第 3 章 : スタートアップが出来るまで



最初の起業が失敗に終わり、New Bambooで働き始め、早くも4年が経過しました。 働き始めた当時はプログラミング初心者をようやく抜けかけた程度でしたが、4年もたつと会社でもかなりのベテランになってきました。

2006年当時は参加してもチンプンカンプンだったLondon Ruby User Groupで逆に発表する機会をもったり、日本のカンファレンスで発表するチャンスも得たりと、エンジニアとしても少し成長したのではと思っていた頃です。

会社は90%以上がエンジニアで構成される「エンジニア天国」のような職場です。興味ある技術書はだいたい会社が買ってくれるし、年に1〜2回は興味のあるカンファレンスにいけるし、6時ぐらいに仕事が終わるとXBoxのゲーム大会を開いていました。

(「Talk@2」というお昼時間を利用した社内勉強会)

最近では会社でサッカーチームを形成したり、会議室兼卓球部屋は「息抜き」と称しながら社内ランキングテーブルまで作成してかなり本気で卓球をしています(ちなみに私は常にトップ3の位置にいました)。プログラミング力だけでなくサッカーや卓球は上達しつつも、そもそもプログラミングを始めたきっかけである「スタートアップで働きたい」という気持ちはかなり薄れていった気がします。

(よく見るとちょっと横幅が狭い卓球台)

ソフトウェア受託会社としていろいろな顧客にシステムを提供してきたのですが、中にはスタートアップを相手にシステムを一からつくりあげたり、人手が足りないので助っ人として参加したりしていました。

その時のスタートアップの印象は「結構投資家とかに振り回されるんだな」といった感じでした。とくにスタートアップは売り上げがない場合とかが多いので資金の大部分を投資家に頼っています。そこで出来上がったシステムが投資家の気に入らなかったり、ユーザー数が思ったように増加しないと、けっこう方針変更を要求してきたりします。それのとばっちりをうけるのが実際にシステムを作っている私たちエンジニアだったりします。3ヶ月ぐらいかかって作り込んだ機能が、実際にユーザーに使われることなく捨てられるのをみると、「あ〜、もったいないな」と思っていたりしました。

特に長期間かけてつくったプロダクトが、もろもろの事情などもあり、実際にサイトを公開する前に頓挫した際は失望感もひとしおでした。そのころから「ちゃんと人に使ってもらえるソフトウェアをつくりたいな」という思いがふつふつと湧いてきていました。

ただ「自分で起業してユーザーに使ってもらうものをつくるぞ」となったわけではあります。起業の間接的なきっかけになったのは2012年に開催されたロンドンオリンピックです。

(パラリンピックの卓球会場)

オリンピックハッカソン
オリンピックまであと3ヶ月とせまったある夜、会社の人と飲んでいた時に「オリンピック関係のデータを解析したりビジュアライゼーションとかしたら面白しろそう」という話が持ち上がり、勢いから「ハッカソン企画するぞ」とぶちあげてしまいました。

まず最初にデータビジュアライゼーション、そして次にハッカソンに関して説明しますね。

データビジュアライゼーション(データの可視化)とは
昨今ビッグデータなどといった言葉が色々な場所にでてくるようになり、大量のデータを処理する重要性が高まってきました。 しかしながら大量のデータを保存、処理できるようになっても、そのデータが一体何を意味するのかがわからなければ宝の持ち腐れです。

そこでそれらのデータから洞察を引き出すための効果的なビジュアライゼーションはどういったものか、といったことを考える必要が出てきます。

有名なデータビジュアライゼーションとしてはスウェーデンの医師、公衆衛生学者であるハンス・ロスリング氏によるギャップマインダーというアプリケーションがあります。これは平均寿命を縦軸、平均収入を横軸にとった時の年度別の経緯を可視化したものです。この例ではイギリスと日本の推移が示されています。日本は一度平均寿命の大幅な落ち込みを見せていますが、これは第2次世界大戦の終了直後に大量の戦死者がでたために平均寿命が一時的に30代前半まで落ちたことを表しています。

(ギャップマインダー)

こういった情報はただデータをスプレッドシートに落としただけでは分かりづらく、様々な図表にしたり、また時間の推移ごとにアニメーションなどができるとより分かりやすくなってきます。

こういったことに興味を持って、私は過去のオリンピックの表彰台にあがった国の情報を調べ上げ、「同じ種目で表彰台に上った国同士は金メダルをあらそうライバル」といった前提のもと、各種目ごとのライバル関係を「コードグラフ」というグラフを使って表してみました。

たとえばこれは「シドニー、アテネ、北京」における卓球のライバル関係です。

中国と韓国が常に表彰台を独占しているのが見て取れると思います。

そしてこれはイギリスの得意とする自転車関係の種目です。

オーストラリア、ドイツ、フランスとライバル関係にあるのが見て取れます。

このビジュアライゼーションは自分で勉強も兼ねて週末などを利用して作っていたのですが結構好評を得て、英国ガーディアン誌のブログでも取り上げられたりしました。

しかしながらこういったことを一人でするよりもみんなでした方が面白いんではないかと思い、会社に「ハッカソンをやろう」と企画しました。

ハッカソンとは
ハッカソンは「ハック」と「マラソン」を掛け合わせた言葉です。「ハック」というのは別にコンピュータに不正侵入するような行為ではなく、ただ単に何か面白そうなアプリを作ってみようということの総称として使われたりします。「マラソン」に関してですが、これは週末などに24時間、ノンストップで開催されることが多いことからきています。「エンジニアが週末に集まってわいわい面白そうなイベントをつくる」的な解釈で良いのですが、ハッカソンの多くは夜通し開催されることも多く、会場に泊まり込みながらレッドブルなどを片手に充血した目をした人たちも多く目撃します。

「なぜお前は起業家じゃないんだ?」
で、開催しようとして最初につまずいたのがネーミングです。「オリンピックハッカソン」というタイトルをつけたかったのですが、オリンピック関連の名称に関してはさまざまな厳しい制約が引かれ、「オリンピック」という言葉どころか以下の文字の二つを同時に使うことが禁止されています。

"Games, Two Thousand and Twelve, 2012, Twenty-Twelve". 


例えば「2012 Games」とかはアウトです。しかも上記の一つを使った場合、以下の言葉を併用することも禁止されていました。

"London, medals, sponsors, summer, gold, silver or bronze" 


よって「London 2012」はおろか、「2012年に目指せゴールド」とかもアウトです(参照)。

町の名前と年の使用に制限をかけるなんて尋常ではないと思いますが、これもすべてオリンピック公式スポンサーの権利を守るためなのだそうです。

英ガーディアン誌はこれを皮肉って「じゃあこれからはあのイベントのことをLondinium MMXIIと呼ぼう」という記事を投稿していました。Londiniumというのはロンドンがローマ帝国に占領されていたときの名称で、MMXIIはローマ数字で2012を表します。

この記事を読んだ私は「これは使える」と思い、Londinium MMXII Hackathonというタイトルのハッカソンを開催することとなりました。

それから3ヶ月の間はスポンサー探しなどをしつつ、いろんなイベントに参加しては(多くは飛び入りで)、上のネタをとりあげつつハッカソンの宣伝をしてきました。

海外のトークって日本に比べてけっこう淡々と話す人たちが多いので、英語がハンディキャップな場合は、ウケ狙いで笑いをとりにいった方が、聞いてもらえるような気もします。

あるミートアップでは、話した後に一人の人がやってきて「なんでこんなに話が面白いのにお前は起業家じゃないんだ」というコメントを残していきました。

また他のハッカソンに出場してアプリを作り、そのアプリの発表を兼ねつつハッカソンの宣伝をしていると、あとで投資家を名乗る人から名刺を渡され、「起業するときは連絡くれ」みたいなことをいわれました。

そういった小さなことが積み重ねられるうちに眠りつつあった起業への関心がふつふつと湧いてきたのかもしれません。

ハッカソン自体は成功裏に終わりました。オリンピックのオープニングの翌日に開催することで、オリンピック期間のソーシャルメディアのデータを使ったアプリがいくつか生まれました。

(ハッカソン、夜中の3時。)

徹夜組の発表。彼らは過去の100メートル走の結果をかわいいアニメーションで再現。見事ハッカソンで優勝をとげる

例えばオリンピック関連の写真をInstragramという写真共有サービスからリアルタイムで表示するギャラリー、オリンピック関連の世界中のツイートを地球儀を回転させながら表示させるアプリなどが出来ました。

おかげさまで英国ガーディアン誌のブログ記事で「初めてのオリンピックハッカソンが開催」と私たちのイベントが紹介されたりもしました。

しかしながら不満点もたくさんありました。

一番の不満はオリンピック関連の「試合結果」「選手情報」といったオフィシャルデータが手に入らなかったことです。 ハッカソンに参加する時に参加者が試してみたいことは普通二つあります。ひとつは日頃使わない技術を試してみること。そしてもう一つはそのハッカソンに関連したデータにアクセスすることです。例えば米国航空宇宙局(NASA)が主催したハッカソンでは様々な宇宙観測データを提供したそうです。

しかしながらいくつかのつてをつたってオリンピック関係者に問い合わせたところ「オリンピックの結果データは商業ライセンスのみなのでハッカソン用には提供できない」といわれました。

またある報道局に問い合わせたところ「オリンピックの結果をウェブサイトに表示したい場合は弊社のオリンピックウィジットをお使い下さい」といわれ、詳細をみるとライセンス料が150万円とのこと。「いやわれわれの目的はオリンピックデータをつかってあなたのウィジットよりもっとクールなアプリをつくることです」と言い返したかったのですが、たぶんハッカソンが何かすら分からない相手に掛け合っても無駄だったのかもしれません。データの利用権を持つ報道局がスポンサーになってくれれば、彼らのライセンスを使いつつ、ハッカソンで出来上がった作品は参加者から買い取とるような仕組みができれば両得だったと思うのですが、3ヶ月しか準備期間がなかったので、そういったことはかないませんでした。

また個人的にはオリンピックハッカソンの主催者だったため、自分自身では十分にアプリを作る時間がなかった(一応ひとつつくったのですが)のも心残りでした。

ビデオ情報を可視化
そこでリベンジともいうべく「Sports Tech Hackathon」という他社主催のハッカソンに参加しました。オリンピックが終わり、パラリンピック開催中の9月のことです。

このときはイベントのテーマはオリンピックではなくサッカーでした。 Opta Sportsという会社は英サッカーリーグであるプレミアリーグのイベントデータ収集を受け持っています。この会社がしていることで興味深いのは各ゲームのプレイヤーの動き、例えば「プレイヤーAがシュート」「プレイヤーBがロングパス」といった情報をリアルタイムで収集し、それを分単位でまとめ、各報道局に流します。今回のハッカソンではそのOpta Sportsがその分刻みのデータを提供してくれるというのです。

「こんどこそすごいデータビジュアライゼーションをするぞ」と意気込んで参加したのですが、実はその肝心のデータが会場になかったということをイベント開始後に知りました。

さあどうする? そのまますぼすぼ帰りたくなかったのでいろいろ考えたあげくに思いついたのはビデオを利用すること。Youtubeにはプレミアリーグの試合の模様が視聴者によってアップロードされているので、そのビデオを見ながら自分で試合のデータを収集できるのではないかと思いました。

その結果できあがったのが、Possessedというアプリです。

これは2012年5月にマンチェスターシティが初めてプレミアリーグの栄冠を勝ち取った試合の最後の5分間のボールの支配率を5秒ごとに区切って可視化したものです。青がマンチェスターシティ、そして赤が対戦相手のQPRです。

ハッカソンの初日の夕方にここまでできて結構満足だったのですが、これをたまたま訪問中のジャーナリストの人に見せたところ、面白いことを言われました。「その色のところをクリックしたらその時間帯のビデオを流してくれたらおもしろいよね」。

この瞬間に只のビデオに織り込まれた情報を可視化するだけの状態から、その可視化された情報を逆にリモコンのコントローラーのように使うことを思いつきました。しかもその色をクリックしたら、ただその時間帯に飛ぶだけでなく、その色のチームのボールを支配している時間帯だけスキップしながらビデオを流す機能をつけました。これの面白いところは、自分のファンのチームの場面だけをみるだけでなく、同時に灰色の「どちらのチームもプレイしていない瞬間」を飛ばす役割も果たします。

(Possessed!)

このアプリは好評を得て、ハッカソンで初めて優勝しました。

この瞬間に私のビジネスモデルのひな形ができたような気がしました。データビジュアライゼーションを利用したインタラクティブビデオプレーヤーです。しかしながらこのアプリでそのまま起業しようとは思ってもみませんでした。

実際に友達の何人かからは「それってサッカーチームとかに売れるんじゃない」と言われました。しかしながら、後でプレミアリーグの強豪チーム、チェルシーフットボールクラブのデータ分析を担当している人に見せたら「ふーん」の一言で終わってしまいました。

やはりサッカーなど「試合情報のデータがオープンでない」場合、どうしても大金をはたいてそのデータを買うか、サッカーチームにパートナーとなってもらいデータを譲り受けるしかありませんが、私の場合そんなコネはどこにもありません。しかもそのデータビジュアライゼーションに使ったサッカーの試合のYoutubeビデオも一月後には著作権に引っかかって削除されていました。そして重要なことなのですが私自身はサッカー選手ではないのでこのアプリを切実には必要としていない、ということもありました。 もうちょっと身近な、自分の身の回りの問題を解決するようなアプリを作ってみたい、そう思っていた時にふと思いついたのが「オンラインコースビデオ」です。

Massively Open Online Courses(大規模公開オンラインコース)
Sports Tech Hackathonに優勝した前後からcoursera.org というオンラインコース(MOOC, Massively Open Online Courses)を受講し始めました。

MOOCというのはオンラインビデオ、コース掲示板、宿題のクイズシステムなどをパッケージとしたプラットフォームで、提携大学は各MOOCプラットフォームの形式にそった形でコースを提供しています。

これは2011年の秋にスタンフォード大学の二人の教授が「Artificial Intelligence」と「Machine Learning」というコースをオンラインでただで提供したことから始まります。「スタンフォード大学のトップ講師による授業をただで受講できる」というニュースは瞬く間に広まり、それぞれのコースが10万人以上の受講生を集めました。そのことから教授達は「ビジネスになる」と思いそれぞれ「Coursera」と「Udacity」という別々の会社を立ち上げ、ベンチャーキャピタルから多額の出資を受けています。それとは別にMITとハーバード大学が共同で立ち上げたノンプロフィットの機関「edX」をもってMOOC御三家と個人的に呼んでいます。

確率統計に関するコースをいくつかとっていたのですが、最初の方はビデオを見ながらどんどんコースを勧めていたのですが、中盤ぐらいからだんだん理解度が鈍ってきました。というのもコースの最初の方に説明された用語や方程式が中盤頃にでてきても「これなんだっけ」と思うことが多くなってきたためです。それでビデオを読み返そうと思っても、一からみるのは非常にめんどくさい。

その時気がついたのはCourseraではビデオやスライドと一緒に字幕もダウンロードできるようになっているということ。そこでしばらくの間は各ビデオごとの字幕ファイルを全部自分のラップトップにダウンロードし、その字幕ファイルに関して検索をかけていました。

手続きとしてはこんな感じです。

1. 字幕ファイルをダウンロード
2. 字幕ファイルから興味ある単語を検索
3. 該当するビデオを開き、見つかった箇所の時間帯まで早送り

手順としては3つなのですが、それを100個近いビデオに対して行なうのは非常にめんどくさい。 それをもうちょっと簡単に出来ないかなと考え始め、会社の同僚のオリバーに話すと「うん、それはクール。僕が開発中のJavaScriptサーチライブラリを使えば一発でできるよ」ともりあがり、一緒に開発をすることにしました。

「Fake it till Make it」(実際につくるまではあるように見せかけろ)
なにかアイデアがあった時にはそれを短期間のうちに集中してプロトタイプをつくる必要がありますが、そういった時にハッカソンはうってつけです。

ここ最近はほぼ毎月のようにハッカソンがあるのですが、11月にあるハッカソンに参加することにしました。それは特に起業に興味のある人たちが、自分たちの起業アイデアをもとにしたアプリをつくるハッカソンで、優勝者は翌年1月にシリコンバレーで投資家の前で発表する機会も与えられるというではないですか。

ハッカソンの当日、会場に向かう途中に参加者っぽい人と合流することになりました。ラップトップを詰め込んだリュックを背負った私とは対象的に、彼は軽装で手に持っているのはiPadのみ。iPadだけでどうやってプログラミングするんだろうと訪ねたところ「いや〜僕は起業家だからね。今日のハッカソンで僕のアイデアを実装してくれるプログラマーを探そうと思っているんだ」とのころ。こういうハッカソンにいくと必ずいるタイプの人で、自分ではプログラミングすることは考えず、ひたすら他の人にやってもらおうとするタイプです。そういう人たちがちゃんとお金を払ってプログラマーをやとおうとするのは別にかまわないのですが、こういう場にやってきてアイデアだけでプログラマーを抱き込もうというのはちょっと虫がよすぎる気もします。まあビジネスの人が実際にすでに顧客がいるとかいう場合は話が別ですが。

ハッカソンってテーマごとに集まってくる人のタイプがさまざまだったりするのですが、やはりスタートアップ目的のハッカソンだとこういったタイプの人がくるのは仕方ないのでしょう。

このハッカソンでさらに気に喰わなかったことは「景品」と称して、多くの参加者にリモコンヘリコプターを配っていたことです。主催者からすると「プログラマーばガジェット好きだから」と考慮してのことなんでしょうが、夜中の2時〜3時に気力もつきかけているところに天井をいつ落ちるともわからないヘリコプターががんがん飛び回っているのは非常に集中力をそがれました。

そんなうるさい外野にじゃまされながらも私たちはちゃくちゃくと自分たちのアプリづくりに励みました。 ハッカソンが夜通しあるといってもやはり時間は限られています。そこでは「何をつくらないか」が重要になってきます。あくまで最後に見せたいのは自分が考えているコンセプトが実際に動いているところです。

たとえば実際のシステムを作る際には、まずユーザーの方にデータを入れてもらう「入力画面」が必要です。しかしながらデモで見せたいのは入力画面ではなく、入力されたデータをつかってどういったことが出来るかどうかです。なので事前に用意したサンプルデータをつかうことで、入力画面をあえて作らないようにします。そうすると入力データを保存するデータベースを設定する必要がありません。もっと突き詰めると、デモの際には自分のラップトップから動けば良いので、ウェブサイトを設定する必要すらありません。唯一必要なのはHTMLページと、ダイナミックな動きを見せるための JavaScript というプログラミング言語のみです。

こういった方法は「Fake it till Make it」(実際につくるまではあるように見せかけろ)で、私がハッカソンなどに参加した時によくつかうテクニックです。 こうして本当に自分が見せたいところのみに集中して、それ以外をばっさり切り捨てることでビジネスアイデアの多くは24時間で表現可能な気がします。逆にそれ以上の時間が必要なアイデアは無駄が多い証しなので、機能の切り捨てを考えた方がよいかもしれません。

これが作ったプロトタイプの画像です。

真ん中にあるのがCourseraのビデオです。通常のビデオプレーヤーなので普通に視聴可能なのですが、一番の見所はプレーヤのすぐ下にある字幕画面。単語ごとにクリックできるようになっており、クリックされるごとに、その単語の出現個所を検索し、バーコードのような形で出現箇所を表示してくれます。当該個所をクリックすると、その単語が使われている時間帯にジャンプしてくれるようになっています。

またそのすぐ下には該当した字幕のセンテンスだけでなく、その該当箇所の静止画像も表示してくれます。

そして右上にあるのは私が「スノーグラフ」と呼んでいるのですが、検索単語と同時に頻出している単語をネットワークグラフの形で表示してくれます。

さらに外国人にうれしいかもしれないのは右下の辞書検索。外部の辞書サービスからデータを引っ張ってきて、単語の意味を表示してくれます。将来的には単純な辞書ではなく、Wikipediaなどから定義を引っ張ってくることも可能です。

さあ、いよいよ最後の発表会です。このハッカソンは参加者が100人以上の大規模なハッカソンで、30チーム以上が発表に望んでいたのですが、実際に動くものを作っていたのは5〜6チームぐらいだったのではないでしょうか。あとはビジネスコンセプトと動かないコンセプト画像のみ。私たちの作品はもちろんちゃんと動くものだったのですが、何の賞も受賞しませんでした。

別に自分たちが受賞しなかったのはしかたないとしても、実際に受賞したもののほとんどが動くものではなく、ビジネスコンセプトだけだったのにはよけい失望しました。それなら「ハッカソン」と呼ばず「24時間ビジネスコンテスト大会」と呼べばよかったのに。

スタートアップの多くは年始年末に始まる
通常ハッカソンにいって何かをつくった場合、それで満足して終わってしまうことが多かったのですが、かなり不完全燃焼な感のあるハッカソンだったので「このままでは終わらせたくない」という気持ちが強く残りました。

そこでその年のクリスマスと年末年始を利用して、プロトタイプから実際につかえるサイトに作り替えることにしました。「つくりかえる」といっても、ハッカソンの時に作り上げた箇所はそのままに、実際の入力画面やログイン画面を作り上げたり、データベースやサーバの設定もして、一つのビデオだけでなく、自分が受けているオンラインコースのビデオならどれでも検索システムに追加可能なサイトを作り上げました。そうして出来上がったのがBenkyo Playerです。

MicrosoftやFacebookといった会社は年始に開始したそうです。それは年始年末というのはみんなお祭り騒ぎですが、ハッカー達にとってはまとまってプログラミングができる絶好のチャンスだからなのでしょう。

べつに大々的にアナウンスするわけでもないひっそりとした幕開けです。そのときも既に受講していたコースが1〜2コースあったので、あくまで自分のとっている授業を検索するためのものとして個人的に使っているのみでした。あっ、あとは自分がとっているコースの掲示板で宣伝したりとか、コースの講師のツイッターアカウントで告知して、リツイートしてもらったりしていました。

母からのメール(1/17)
BENKYO PLAYER のビデオ説明を見ました。
なかなかのスピーチ力ですね。 感想は 真はお父さんと一緒のことをしている! 親子って同じような発想をするものだな~
真が公文へ行っていたころ、「これは紙の無駄使い。これこそPC向き。」ってことで 「算数博士シリーズ」として小学生向きに足し算、引き算、掛け算、割り算の問題集を完成させました。 その当時まだその方面の開発がなかったので、小学校やPC教育のためにかなり売れました。
私の仕事は毎月送られてくる売上表を見て、出版社に請求書を送ることでした。 どれくらいの本数が売れたか記憶にないのですが、合計500万円ぐらいにはなったと思います。 仕事が忙しくなり、できなくなってしまいましたが、しばらくは売れてました。
頭が柔らかい間に開発し、そこそこ成功させておくことはとてもいいことです。 お父さんは どこへどのように接触すればいいのかわからづ 最初は悪戦苦闘していました。 真はその辺はもう分かっているから楽でしょうね。
蛙の子は蛙、きっとうまくいくでしょう。 BENKYO PLAYERの成功を楽しみにしています。
賀正


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