家族の形6 (佐久間くん)

神様、どうか俺にあの人に全てを話す、勇気を下さい。
何も聞かずに、待つと、言ってくれたあの人に報いたい。
だから、ありったけの勇気を下さい。

シン、と静まる夜の帷。
めめは何も言わずただ、俺の話を聴いてくれた。
「俺の事、嫌になった?」
「ならないよ」
間をおかずに答えてくれた事にホッとする。
「良かった…………めめに嫌われたらどうしようかと思った」
「そんなわけないでしょ。
佐久間くんは佐久間くんだよ」
ありがとう、言ってるそばからまた涙が出てしまう。
ごめんね、と謝ると、
全然大丈夫と言う、めめの声も涙声だった。
言葉もなく、ただ、めめにしがみついてるこの時間がとても幸せだった。
最初はお試し感覚で付き合ってたのにな。
いつの間にかめめの事が信じられないくらい好きになってる。
どうしてなんかわからない。
でも、めめが好きだ。
「ねぇ、めめ」
まだ、面と向かって言うのは恥ずかしいから許して欲しい。
「俺ね、めめが好きだよ。
ちゃんと、めめが好きだよ」
こんなに好きになれる人はもういないかもしれない。
そう思うほどに好きだよ。
最後の言葉は心の中、呟いた。
そしたら、ギュっ、ど抱きしめられる。
「苦しいよ」
抗議したら、嬉しいから少しだけ、言われてそのまま我慢して………。
「そろそろ帰らないと………」えー!帰るの?
何て、めめは言うけど………。「めめのスゥェットじゃ、仕事行けないだろ?
明日は仕事だよ?」
そう言って、めめの、部屋を出た。
重く没んでいた気持ちは、いつの間にかほっこりとした気持ちになっていて、
外に出ると夜風が気持ちよかった。

そらから、俺達の関係は変わらないと言えば、変わらず。
でも、どこか、お互いに対する信頼関係というのは強くなったような気がする。
後、変わった事がある。
あの日、帰る前に、
「名前を呼び合いたいっ!」
という、リクエストにこたえて、俺達は名前を呼び合うようになった。
「大介、出来たよ、運んでー」
今日は連と俺の家でご飯を食べる事になっていた。
「ほーい」
なんでもない日が1番だと思う。
2人、ご飯も終わり連に付き合わせて好きなアニメのBlu-rayを見てた時だった。
俺のスマホが着信を告げる。
良い所なのに誰だよー、
と、ディスプレイを見て、
「え?」
言葉を失う。
良く知っている番号だった。
ても、何で?
連絡しなければ、思っていた。
けれど、佐久間の関係者とは、関係を絶ちたくて、番号を変えてしまった。
それから、連絡出来ずにいた。
故に相手は俺の番号を知るハズないのだ。
なのに、今着信が着ている。
何で?
「ごめん、ちょっと出るわ」
連に言うと心配そうな顔をしてる。
大丈夫だから、そう言って通話に切り替えた。
「もしもし、おばさん?」
懐かしい声だった。
「大介ちゃん、突然ごめんね。元気だった?」
「ううん、大丈夫、ごめんね、連絡しないで………」
何年振り?
そんな当り障りのない会話をしていた。
そして、
「大介ちゃん、あの日の事、話して良いかな?」
いつか、なんて言わなくても分かる。
どうしたら?
でも………、聴きたい気持ちの方が勝ってしまった。
「うん」
俺の答えにおはさんは話し始めた。

あの日、おばさんのスマホに母から連絡があった。
母は、叔母に俺を1人にしてしまった、と連絡を入れたそうだ。
今は兄と離さなければならないから1人にするしかなかった。
けれど、1人にしておくのは心配だから自分達が帰宅するまで俺を見ていてくれ、と連絡したそうだ。
それで、あの時、叔母は家に来てくれたそうだ。

「じゃあ、父さんと母さんは…………」
「わかってたわよ。大介ちゃんに何があったか。
おばさんでも、わかったわ。
あの時、大介ちゃん自分が、どんなだったか知らないでしょ?
手が真っ白くなるまでシーツ握りしめて、真っ青な顔で泣きながら震えてたのよ。
何があったのか、想像できちゃったわよ」
父も母も俺を心配していたと、でも、どうしても顔を出さなければならないから1人にするしかなかったのだ、
そう言っていたと、
「本当に?」
そうよ、おばさんの力強い声に知らず涙が溢れていた。
父も母も、俺を心配してくれていた、兄の言葉を信じて俺を1人にしたわけではなかった。
霧が晴れるように心の中にあった膿が霧散していくのが分かる。
「ありがとうおばさん、話し聞けて良かった。
聞かなかったら、俺ずっと2人を、恨んでたかも」
電話番号登録しても良いか?
なんて言うおばさんに勿論だよ、答えて俺も登録しておくから、と言って電話を切った。

「大介?」
心配そうな連に、おばさんだった、と話す。
「父さんと母さん、心配してくれてたって」
泣き笑いで言うと、良かったじゃないかと自分の事のように喜んでくれた。

その次の休日
丘の上の一等地、枝垂れ桜はもう葉桜に変わっていた。
父と母、兄の眠るお墓の前にいた。
兄の事を許すことはまだ出来ない。
けれど、父と母には謝らなきゃいかなかった。
あの時、花をぶつけてごめんなさい。
ずっと、ずっと、誤解しててごめんなさい。
俺の事、信じてくれてありがとう。
今、横にいる彼は俺の大切な人です。
とても、優しくて誠実な人です。
見守ってて下さい。
お花を置いて立ち上がる。
「終わった?」
うん、ありがとう。
返す、と、連が不服気に
「やっぱり大介だったんじゃないか」
と、文句を言う。
それが、まだ出会った頃、ここにいたか?
と聞かれた時の事だ、と気がついて笑う。
「ごめん、だけどあの時は、仕方ないと思うなぁ。
だって出会って間もないときだったし?」
まぁ、そうか、と笑い合いお墓を、またね、と後にする。
カサリ、そよぐ風に枝垂れ桜も笑っているようだった。


あとがき

終わったぁ!
長かったぁ!
はい、ようやく終わりました。
家族の形これにて本編はおしまいです。
えーっと、おばさんがスマホの番号を知っていた謎ですが………。
長くなるのでエピソードはぶきました!
結論から言うと、ばばあの中では岩もっちゃんから聞いた体です。
すまそ、後は長くなるので皆さん想像してみてください(笑)

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