「非ナチ化」は、ロシアのプロパガンダではありません

     目黒真実(元日本語教師/肺腺癌ステージ4bにて在宅療養中)

 ウクライナ戦争に関しては、双方のプロパガンダが飛び交う中、情報の虚実をしっかり把握しておく必要があると思い、以下の投稿をいたします。もちろん、だからと言って、ロシアのウクライナ軍事侵攻が許されるわけではありませんが、ウクライナ停戦交渉になぜ「非ナチ化」が取り上げられているかがわかると思います。

 プーチンが、「ウクライナを非ナチ化する」と宣言したとき、日本の多くの識者や国際政治学者たちがこぞってロシアのプロパガンダであると言いました。しかし実際はどうでしょうか。
 アメリカの政治専門紙である「ザ・ヒル」は、2017年に「ウクライナの極右の存在は決してクレムリンのプロパガンダではない」と題された記事で、こう警告しています。
 「西側の識者は、ウクライナにネオナチ集団は存在せず、モスクワが描いたプロパガンダの主張にすぎないという。しかし、これは悲しいことに間違いである」
 そして、ザ・ヒルの記事では、国際連合人権高等弁務官事務所とヒューマン・ライツ・ウォッチが、東部紛争でアゾフによる一般市民の拉致・監禁、拷問などの事実の告発と批判を取り上げています。またザ・ヒルは、「ネオナチ」の代表的なグループとして、「アゾフ大隊」を取り上げています。このアゾフ大隊は、2014年のウクライナの騒乱「ユーロマイダン」で頭角をあらわし、東部の親ロシア地域を攻撃する(ロシアがジェノサイドと呼ぶ)主役となっていました。そして現在では東部ウクライナ軍の中核的存在になっていると言われています。
 日本の公安調査庁もこの存在を取り上げていて、公安調査庁の2021年度版の「国際テロリズム要覧2021」に、「極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながり」と題したレポートで次のように述べていました。

 「2014年,ウクライナの親ロシア派武装勢力が,東部・ドンバスの占領を開始したことを受け,「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が「アゾフ大隊」なる部隊を結成した。同部隊は,欧米出身者を中心に白人至上主義やネオナチ思想を有する外国人戦闘員を勧誘したとされ,同部隊を含めウクライナ紛争に参加した欧米出身者は約2,000人とされる」

 このウクライナの極右・ネオナチグループは、アゾフだけではありません。「C14」というグループは、ウクライナ政府の青年スポーツ省から資金供与されて「愛国教育プロジェクト」を主催しており、そのなかで子供たちの教育訓練キャンプを行っています。

 日本での報道ではいわゆる西側に「都合の悪い情報」が隠されていますので、くれぐれも注意する必要があります。その上で、ウクライナの1日でも早い停戦のために、私たちに何ができるかを考えなければならないのだと思うのです。私は停戦のためには「ウクライナの中立かと連邦化」という提案をしましたが、おそらくそれしか道はないのではないでしょうか。以下は、そのアゾフ連隊の写真です。

「防衛者の日」の祝典で黄色の旗をもつアゾフ連隊の人たち=2020年10月14日、ウクライナ・キエフ、
Oleksandr Polonskyi/shutterstock.com

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