日本には軍事的非同盟という選択もあります

        目黒真実(元日本語教師/肺腺癌ステージ4bにて在宅療養中)

 今回のウクライナ問題から導かれるもう一つの教訓があるとすれば、それはNATOや日米軍事同盟に代わる「軍事的非同盟」という選択肢もあるということではないでしょうか。その際、参考になるのがフィンランドの非同盟・中立外交だと思います。日米同盟か軍事的非同盟か、どちらが東アジアにおける平和を守る道か、真剣な議論が必要ではないでしょうか。
 フィンランドの「軍事的非同盟」中立外交の考え方を表すものとしてよく引用されるのが、アハティサーリ大統領のロンドンでの以下の演説(1995.10.18)です。

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 冷戦は世界 模の対立であって、その終焉は終わりの兆しの見えないグローバルな変化の過程を引き起こした。それは特に欧州・大西洋共同体に革命的な衝撃を与えている。今日、この共同体はますます鍵となる三つの政治体によって構成されつつある。EU、アメリカ、ロシアである。これら三つとその変容しつつある関係性に着目しようというのが私の意図である。 ・・・中略・・・ これらの政治体のあいだの関係性は三角形のようなものである。二辺はかならず三つめの辺と結びついていなければならない。今やこの三者は前向きな相互関係に向けて進むべきである。ヨーロッパにおける平和と安定、繁栄を強化するための主要な努力はみな、この基本的な事実に基づかなければならない。・・・中略・・・私は、首脳会談や他の 重要な諸機関を使った、常設の政治対話の場をEU とアメリカ、そしてロシアの間に確立しようと考えている。この対話の目的は新たなヨーロッパの安全保障構造を構築することである。
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 このフィンランドの中立外交は、決して消極的で単なる自己防衛的なものではなく、EU、アメリカ、ロシアの間に常設の政治対話の場を作ろうという、より積極的な平和を創り出す外交であり、中立外交から仲介外交を目指すものでした。実際に、コソボ紛争の仲介者となったのがアハティサーリ大統領でしたし、コソボ和平案をアメリカとロシアに受け入れさせたのも彼でした。
 私は、日本国憲法に立った立憲平和外交を考える時、このフィンランドの「軍事的非同盟」中立外交が一つのモデルとなるのではないかと思っています。米中という二つの大国に挟まれた日本とフィンランドは類似点も多く、米中、中台の間で軍事的な緊張が深まる際に、仲裁の立ち位置に立てるような日本の平和外交を構想しなければならないと思うのです。そして、この非同盟中立外交の上にこそ、尖閣問題における「棚上げー共同開発」「東アジアの経済共同体」の提案もあろうかと思っています。

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