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仕事の手を休めて、5分だけでも時間をくれない?

「テイク・ファイブ」といえば、モダン・ジャズを代表する一曲だ。デイヴ・ブルーベック・カルテットの演奏により1959年に発表され、翌々年の61年にはシングル盤が全米25位まで上昇するヒットとなった。

サックス奏者のポール・デスモンドが作曲し、4分の5拍子で演奏されるこの曲、変拍子ジャズを代表する楽曲でもある。3拍子と2拍子を組み合わせるタイプの5拍子なので、「1・2・3」+「1・2」と続けて数えればわかりやすいし、ついて行きやすい。ジョー・モレロ のドラムも、デイヴ・ブルーベックのピアノも、そのようにリズムを取っている。

「テイク・ファイブ」というタイトルは、「5拍子で演奏する」といった意味なのだろうと、長いあいだ勝手にそう思いこんでいたところ、青木啓さんと海野弘さんの執筆による「ジャズ・スタンダード100」には、「芸能界用語で5分間休憩」という意味と書かれていた。そういえば、4分の5拍子は、英語では「Five-Four Time」となる。確かに「テイク・ファイブ」を、そのままイコール「5拍子で演奏する」と読み取るのは無理だった。

そういえばと、もう一つ思い出した。デイヴ・ブルーベックの奥さんのアイオラがこの曲のために書いた歌詞も、確かにそんな内容だった。"仕事の手を休めて、5分だけでも時間を取ってくれない?少しだけ会話を始めましょう"と、主人公がパートナーに語りかけている。

この二人、暮らし始めてすこし時間が経っているカップルのようだ。二人のあいだに吹き始めている隙間風を、5分ほどの会話の時間を持つことから鎮めたいと、主人公が願っている。


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