小熊にみる天使の本質

トネコーケン原作でアニメ化された物語にスーパーカブという話がある。
アニメは本田技研工業が協力監修しておりスーパーカブの描写がとても精緻である。
作中で小型自動二輪免許を取得した小熊がアクシデントから修学旅行にスーパーカブで乗り付けて、先生の言い付けを無視して小型自動二輪免許取得後1年未満で友人の礼子を後ろに乗せてタンデム走行したことにあれは法律違反ではないかと物議を醸した。
原作者のトネコーケンは学校の決まりや道交法より礼子という友人を大事にして国道134号線をスーパーカブでタンデム走行した小熊のことを箱庭に収まるいい子の天使は僕には描けない、思ったより僕の天使は僕より上を飛んで行くと言っている。

三島由紀夫が天人五衰で天使は猛獣というような描写をしている。
天使というのは箱庭で小さく纏まっているような存在ではなく時に激しく戦い、悪事とわかっていても人間の気持ちに寄り添うような存在で、大空を自由に飛ぶ。
聖書などを読むと天使は猛獣というような印象を受ける。悪魔と激しく戦争をするし、人間を天界に導いて行く。
小熊というヒロインの描写はむしろ本質に近い天使という描写になっている。修学旅行のバスを追いかける道草に富士山にカブで登り「今日はこれくらいにしといてあげる」と不敵に微笑む。
そもそも文芸やアニメに法律を持ち込んで粗探しというのは不粋なことで、文芸やアニメは道徳を描くのではなく人間の感情を描く。
国道134号線をタンデムで走る描写がご機嫌なのであってそれはとても気持ち良く描かれていてとても良かった。
ミヒャエルエンデがやがて我々の社会は機能は充実し本質は見失われると言っていたが、小熊の描写の本質が見失われ機能の話ばかりしている現代人はフィクションも楽しめないパサパサな心をしているのかもしれない。
フィクションの話を法律違反と騒いでいて、情操や教養の不足したままの人間が多いことに気が付く。
フィクションそのものを鑑賞し楽しめばいいことだと思う。

追記 2021年6月12日
ベトナムのトンキン湾付近で発達中の台風4号はアジア名をコグマという。日本のコグマで星座の小熊座のことだが、小熊はやっぱり猛獣の天使。台風とかですもの。

追記 2021年6月13日
高千穂遥のSFジュブナイルというかライトノベルにダーティペアシリーズという作品がある。他称はダーティペアだが自称はラブリーエンゼルの二人でやっていることはテロリストなので天使というのは猛獣で行動すると破壊活動というのは天使の本質をよく物語る。

追記 2021年6月23日26時00分
アニメスーパーカブが最終回を迎えた。
スーパーカブはハードボイルドだが楽しくて魂を奪う悪魔のような天使の乗り物。悪魔も元は天使である。