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マイナスワン(TBC16)

B社の編集マンにとって海外の仕事の3本柱がありました。
1、パリ・ダカール ラリー
2、ル・マン24時間レース
3、全英オープンゴルフ
しかし1と2は自動車レースのスペシャリスト的な先輩編集マンがいて、なかなか牙城は崩せません。(後に一度だけキャメルトロフィーは担当しました。国内編集で)
となると、狙うは全英オープンゴルフです。
これまでの中継を見て、求められる編集を探求して、国内の中継収録からニュース編集して、そこそこ努力した結果でしょうか?あるいは「Ohすもう」担当が効いたか?
1991年の大相撲ロンドン公演の取材からそのままスライドしてゴルフ中継の編集マンとしてイギリスに残る事になりました。
でも全英オープンゴルフではありません。
「世界マッチプレー選手権」それまで、サントリーが冠スポンサーでしたが1991年からトヨタに替わり、営業さんが頑張って現場でBBCの中継ととENGの編集VTRを使って生中継する事になったのです。
ロンドンの南西部ウインザー城に程近い場所にあるウェントワースクラブは会員制のゴルフクラブで一般人はなかなか入れない所です。ヨーロピアンツアーの本部があり、世界マッチプレー選手権はヨーロピアンツアーの中心的な大会のひとつでした。
技術スタッフは2週間ほど前に現地入りして設備や回線が発注通りにできているか?できていなければ改善できるか?無理なら代替案を検討して、最悪でも制作スタッフに補完機器を持って来させて本番までに生中継出来るようにスタンバイします。
前にも書きましたが日本とイギリスではテレビの形式が違います。イギリスは625本の走査線で毎秒25枚、日本は525本で30枚。現地ではイギリスの国営放送BBCが中継を行うのでそれをベースにENGも現地調達、インカム指示も英語です。(ま、中学程度の英語ですが発音だけ巻き舌でそれっぽくやれば通じる笑)
ところが、音声さんがどうもいけません。

マイナスワンって日本オリジナル

イギリスではやった事のないスタイルを要求されて揉めていました。
「プログラムに自分の声が返って来たらディレイが付いてしゃべり難いだろう!」
「だったらイヤホン外せばいいじゃないか!みんなそうしてるぞ」
「イギリスではそうか知らんが日本では本人のしゃべりだけ外したプログラムを作ってやるんだ」
「面倒だろう?リポーターだっているだろう?どうするんだ?」
「日本じゃなぁ出演者の分だけぜ〜んぶマイナスワンを作るんだよ。だからでかいミキサーが必要なんだ!」
「ナンセンス!」
「発注したろうが!」
ってな具合です。
間に通訳さんいるんですけど専門用語はみんな英語なんで通じちゃうんですね。

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