竜とそばかすの姫

こういうレビューを書くことになるとは正直実際に作品を鑑賞するまで思いもよらなかったです。
誰が出ているとか、誰が作っているか、ではなく、静かに理不尽にはどう立ち向かっていこうかということが描かれている気がします。
ネット社会や正義というものを痛烈に風刺しており、人間に大切なものは機能性じゃなくて本質だろと静かに描いています。
ネット社会では匿名性によるメリットを皆、享受して匿名性に隠れて暴力を振るうということをしているのでそこで現実の自分を晒すということをして人が自分の思いを受け取ってくれるだろうかと不安に思う心というものがあります。正義中毒になり自分の正義に人を従わせたいと思う人間も存在します。
ネット社会で匿名性を担保するのは現実の本人情報が露わになって攻撃を受けることから守るための意味があります。発信の中身よりも発信をしたのは誰かということでしか見ないものたちにとって醜聞は攻撃するための餌です。心のない者は技術や知識を簡単に悪用します。
自分を晒して自分の思いを伝えようとする人間が勇者なのはそういうことが背景にあります。本質と自分そのもので世界にいる人間は自分の正義で人を従わせようとする意図など跳ね返してしまうのです。
作品はそれを受け取った皆のものになって初めて完成します。
鈴(Bell)役の中村佳穂の歌が見事です。
細田守の作品の中で一番の凄みのある映画です。
素晴らしい作品をありがとうございます。
世の中が黒のときに赤を出しておくと世の中が赤になったときその話で持ちきりとなるのです。