恋一夜 連

コツン、コツン。
夜の雑踏から離れると、俺の足音だけが、響く。
仕事帰り、やっと辿り着いたマンション。
今日は大介と会えなかったな………。
そんな事を思いながらオートロックを解除しようとした時だった。
その男は物陰から突然現れた。

あれから、1週間。
目の前には、社長、そして、頭の切れそうな、切れ長の瞳が印象的な女性。
「でも………」
返事を渋る俺。
「この写真は同じマンションに住まないと撮れないのですよね?
それなら、相手はもう忍び込んでいる可能性があります。
佐久間さんの安全を考えるのであれば………」
分かる、彼女の言ってる事はわかるのだ………、けど………。
「目黒、暫くの辛抱だ」
社長にまで、言われては仕方ない。
「わかりました」
俺は、大介と暫くの間距離を置くことに同意をした。

その日の夜。
大介の家で、有意義な時間を過ごした後、
俺にとってはとても憂鬱な時間。
「大介、話があるんだ」
そうして、俺は今までの事を話し始めた………。

1週間前、俺の前に現れたのは戸籍上はまだ、父、という人。
内心、とうとう来たか、と思った。
そして、言い出した事も想定内で………。
お金の無心、一緒に住めだの、全く話にならない。
キッパリ断ると次の日、今度は兄という人が現れた。
横領罪で有罪になってたはずだが、どうやら刑務所から出てきたらしい。
そして、今度は脅してきた。
どうやって調べたのか、大介との事まで調べられていて、
週刊誌に売るだの、マスコミに流すだの………。
この人は事務所の大きさを知らないらしい、と呆れる。
まぁ、見せられた写真を見てもそこまで問題はないし、マスコミも動くとは思えたなかった。
だから、無視を決めるつもりだったのだが………。
1枚だけ無視出来ない写真があった。
それは、俺と大介が向き合って笑い合ってるだけの写真。
それだけなら、良かった。
問題は場所だった。
家の中の盗撮したと思われるそれ。
大介の家にあるその窓は、外から見えない場所にある。
セキュリティのしっかりしているこのマンション。
それなのに盗撮されている、という事は、中に入る事の出来る人間に撮られたか、関係者か、協力者がいる。
そう、思った俺は社長に相談して、弁護士さんを紹介して貰ったのだ。
もう、この人達に俺に、何より大介に関わって欲しくなかった。
「このまま、一緒にいたら、大介に危険が及ぶかもしれない。だから、大介」
暫く俺達距離をおこう。
見開かれる瞳、溜まる涙。
たまらす抱きしめる。
「ごめん、巻き込んで」
「大丈夫」
すん、と鼻を鳴らす大介の瞳の涙を拭う。
「いつまで?
いつまで距離おくの?」
不安気な大介に1ヶ月くらいだと弁護士が言っていた。
と、言うと、不服気にそれでも、
「浮気したら許さない」
大介なりの了解のサインだった。

あとがき

やっと、アップ出来るまでこぎつけました。
今回の話し、めめとさっくんの割合がかなり違います。
次の話しがめめの独白っぽくなったので、帳尻合わせのような感じで、さっくんの方をかなり長くしてます。

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