家族の形1 (めめ)

その日は親族の法要だった。
丘の上、景色のキレイな霊園には見事な枝垂れ桜があり、1等地になっていた。
会員制のその霊園はセキュリティもしっかりしているので、それなりの立場の者しか利用するのは難しい。
必然的に利用する人間も少なくなる。
それなのに、
凄くキレイ…………。
枝垂れ桜の下に佇むその人に俺は目を奪われた。
都内でも有数の名門中学校の制服を着て、手には花。
ボー、見惚れていた時だった。
突然彼が手に持った花を彼の目の前の墓石に叩きつけたのだ。
そして、墓石を一瞥すると後は振り向きもせずその場を去って行った。


あの時は驚いたよなぁ。
あの人は何であんな事をしたのだろう?
結局あの後、クズだ、ノロマだの言われ引きずられるようにその場を離れ、そのまま10年以上足を踏み入れてない。
もう、訪れる事もないだろう。
何故なら、実家とはここに、J事務所に入った時から縁を切っている。
「めめー、次めめだよ!」
はっ、と現実に戻る。
「ごめん!今行く!」
しまった!この陽気があの日と似ていたからか、考えにふけっていた。
その時、事務所にあるTVから、
目黒財閥社長逮捕のニュースが速報として流れて来た。
一瞬、驚いた、がもう関係のない事だ、目黒の家とは縁を切ったのだから…………。


『母さん見て!90点だよ!』
『そう、でも、兄さんはいつでも100だったわよ。
あなたは何で取れないの?』
毎回、毎回、兄は、兄は、兄は。
何でも兄と比べられ虐げられてきた。
何をやっても、頑張っても、彼等、父や母、兄には俺の声は届かなかった。
父と母は目黒財閥が安泰なら良かったのたろう 。
兄は世渡り上手で勉強もスポーツも万能。
一方俺は、何をやらせても中の上、おまけに人付き合いはあまり得意ではなかった。
両親にとって、兄は何でもパーフェクトな自慢の息子。
俺は、出来損ない。
そんな俺の事を彼等は鑑みることはなかった。
いつしか、俺は彼等と関わるる事を諦めた。
目黒の家には俺の居場所なんてどこにもなかった。
そんな俺に居場所をくれたのは事務所の社長だった。
いや、正確には従姉妹だな。
彼女が俺を見てきっとイケル!
と事務所のオーディションに写真を送ってくれたのだ。
父と母が俺に無関心なのが幸いした。
従姉妹が写真を送ると言った時にも無関心を貫きいい加減な返事しかしなかった。
それは、オーディションに受かり、養成所に入る時も役立った。
俺が事務所に入るから保護者のサインと判をくれ、と言った時も、禄に確認もせず判までくれたのだから。
そこからの俺の行動は早かった。
寮に入る手続きを済ませ無事養成所に入った。

そして、そこであの人に出会ったのだ。
佐久間くん事、佐久間大介。
あのお墓の人だ。
絶対そうだという確信があった。
けれど、その事を聞いた時、
「さぁ?そんな所行った事もないよ、
それに会員制なんだろ?
俺の家にそんな金持ちいねーって」
と、笑われてから深く聞けなくなった。
お墓の事を聞いた時の佐久間くんの雰囲気が一気に固く硬質なものに変わったからだ。
まさに、壁を作られたというのがふさわしい。

何かこの人にあったんだろうか?

最初に興味を持ったのはこんな所からかもしれない。
優しくて面倒見の良い彼の周りにはいろんな人が寄ってくる。
何より、その明るさに誰もが惹かれるのだ。
かく言う俺もどれだけ佐久間くんの明るさに助けられたかしれない。
家族と縁を切った以上自分1人で生きていかなければならない。
覚悟は決めていたけれど、辛い時があった。
そんな時必ず声をかけてくれたのも佐久間くんだ。
そんな彼に普通ではない想いを抱いてしまった。
気がついた時に絶望した。
望みなんてない。
俺を好きになってくれる人なんていない、と自暴自棄になる。
けれど、そんな俺を救ってくれたのはSnowManだった。
メンバーといるのは楽しくて落ち着いた。
何よりダンスレッスンにヴォイトレ、撮影に、収録。
忙しくしていれば忘れられた。
忙しくしていれば佐久間くんへの想いも忘れる事が出来た。
そんな自分にホッとしていた。
それなのに、あの事件現場が起きた。

あとがき

新作です。
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