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水滴の行方 【詩】

マンションに着いて
傘を閉じる
石突きから雨が流れる

軽く振って水を切る
それでも落ちない雨たちは
朱に交わりたくない
水滴たち

そのまま傘立てに差し込むと
手の甲に水滴が乗ってきた
扉を開けて靴を脱ぐ間も
落ちないように必死である

手を洗おうと流水に近付けると
腕をつたって肩の上まで登ってきた
どうしても朱に交わりたくない
水滴たち

横目で気にしつつヒーターの前へ
温かいお茶も両手で持ったら
湯気に興味津々の
水滴たち

全身が温まった頃
水滴たちは消えていた
明日の予定を考えていた私より
先に行くべき道を決めたようだ

見えなくなった水滴たち
新しい姿は気に入っただろうか


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