家族の形4 (めめ)

その日、仕事帰りに佐久間くんか家に来た。
この日は佐久間くんのスケジュールがタイトで疲れていたんだろう。
2人でTVを見ていたら佐久間くんが寝てしまったのだ。
ごくごく普通の1幕。
けれど、暫くすると佐久間くんの様子が変わって来た
「ん………っ………ぅ、っ……」「佐久間くん?」
最初はわからなかった、けれど………。
いやいや、とする顔には汗。
苦しそうな表情。
うなされているのだ、と気がついた。
「佐久間くん!」
助けを呼ぶように伸ばされた手。
その手を掴む…………と、
佐久間くんの表情が戻り、
すぅ、すぅ、と寝息を立て始めた。
こんな事が何度か続いていた。


そして、今

ドンッ!
胸を押されてよろめく。
「帰る」
「佐久間くん?」
帰るっ!と暴れる佐久間くんを、
危ないから!
なだめる俺。
落ち着いて、となだめていた時だ。
佐久間くんが足を滑らせた。
「危ないっ!」
倒れそうになる佐久間くんを胸に抱えるように庇う。
幸いな事に床ではなく、ソファーに倒れ込んだ。
胸に抱えるように倒れ込んだ為に、佐久間くんに覆いかぶさるように倒れてしまった。
大丈夫?
その問は驚きと戸惑いに掻き消える。
「ひっ………」
怯えた瞳は焦点があっていない。
青を通り越して白くなった顔色。
そして………
「いやだーーーー!!!!」
絶叫と、共に震えだす身体。
「佐久間くんっ?」
嫌だっ、と、手を振り回し、震える身体。
来ないで、と、蹲る背を、なんとか胸に抱き締め、
何度も、大丈夫だから、と、名前を呼ぶ。
どれ位時間がたったか………、
何度名前を呼んだか………。
もう、わからなかった。
何度も何度も呼んだ名前。
呼んでいるのが、俺だと伝わったのはどれ位時間が立った時か………。
「佐久間くんっ!」
俺の声に、少しずつ焦点があって来た時は本当にホッとした。
「め…………め?」
俺を確認した佐久間くんから、震えと強張りが無くなっって………。
そして、意識を無くした。

寝室で眠る佐久間くんの顔は
少し青ざめて、眉間にシワをよせている。
額に残る汗を拭い、布団を掛け直す。
俺は、今見たものが信じられなかった。
何があった?
こんなに人が怯るなんて………。
佐久間くんに何があったんだ?
きっと、佐久間くんが、そうゆう関係になるのを躊躇う理由は過去にある。
きっと、俺には介入出来ない。
したくても、させて貰えないだろう。
それなら………。

朝日が眩しい。
昨夜の事が嘘みたいに良い天気。
佐久間くんはまだ寝てる。
顔色は昨夜より良い。

寝れなかったな………。

寝ないで決めたことがある。
それを胸に俺は気分転換もかね、朝食の準備を始めたのだった。

暫くして、遠慮がちにドアが開くのを緊張しながら感じていた。

「おは………よ」

罰が悪そうな顔を気づかないふりで、
「おはよう、ご飯出来るから食べよう?」
出来るだけ普通にを心がける。
「あの………夕べは………ごめん」
「大丈夫、気にしてないよ」
「でも………」
何か言いたげな佐久間くんに、
「話は後で、とりあえずご飯たべよう」
言うと、うん、小さく笑う佐間くんを見て少し安心した。

食事が終わって、佐久間くんにソファーに座って貰う。
「ねぇ、佐久間くん、佐久間くんは俺と付き合うのしんどい?俺といるの、怖い?」
1番気になってる事だった。「そんな事ないっ!怖くなんかっ!」
でも……、悔しそうに言う。
その答えに、心底ホッとする。
それだけ聞ければ充分だった。
「俺ね、その言葉だけで良いよ。佐久間くんがそういうの大丈夫になるまで待てる。
勿論、佐久間くんがこのまま俺と一緒にいてくれるっていうなら、なんだけど………」
「…………きか…………ないの………か?」
何が?とも何を?とも聞かなかった。
「聞かないよ。聞いても意味ないでしょ?
佐久間くんは佐久間くんだよ。
でも、話たいって思ったら話して?
いつでも聞くから」
俺の答えに、佐久間くんの瞳
に涙がどんどん溜まっていく。
「えっ?!何で泣くのっ?!俺泣かすような事言った?」
「なん……で。なんでそんなに、優しくするんだよ。
俺なんかに………俺………は」
泣きながらそんな事を言う。
俺はそんな佐久間くんに少し怒る。
「俺なんか、って?
俺なんか、何?
佐久間くん自分の事悪く言おうとしてる?」
へっ?
という佐久間くんを無視!
「あのさ、俺許さないからね?
佐久間くん本人でも佐久間くんの事悪く言うの、絶対ダメだよ」
ええー?
言いながら笑った佐久間くんにホッとする。
「笑った、良かった。
佐久間くんは笑ってる方が良いよ」
ありがとう
そう言った佐久間くんは少しだけ、いつもの佐久間くんに戻ったように見えた。

それから、2人で買い物に行ったり、ご飯を食べたり。
いつも2人で過ごすように過ごして、佐久間くんもいつもに戻ったように見えていた。
けれど、家でTVを見始めてから、また佐久間くんの様子がおかしい。
ずっと、親指の爪を噛んで、
思い詰めたように考え込んでいる。
大丈夫だろうか?
そんな事を思っていた時だった。
「そっち、行っても良い?」
もちろん、言うと更に、
膝に乗って良いか?
と言う。
「良いけど……」
佐久間くんから甘えるの珍しいね、
開きかけた口は驚きで止まる。
膝の上に来た佐久間くんが

ギュっ、と

俺の肩に頭を乗せ、首にしがみついて来たからだ。
「佐久間くん?」
「ごめん………ちょっと………
このまま、聞いて欲しいことがある」

ドクリ

1つ心臓が大きく波打つ。
めめの気持ちに報いたいんだ、
そう言って佐久間くんは、
ポツリ、ポツリ、
と話し始めたのだった。
これから聞くであろう、愛する人の、過去を知ることに、
少しの不安と喜びを感じながら話を聞いていた。


あとがき

次回からさっくん過去編です。
いよいよさっくんの過去があきらかになります。
かなり、ハードです。
読まれる方はお気をつけ下さい。

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