Happy Anniversary

《大介》

それは、偶然だった。
ネットサーフィンをしていた時の事だった。
何でそんなサイトに辿り着いたのかもわからない。
ただ、そのサイトに掲載されていた、それ、
漆黒に耀く、それ、は
恋人の、深い瞳の色を思い起こさせた。

「きれい………」

これを身につけていれば、仕事が忙しく、お互いにすれ違ったりした時でも連を感じていられるだろうか?
けれど、こんな物を買ったら重くならないだろうか?


《連》

それは、偶然だった。
街の喧騒の中、とあるお店のShowcaseに目を向けた時だった。
何故、そのお店に目がいったのかわからない。
けれど、Showcaseの中、光を放つ、それ、
眩く光る、それ、は、
恋人の明るい瞳の色を思い起こさせた。

「可愛いな………」

これを身につけていれば、会いたくて、会いたくて、会いたくて、心が凍えそうな時でも大介を感じていられるだろうか?
付き合うようになって7年、そろそろこういう物を贈っても良いだろうか?

1ヶ月後


《連》

「そうか、残念だけど仕方ないね。
うん、とりあえず待ってるよ。
仕事頑張って」
今日は大介と付き合い初めた日。
そんな日、俺も大介も珍しく午後の仕事が休みだった。
だから、一緒に過ごす予定だったのたが………。
大介に急な仕事が入ってしまった。
仕方ないな、と思いながらも、やはり寂しさは拭えない。
テーブルの上、ちょこんと座るそれに気づいた時、大介はどんな顔をするだろうか?


《大介》

何でこんな日に、と思う。
今日は午後からは、連とゆっくり出来るはずだった。
なのに………、仕事が入るなんて………。
勿論、ありがたい事、それは分かってる。
わかってるんだけど………。
何も今日じゃなくても………、と、思ってしまう。
今日は付き合い始めて7年目の記念日だった。
だから、鞄の中、キレイにラッピングされた、それ、に今までの感謝と、これからの未来を信じてたくした、それ、を今日中に渡したい、と、願う。


《連》

仕事が終わった、これから行く、と連絡が来たのは、日付が変わる30分前。
きっと、今から来たら日付変わっちゃうな、残念。

分かったよ、気をつけて

そう、ラインに返事をして食事の用意を始めた。


《大介》

予想はしていた。
けれど、こんな時間になるなんて………。
泣けてくる。
急いでも間に合わない………。
それでも、急ぎ連の待つ部屋へ。

結局着いたのは0時をとっくに回った後。
連の部屋のインターフォンを押す指がじわりと滲む。
「いらっしゃい、ご飯まだでしょ?もう出来るよ」
連のそんな優しい声を聞いて、なんだか泣けてしまう。
「………っうぅ………」
「えっ?!何で泣くのっ?!」

《連》

俺の顔を見た途端大介が、泣き出す。
「えっ?!何で泣くのっ?!」
そのまま、俺の胸に飛び込んで来ると、
「だって、くやし………」
どうやら、0時までに間に合わなかったのが悔しかったらしい。
可愛すぎて、
「大介、記念日は来年も来るよ?
何なら、来年は2人で休み取って、旅行とかしちゃう?」
言うと、ジトっと、見られる。
「本当に?」
「勿論」
なら、今日は我慢する。
そう言って、お腹すいたー。
と、言ってリビングに向かう。
さぁ、大介の反応はどうかな?
喜んでくれると良いんだけど………。


《大介》

思わず泣いてしまった気恥ずかしさから、
「先に行く」
と、リビングに来た。
その時目に入った綺麗にラッピングされた小箱。
「連!これ!」
思わず振り返ると優しい笑顔で開けてみてと言われた。
リボンを解いて包装を解いていく。
と、ベージュ色のビロードに包まれた小箱が現れた。
小箱を開けると、中にはゴールドなのか?
可愛い色のリング。
それを見た途端、また俺の涙腺は壊れてしまった。


《連》

嬉し泣きをしてる大介を、胸に抱きながら、
「喜んでくれて良かった」
と、大介の耳元に囁き、落ち着かせるように、背中をポンポン叩く。
ひとしきり泣いて、やっと笑顔を見せてくれた。
「ありがとう。あの………」
頬を少し赤くしながら、大介が鞄の中から、小さな小箱を差し出す。
それは、俺が用意したものととても似ていて………。
「え?」
まさか、と思いながら、
開けてみて、という大介の言葉に開けていく。
綺麗にラッピングされたもを紐解いていくと、
黒のビロードの小箱が出てくる。
そして、その中には、漆黒のリング。
「これって………」
「重いかなって想ったんだけど………、これ見たら何か………

どうしても、渡したくなったんだ、そう言う大介を思い切り抱きしめる。
「ありがとう、めちゃくちゃ嬉しい」
苦しいー、と苦情を言う唇を俺のそれで塞いでしまう。
「……っん」
長くなるキスに体に火がつきそうになって、名残り惜しくも離す。
「指貸して?」
そして、左手を取ると薬指には漆黒のリングがはめられていた。
その上から、俺がプレゼントした指輪をはめる。
思ったとおりに大介の指にとても良く似合っている。
「俺も」
そう言って、プレゼントしてくれた指輪を俺の左手の薬指にはめてくれる。
俺の指にも大介に贈ったものと、同じ指輪をはめてたから、同じようにそのうえから漆黒の指輪をはめる。
やる事が同じで、お互い、気恥ずかしくなってしまう。
「ご飯食べようか?」
きっと、こんな記念日も悪くない。
だって、今日の出来事は俺と大介2人にとって、新たな記念日になると思うから………。


あとがき

終わりました(笑)
あのね、この話しがなんでか難産で…………。
こんな、ラブラブHAPPYな話しなのに………。
まぁ、でも終って良かったです。
とりあえずは、家族の形シリーズはおしまいです。

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