間が増えているという。自分の知っている人間の何人かも、youtubeで過去のレースを見たりする人がちらほらといる。
そいう形で興味を持って競馬のレースを見た人から出てくる感想はだいたいが「凄い」、「面白い」、「感動した」など前向きな内容である。
かくいう自分もその一人に近いが、持つ感想はやはり競馬は面白いということだ。
その「面白さ」を直に体験できる競馬場の凄さは正直、こうやって文字で表せられるものではないと思っている。しかし、こうやって実際に足を伸ばしてみて初めてそのスケールが大きい気付くことができた。
現在、新型コロナの影響で競馬場の入場には制限が掛かっている。2年前のレース映像を見ても競馬場には多くの観客と大歓声で溢れていた。しかし、今ではその歓声もまばらで、いまいち迫力に欠けていることは否めない。
だが、希望もある。
この文章を上奏するであろう今日(2021年4月12日)から、ようやく一般向けにワクチンの接種がスタートした。コロナ克服に向けた重要な一歩が踏み出されたと、自分は思っている。
競馬場にかつての大歓声と観客が戻ってくることはできないことは想像に難くない。長い道のりであろう。しかし、そう遠くない未来にきっと誰かたまた、一緒に競馬場で競馬を楽しむ人々の歓声で溢れかえっている未来になってほしいと願うばかりだ。
また機会があれば、ぜひ競馬場に足を伸ばしてみたい。次は阪神のみならず、府中や中山、函館など遠い場所のレースを見れたらと思う次第である。
最後にコントレイルのぬいぐるみと応援馬券の写真を添えて。
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