深夜タクシー

古い友人と酒を飲み、帰り道。
最終電車に近くなって乗った電車の乗り換え駅を乗り過ごし、駅を出た。
深夜タクシーを電話で呼んでいると友人が30前ぐらいの女性と話をしていた。
その女性も乗り換え駅を乗り過ごし、帰る方面は我々と同じだったのでタクシーに乗り合わせることになった。
タクシーが来るまでにわしは間が持たず「ちょっと緩和しときましょか」と言うて肩こりストレッチをすると女性は笑っていた。
しばらくしてタクシーが来た。
運転手は60前の明るいおじさんだった。
「お客さんたちを送り届けたら今夜の私は仕事が上がりですねん。運賃負けられへんけど面白い話しますわ」そう言っておじさんは話始めた。
「このタクシーは幸運のタクシーですねん。」
「宝くじ2000万円当たったというお客さんを乗せたことがありましてな、封切りしてない100万円を見せてその人、長年苦労させた妻にカルティエ買うてやりたいて思いますねん、心斎橋に行ってもらえるやろか、言いましてな。心斎橋まで乗せたんですわ。カルティエ下げてお客さん戻ってきて、今度は長く伏せっとる友達がいてますねん。100万円やろう思いますよってに、病院に行ってもらえんかて言いますねん、このお客さんそういうところが実にええ人でおましたな。」
「またそれで産気づいた妊婦さん乗せたときに、中で生まれましてな、もうあかんわ運転手さん、頭出とる言いますねん。そらスピードもゆっくりでどこにも当たらんようにそろっと運転してな、病院着くとストレッチャーもう待ってましたわ。送り届けてそのしばらく後に、妊婦さんの旦那さんがお金持って、えらい本当にありがとうございます言うて来ましたんで、12時24分に生まれましたで、て言うてね。それすんでタクシー洗てたら、社長がそれ知って少しその応対大変でしたわ。」
友人と乗り合わせた女性とわしは、運転手さん話面白いですわと笑いながら帰った。
「電車の中でピンシャンしてるてわし言うたからボケてもうて乗り過ごしたんやなあ」と友人に言うと「普段そんなこと言わんから呆けてもうたのう」と友人は笑っていた。