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鬱の本

点滅社さんから出版された『鬱の本』がすごく素敵な本だった。
私も私の“鬱の本”を書きたくなった。
ので、書いた。


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 学校帰りであろう制服を着た学生と母親であろう二人組を見かける度に焼け焦げる程に胸が苦しくなる。憧憬を抱かずにいられない。私は生後間もなくして母子家庭になり、制服を着る頃には既に母も亡くなってしまった。

 その頃から波はあれど、泥の様な憂鬱と過ごしてきた。人生の半分以上を鬱とよろしくやっている事になる。中学生で不登校になった。ストレスから声が出なくなったり、不安感が強くなって精神科に連れて行かれた。朝夕の抗不安薬と睡眠薬を処方された。一日中自室にいて、ろくに勉強などしなかった。泣いてばかりいた。劣等感罪悪感と同居しなくてはいけなくて苦しかった。それでも毎日毎日音楽を聴いて、本を読んだ。家にある本、拾った本、学校に行けた時に友人から借りた本。手当り次第読んだ。その経験が現在の私に文章を書かせてくれていると思う。

 東野圭吾の「さまよう刃」を読んだ時、他人に見せられない己の煮え滾る様な怒りや苦しみが解放された感覚があった。「さまよう刃」はとても、綺麗だとか寄り添ってくれる内容ではないと思う。でも、あの頃の私に“心が機能している事”を教えてくれた。

 どんな作品でもいいから、どこかの誰かも私の様に本に支えられる事がありますようにと願っている。

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『鬱の本』、何度も繰り返し手に取る本になるだろうと思う。
読めて本当に良かった。

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