君から続く………佐久間ver1

「本当に?」
楽屋の中、阿部ちゃんに確認された。
「良いんだ」
もう、決めた事だから………。
こうするのが1番良い。
それが、連の為なんだから……。
俺が悪者になってすべてが丸く収まるならそれで良い。
「めめの事は良いのか?」「大丈夫だよ」
楽屋の磨ガラス、そこに映るのは間違いなく、愛する人のものだった。
静かに回るドアノブ。
俺は横目で見ながら阿部ちゃんの後頭部に腕事回す。
そして、顔を近づけていった………。
ガンっ!
「何してんの?」
聞いたことの無いような低い連の声。
あぁ、怒ってる、当然か………。
「大介?お前に聞いてんだけど?」
ドキリ、と心臓が音をたてる。
「ぅざっ……」
そう言うのが精一杯だった、でも………。
俺が決めた事、ここで止める事は出来ない。
震えそうになる声を一呼吸して整え声を発する。
「うざいって言ったの。何回かさぁ、関係持ったからって恋人ヅラしないでくれるかな?」
「えっ?俺とお前つき合ってるだろ?」
信じられないと、見開く瞳。
そして、傷ついた顔………。
「同じ事言わせないでよ。俺は連のこと恋人と思った事はない」
「本気で、言ってるのか?」
まだだ………。
「嘘なわけないでしょ。連のそういうとこうざいよ」
まだ、ダメだ。
頑張れ俺の…………。
コツ、と音が鳴る。
連の黒の革靴がこちらに向かうのを見て殴られるかな?
そう思ったけどそんな事はなく荷物を取ると楽屋から出て行く。
阿部ちゃんが追いかけそうになったのを、服の袖を掴んで止めた。
パタン、静かにドアが閉まる。
瞬間抑えていたものが堰を切った。
「…………っぅ…………っふ」
あっ、という間に歪んで行く視界。
声を抑えるのが精一杯だった。

半月前
俺は1人だけマネージャーと、とある会社のビルに来ていた。
M企業、連の父親が社長の会社、我らのJグループも契約してる会社だ。
「ねぇ?何で俺だけ呼ばれたの?」
不安にかられて聞いてみる、けど………。
「私にも………」
と、分からない様子…………。
そして、会議室に俺だけ残されてしまう。
本当に何なんだろう………。
暫く待っていると、
「お待たせして申し訳ないね」
そう言って、紳士的な連に面影のある人が入って来た。
すぐに、連のお父さんだとわかった。
「始めまして」
何で呼ばれるのか、嫌な予感しかなかったけど、挨拶だけはしっかりする。
「どうぞ」
促されて席に着く、と、
「単刀直入に言う。連と別れほしい」
何となくそんな話しかな?
と思っていたから驚きはさほど無かった。
けれど、連だって大人だ。
いくら連のお父さんだから、とそんなのにはいそうですか、なんて納得したりしたりはしない。
「お断りします」
連だって同じ事を言ってくれるはず。
「なら仕方ない。Jグループとの契約は更新なしにしよう」
は?
「そうなったらどうなるかな?連も居心地悪くなるんじゃないか?Jグループにもいられなくなるんじゃないか?」
「横暴です!
そんな事されたら!連は………」
「なら、連と別れてくれ。
申し訳ないとは思う。
だが、君も良い大人なら自分達がしている恋愛が普通のものではないとわかっているはずだ。
もし、週刊誌に撮られたらどうする?
Jグループだけではない、M企業にも、何より、君たちにどんな奇異の目が向けられるか………。
君たちの恋愛がグループの解散に繋がるかもしれない。
その覚悟が君に、連にあるのか?」
何も言い返せなかった。
考える事から逃げていた事ばかりだったから………。
だから………。
「わかりました………」
その時の俺はそう言う事しか出来なかった。


あとがき
めめの父さん(架空)は管理人の中では決して悪い人ではなく………。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?