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"カズー"を間奏にフィーチャーした大ヒット曲

内気なジョニー

ジョニー・ソマーズは、トミー・オリヴァーのビック・バンド専属のクラブ歌手経験を経て、1959年にワーナー・ブラザーズよりレコード・デビューした。ジャズ風味を効かせたサウンドをバックに、スタンダード・ナンバーを巧みに歌ったものの、なかなかヒットが生まれない。そこで企画を一新、ティーンエイジャー向きの作品を発表することになった。こうしてリリースされたシングル「Johnny Get Angry 内気なジョニー」が、1962年に全米7位の高位を記録した。
60年に全米54位まで上昇した「ワン・ボーイ」に続いてのチャート・インだった。

いささか優しすぎて歯がゆい彼氏のジョニーに対し、「勇ましく荒々しい男がいいわ」と、ガールフレンドが叱咤激励している。60年代初頭のポップ・ソングの歌詞にして、なかなかに女性上位のシチュエーションもさることながら、この曲のユニークな仕上がりに貢献しているのは、間奏のリード楽器。なんとカズーが用いられている。カズーは楽器と呼ぶには簡易すぎて、子供のおもちゃのように扱われるものだが、ここではおもしろく楽しく、またピッタリのサウンドをもたらした。ピーター、ポール&マリーの「サンフランシスコ・ベイ・ブルース」のようなフォーク・ソングにおいてカズーが用いられるのを聴いたことがあるものの、ポップ・チューンで間奏にカズーを使用する曲には、このほか出会ったことはない。

 その後、ジョニー・ソマーズのティーンエイジャー向き路線からヒットは生まれず、ささやかにチャートを上昇した「ホエン・ザ・ボーイズ・ゲット・トゥゲザー」の全米94位を最後に、彼女のシングルはチャートから消えた。

 ジョニー・ソマーズのガーリーでハスキーなヴォーカルは、本国アメリカでは評価が得られにくい。コドモっぽいと受け取られてしまうからだ。しかし日本においては、それこそが長く人気を集めているポイント。清純で愛らしくキュートなヴォーカルは、ボサノヴァやジャズなどのスタンダート・ナンバーを、実に親しみやすいポップスに変えてしまう。魔法の声なのだった。


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