家族の形2 (佐久間くん)

彼に最初に会ったのはSnowManとして有り難いことに人気が出始めた頃。
「始めまして」
新メンバーとして緊張気味に挨拶してきた背の高いイケメン。
最初の印象はそんなものだった。
けれど、何故かその、イケメン、めめ事、目黒蓮が気になって仕方なかった。
その瞳の中にある暗闇に気がついたのはいつだったか………。
思えばめめはSnowManの新メンバーとして合流した時から、どこか時々暗い瞳をする時があった。

そこからさらに年月は流れ、無事デビューを果たして、数年過ぎたある日。
その時俺は現場へ向かう為の準備をしていた。
スマホを取ろうと手を伸ばす、と、着信を知らせるバイプが震えた。
ディスプレイには、マネージャー。
あれ?現地で落ち合うはずだったけと………。
「もしもし?」
疑問に思いながら出ると、マネージャーの切羽詰まった声がした。
「佐久間さん!今どこですか?」
「家だけど?」
「そうですか」
あきらかにホッ、とした空気。
「すいませんが、今から目黒さんをピックアップして、会社の方へ向かって貰えますか?」
「良いけど?」
そうして聞かされた内容に俺も戸惑ったのだった。

めめのマンションまでは車で5分。
到着すると、めめはもう既にマンションの前で待っていた。
「ありがとう、佐久間さん。すいません」
おうっ!
いつも通り返事しながらめめの様子を見る。
硬い表情、思い詰めた目。
後部座席に座っためめは酷く思い詰めた目をしてる。
大丈夫かな?
と心配しているうちに会社についた。
と、同時にマネージャーも着いた。
「佐久間さん!」
頷き、
「俺も行く」
そう言ってめめが何か言う前に俺も車を降りた。
そして、先に事務所に向かい歩き始めた。

さっきのマネージャーの電話は、事務所にめめの母親を名乗る人間が来たと、勿論会社側は取り合わわなかった。
ところがすぐ帰ることをせず、居座りを始めた為に警察を呼んだ。
しかし、警察官の到着後、女性が連の母親の証拠だと、母子手帳、戸籍抄本etcを提出した為に、無碍にも出来ず、めめが呼ばれた。
車を持たないめめをピックアップ出来、かつ、会社にもめめの家にも近い俺にマネージャーは連絡してきたのだ。

会話もなく事務所までの長い通路を歩く。
そして、事務所の前に………。
めめはノックもそこそこにドアを開けた
そこには、数人の警察官、事務所の人間が1人の中年の女性を取り囲んでいた。
「何を、やってるんですか?
こんな、会社にまで迷惑かけて」
怒りからか、その声は少し震えてさえいた。
「あー!連!助けて頂戴!
お母さんにはもう連だけなのよ!」
女性はめめに走り寄って来る。ございます
「近づかないで下さい!
目黒の家とは、あの家を出た時に縁を切ったつもりです」
鋭い拒絶の声。
会話からめめの本当の母親なのでろう。
その声に、おそらくめめの母親であろう女性の顔が鬼のように変化していく。
「お前まで……、お前までそんな事を言うのかーーー!!!」
それは、あっという間の出来事だった。
鞄に入れていた手を抜き出す。
走り出した勢いそのままにめめに向かって行く。
その手に光る物を見た俺は咄嗟に走り出し、めめを突き飛ばした。
と、同時に何かが打つかる衝撃。
右腕に鋭い痛み。
動き出していた警察官が素早く女性を羽交い締めにしているのが見える。
あっという間に、女性の手から刃物が落ちた。
「佐久間くんっ!」
倒れ込んだ俺をめめが支えてくれる。
「大丈夫、大丈夫。
ちょっとかすっただけだって」
ぐるぐる腕を回してめめを安心させてやる。
それを見たマネージャーが、やめてください!
と、諌めてくる。
警察の方が救急車を呼ぶと言うのを、誇示しようとして………。
めめやマネージャー、事務所の人間、警察官の数名にまで、説得され致し方なく救急車に乗った。

腕の傷はやはり大した事はなかった。
めめの母親は………。
警察に拘束されても、意味のわからない事を叫んでいたそうだ。
そのあまりの異常な言動から、病院へ入院する事になったと、後から警察から連絡があった。
被害届は事務所と相談して出さない事にした。
穏便にすませたかった、というのと、週刊誌に嗅ぎつけられかけたからだった。
こんなショッキングな事、週刊誌ネタにされたらおもしろ可笑しく書かれるに違いない。

あの事件から5日。
今、俺とめめは事件の影響から休みを貰っている。
今頃、事務所が事件のもみ消しをしている頃。
俺の数針縫った腕の傷の痛みも無くなりかけていた。
「佐久間くん、これどこ置く?」
「佐久間くん、ご飯食べれる?出来たよ」
今、俺の部屋にはめめがいる、そして甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれている。
大丈夫だから、と言ってるのだけど、世話をすると聞かないのでやって貰っている。
「ん、美味しい。ありがと」
なんかこんな風にゆっくりするの久しぶりだよなぁ、
なんて他愛のない話をしながら、めめの様子を伺う。
やっぱりまだダメか………。
硬い表情、思い詰めた目。
本人は普通にしてるつもりなんだろうなぁ。
聞いて………みるか?
「ま、あれだあまり気にするな」
言うと、
「ごめん………」
と、俯いてしまう。
「ごめんは、もう良いよ。
気にしてねぇし、事務所もそうだろ?
現に、社長からも気にするなって言われてんじゃん」
言うと少し悲しそうに笑ってそうだね、とつぶやく。
全然大丈夫じゃない顔………。
本当はこんな事いうべきではないのかも知れない、
余計にめめの傷を広げるだけかも知れない、
でも、今にも泣き出しそうなめめの顔をみていたら、
「俺で良ければ、話しきくぞ?
ドーン!と受け止めてやるから話してみれば?」
気がつくとそう話してしまっていた。
めめは一瞬驚いた顔をして、またくしゃ、と泣きそうな顔をした。
「じゃ、聞いてくれる?」
そうして話してくれた内容はあまりにも酷かった。

「母は、兄が逮捕されて、父は会長を追われて、全て無くなったんだと思う。
だから、成功した俺のところに乗り込んで来たんだと思うんだ」
話しをそんな風に締めくくっためめは静かに泣いていた。
俺はそんなめめの頭をぎゅ!
と胸に抱き寄せてやる。
「そんな家族捨てて当然だ!
めめは悪くない」
言うと、肩が一瞬強張る。
「俺、この事務所に、SnowManに入ってやっと居場所が見つかったと思ったんだ。
なのに、またこんな………。
また居場所無くすのかな?
もうSnowManにいられなくなる?」
泣き声は嗚咽に変わっていた。
「そんな事ない!
俺もメンバーもめめの事心配はしても、今回の事でマイナスの感情持つ奴なんて1人もいない!
ここが、SnowManが居場所だって、思うなら、思ってくれるなら、もうそんな風に思わなくて良い。
今回の事で1番傷ついてるのはめめじゃないか。
もう、自分を責めるなよ。
そんなめめ、誰も見たくないよ。
いつもの、ちょっと不器用で1つの事しか出来ないけど、
1番メンバー思いなめめに戻ってよ。
きっと、メンバーも同じ事思うはずだよ」
言ってギュー!としてやる。
「ちょっ!佐久間くん!痛い!痛いって!」
「だったらその辛気臭い顔を明日までになんとかしろっ!」
わかった、わかった、と逃げ出すめめを笑いながら見る。
酷い目にあった、というめめの額にデコピンをする。
「いてっ」
むー、と、めめが俺を見る。
何て事ない一コマ。
目が合う事なんて山ほどある。
なのに、何故かその時、
めめと目があったその時に、
時間が止まったかと思った。

あ、キスされる

わかったけれど逃げなかった。
うるさい程、どくどく言っているこの気持ちを俺はまだ知らなかった。


あとがき

2話目です。
めめの親最低説(笑)
で、まだ続く(笑)

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