「民主」vs「専制」の背景には、先進国と途上国の対立の構図がある

        目黒真実(元日本語教師/肺洗顔ステージ4bにて在宅療養中)

 これまで「豊かな脱成長社会」について考えてきていたわけですが、「脱成長」とはつまるところ「脱GDP神話」ということであり、「経済よりも環境を」(持続可能性)、「GDP成長よりも安心を」(格差なき世界)という大きな歴史の流れの中で起こっているものと考えるようになっています。
 問題なのはその時の社会システムで、いわゆる代議制民主主義は残るでしょうが、自治体や地域レベルでの参加民主主義が重要な役割を果たす「民から公へ」の逆現象が起こり、社会主義社会(国有、公有、私有の混合経済)ー斎藤さんの言う脱成長コミュニズムへの移行ーを構想していることになります。参加民主主義のない社会主義は官制社会主義(旧ソ連邦etc)になるわけで、参加民主主義がとても大きなカギを握っていると考えるようになりました。大きな遠くを見つめたビションであって、私たち団塊の世代はもうこの世にいないでしょうが、人類のビジョンを描いてみようかと。
 今起こっている「民主か専制か」の対立は、突き詰めていくと先進国の論理と途上国の論理がぶつかり合っているわけで、「豊かさ」という既得権益を守ろうとする先進国世界の「民主」と、生存権・発展の権利を最優先する開発独裁を進める国々、つまり途上国世界の「専制」との対立の構図を表していていると見ることができます。
 今後、東アジアなどに続き、アフリカ、南アジアなどの国々が台頭するにつれて「専制」が拡大するのは必然で、逆に成熟した先進国世界は徐々に没落していくのも必然ではないでしょうか。つまり昇る太陽と沈む太陽の関係を今目撃しているのだと思うのです。ですから、「民主か専制か」を競うなんて愚かなことだと思うのです。世界は緩やかに公平と格差是正を求めつつあり、この世界の趨勢は誰にも止められるものではありません。考えてみれば、「豊かさ」を手にした「民主」国群は、世界人口の五分の一にすぎません。

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『参考:次に所得別に人口動態をみると、先進国の人口は、1950年の8億1300万人から2000年には11億 9300万人に増加したが、開発途上国の人口は同期間に17億700万人から48億9200万人へ急増した。 その結果、先進国の人口の割合は、1950年の32.3%から2000年には19.6%に低下し、開発途上国 の割合は67.7%から80.4%に上昇した。 (JICA発表)』

ですから、私はこの世界を「民主」と「専制」の二項対立、二元論で見るのでなく、人類史の発展が抱える矛盾として、歴史的に見た方がいいと思うのです。途上国が先進国並みの民主主義に至るには、まだまだ時間が必要なのではないでしょうか。先進国が「専制=悪」として扱えば扱うほど、途上国との対立を深めていくことになると思います。

 そして、ゆっくりのこの世界地図が変わろうとしています。先進国世界は今後人口減少に向かいます。いずれにせよ、その先進国に住む私たちにとって、参加民主主義は、検討するというよりも育てなければならないもので、その成熟なくして、持続化のな社会も格差なき世界も、脱成長コミュニズムもないわけです。政治・政策も大切ながら、地域から市民参加の民主主義を育てることもそれ以上に大切、そのように考えるに至っています。先進国の民主主義もまた、まだ発展途上にあるのではないでしょうか。


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