目黒君の宣戦布告

夜中、目が覚めてしまった俺は、そ、とベッドを抜け出す。
隣には愛しい恋人の姿。
眠る額に1つキスを落として、キッチンへ向かった。

寝室へ戻る途中、リビングの低い棚にそれは、ある。

写真立て

数カ月前までは棚の奥にしまわれていたそれは、
今は棚の上、いつもなら伏せて置かれている。
今日は俺が立てて寝室の方へ向けていた。
写真には1つの家族が満面の笑みで写っていた。
上品な貴婦人のような、大介の面影がある女性。
厳格そうだけど、瞳に優しさの溢れる紳士。
中学生だろか?はにかむ少年。
そして、幼い頃の大介、5年生の時だ、と本人が言っていた。
この頃が、家族で1番楽しかったから、何となくこの写真だけは捨てられなかった、とも。
この数年後、写真に写る少年のせいで大介の運命は大きく狂う。
写真立てをこちらに向かせると、写真立ての少年に向き合う。

ねぇ、あなたはきっと大介の事が好きだったんじゃないの?
だから、大介にあんな事をしたんでしょ?

これは、あくまでも、俺の推測でしかない。
けれど、何となく間違いないような気がしてた。

けれど、あなたは愛し方を間違えた。
無理に身体の関係を結んでも何の意味もない。
実の弟へ邪な思いを抱いてしまったあなたの苦悩は俺なんかには計り知れないだろう。
辛かったんだろうと予想は出来る。
けれど、それを大介にぶつけるのは間違ってたね。
あなたは大介に大きな心の傷をつけた。
絶対に許さないよ。
大介がどれだけ苦しんだか、
俺と大介が、ここまで来るのにどれだけの時間を要したか………。
あなたは知らないよね?

あなたの知らない大介を俺は知ってる。
大介が俺の腕の中、
どんな風に鳴くのか知らないでしょ?
どんな風に乱れるのかも、知らないよね?
いく時、どんなに艷(つや)やかで、艶(あで)やかで、艶(なま)やかで、色っぽく綺麗か、知らない。
まぁ、俺だけが知ってれば良いんだけど、
でも、あなたには見せてあげる。
俺と大介が愛し合う所を見せてあげるよ。
そこで、指でもくわえながら見てると良い。
悔しいよね?腸煮え返る?
でも、やめてあげないよ。
あなたが大介にした事を思えば可愛いものだよ。
そこで、悔しがっててよ。
そして、いつか大介があなたと同じ所へいく時に、もしあなたを許すと言えば許してあげても良い。

これは、時々俺がしてる事。
どうしても、大介のお兄さんへの怒りが湧いてしまう。
そんな時、こうして、写真の人に心のなかで宣戦布告をする。
そして、少し溜飲を下げるのだ。

カチャリ

そんな俺の思考を破る音。
大介が、寝室から出てくる。
「起きたの?」
うん連がいなかったから、
こんな、可愛い事を言う人を手放すなんて本当にバカな人だと思う。
「お水飲んできたら?
喉乾いたでしょ?」
そうする、とキッチンへ向かう背中を見送る。
戻って来た、恋人の肩を抱き寝室へ向かう途中、写真立ての中、
恋人を苦しめた人の顔が悔しさに歪んでいるように見えて、また少しだけ溜飲を下げるのだった。


あとがき

めめさんの独白ですかね
WのMVで見せた、めめさんのニヤリ顔が忘れられず(笑)
あ、いつか黑めめさん書きたい、と思い今に至ります(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?