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唯一無二のギタリスト ジェフ・ベックよ永遠に

今日、悲しいニュースが世界中を駆け巡った。
3大ロックギタリストの1人、ジェフ・ベックの訃報だ。


人はみな、いつかは天に召される運命なのだけど、彼は78才だ。
平均寿命からみると早い、早すぎる死だ。

突然、細菌性髄膜炎に感染し、昨日、安らかに息を引き取りました。

つい最近まで、ライブでバリバリとギターを弾いていた、そんな印象があったので、本当に突然の病だったのだろう。

***

僕は12才でギターをはじめた。1976年のことだ。
父にギターを買いたいから小遣いをくれとせがんだら、近所の質屋に連れていかれて、吊るしてあった古いフォークギターを買ってもらったのが最初だ。
当時のヒーローはKISSだったけど、少し経って色んなロックを聴くようになると、当然3大ロックギタリストの名前も耳にするようになる。
中学生はそう何枚もレコードを買えないので、バンド仲間の家に集まって皆で持ち寄って聞いてみる。

エリック・クラプトンは「スローハンド」を出した頃だったので、FMラジオでよくかかっていた。
しかし、中学生の耳には少し渋すぎて良さがさっぱり分からなかった。
「前に組んでた3人組のクリームていうのが凄かったらしい」
友達が「ライブ・クリーム Vol2」を買ってきた。
A面2曲目「White Room」当時流行っていた西部劇やマカロニ・ウエスタンのサントラみたいで少しだけいいかな?と思ったが、中学生にはやはり少し難解だった。

ジミー・ペイジは、ギタリストというよりは "レッド・ツェッペリンの"という冠がいつもつく感じだ。
「永久の詩(狂熱のライヴ)」が出て少し経った頃に、バンドのドラムT君のお兄さんに聴かせてもらった。
ライブ映像の写真や動く映像もたまにテレビで少しだけ見たが、レスポールを腰より低く構えて弾く姿がとにかく格好よかったのが最初の記憶だ。
そして、なんと言ってもツェッペリンはその数々のギターリフだ。
アルバムは全部持っていて、今でもしょっちゅう聴くほど好きだ。
だけど、当時すぐにバンドは解散してしまい、
その後、再結成のライブ映像などを見た時の(下手やん)ショックが大きかったイメージもあって、ギタリストとしての現役感やギターヒーロー感は残念ながら無い。

そして、ジェフ・ベック。
先の2名と比べるとギタリストとしては段違いに別次元のヒーローだ。
アルバムが出る度に「え!今度はそんな風に行くの!?」と常に進化している現役感もバリバリあったし。
「ブロウ・バイ・ブロウ」は1975年に出ていて、
翌年に「ワイアード」が出て、続けざまに「ライヴ・ワイアー*」が出た頃だった。
*Jeff Beck with the Jan Hammer Group Live

白いストラトにアルバム・ジャケットや雑誌で見かけるルックス。
そして弾きまくるギター。
とにかく全てが格好良かった。
インストが中心だったけど、同じ頃にテレビでもよく出ていたクリエイションの「スピニング・トー・ホールド」で、インストでギターがテーマメロディを弾いてそのままソロに入る、というフォルムにも耳が馴染んでいた頃でもあった。
ギターで奏でるテーマメロディも口ずさめるほどキャッチーだった。

高校になって、ライブハウスに出入りするようになると、上手いギターがいるバンドではたいていジェフ・ベックの曲を1曲は演っていた。
そしてアンコールでのお決まりの曲はたいてい「Jeff's Boogie」
これが弾けてなんぼ、て感じだった。
みんな、ジェフ・ベックは憧れで特別の存在だった。

大学に入ってしばらくして、5年ぶりにニュー・アルバム「フラッシュ」がリリースされるのだけど、同じくしてシングルカットの「People Get Ready」が当時バイトしていた喫茶店の有線でしょっちゅうかかるようになった。
「お!ボーカルがロッド・スチュワートやん!!」
僕はロッド・スチュワートの大ファンなのでそれだけで興奮した。
そして、思ったのが「これジェフ・ベックなん?」
ジェフ・ベックが指でピッキングしている?
ギターの音がそれまでのジェフ・ベックと違うけど、フレーズは明らかにベックぽいし、音のニュアンスがこれまで以上にエグい感じになっている。
ベックの3倍増しみたいな。
そしてMTVでPVを見るとやっぱりベックがちゃんと弾いている。

さらに4年後に出たGuitar Shopはテリー・ボジオがドラムのトリオ編成でまさに(当時の)現代版BBAで、ベック完全復活という感じだった。

途中、謎のロカビリーなアルバムを挟んで1999年に出た「Who Else!」
1曲めの「What Mama Said」でまたもやぶっ飛んだ。
デジタルな打ち込みのリズムにライトハンド奏法ぽいリフ(これはジェニファー・バトゥンが弾いていたと後で知る)、そして耳に馴染んできた指弾きのジェフ・ベックとしかいえない(いい意味で)エロい変態ギター。
こんな想像の斜め上をいく変態フレーズは他にはジョー・ペリーくらいだろう(テクは段違いだけど)

もちろんWho Else!のツアー日本公演は東京国際フィーラムに観に行った。
「どこからどうやったらギターであんな音が出るんや!」
完璧だった。
そして、「A Day In The Life」のカバーで泣いた。

翌年の「You Had It Coming 」、そして「Jeff」
なんか年々激しくなってない?絶好調やん。

ツアーベーシストには若手女性ベーシストのタル・ウィルケンフェルを起用して話題になったり。
その後もライブ活動は精力的に行っていたようで、数多くアップされているYoutube動画でもギタープレイをいっぱい観させてもらった。

速弾きでもなく、ペンタトニック一発みたいなのに、
それでも奇想天外な誰も考えつかないようなフレーズ、
そして誰も真似できないあの指弾きでしか出せないニュアンスの音色
晩年はベテラン演歌歌手の「もうええねん!笑」というくらいの感じにこぶし回しのような感もあったけど。
「ええねん、作曲なんか出来んでも。
 俺はどんな曲でもギター一本で自分の世界に持って行ったるねん!」
そんな赤井英和みたいな事は言わないだろうけど。

とにかく唯一無二のギタリストでした。
心からのご冥福をお祈りいたします。

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